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著作権にまつわる登場人物(「著作者」)
「著作者」「著作権者」と著作権(著作物)にまつわる登場人物の名称がでてきますが、最初に、その整理をしておきたいと思います。各用語を厳密(法律規定に沿って)に解釈して説明するようにします。まず、「著作者」と「著作権者」とは、厳密には違う人だと思ってください。ただし、両者が同一の人物や同一の法人の場合だったりすることもあるという感じです。で、「著作者」は、「著作物を創作する者」です。つまり、「著作者」と言ったら、その著作物を創り出した人ということです。人と言っても、プログラムや映画のように、一人の人だけでは創作できないような特別な場合には、法人が著作者になるケースもあります。「著作者」が固有に持っている権利を「著作者人格権」といいます。
著作権にまつわる登場人物(「著作権者」)
次に、「著作権者」ですが、こちらは、一般的に「著作権」と言われるさまざまな権利の持ち主ということになります。例えば、「複製権」「上演権・演奏権」「上映権」等の権利の持ち主です。上述の「著作者人格権」と「著作権」とは、別々に考えるのが、法的な立場かと思います。世間では、この2つの言葉を混同して用いているので、今回の事件の意味がわかりにくくなってくるのです。
原曲の作詞家の権利「著作者人格権」
さて、原曲の作詞家の権利ですが、これは「著作者人格権」になります。「著作者人格権」には、「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」の3つにより成り立っています。「公表権」は、著作者がその著作物を公表するかしないかを決められる権利です。「氏名表示権」は、著作物を創作した人の名前を示すか示さないかを決める権利です。そして、今回の事件のキーワードが「同一性保持権」であり、著作物に無断で変更、切除その他の改変が加えられることのない権利です。
「同一性保持権」
今回の事件では、この著作物に無断で変更、切除その他の改変が加えられることのない権利が犯されたとみることができます。内容をむやみに改変されると、著作者の著作物を通して得られる社会的名誉等の人格的権利が害される可能性が高く、当然に保護されるべき内容となるわけです。少なくとも、今回の事件の原作の作詞家は、自分の人格的権利が害されたと強く感じたということだと思います。
実は頻繁に発生する「同一性保持権」侵害
今回は、著名な歌謡曲にまつわる事件でしたので、社会的にクローズアップされましたが、実際にはこの手の事件は頻繁に発生しています。たとえば、自分のビジネスに関する記事を依頼され書いたところ、実際に新聞・雑誌・ホームページ等に掲載された時には、勝手に文字数を減らされたりして、記事のイメージが大きく変わってしまうようなケースです。このようなケースでは、掲載する側が著作者の権利や意思を最大限尊重する義務を怠っているといえます。現実問題、記事を依頼する側も、依頼される側も、この「著作者」の権利を意識し、互いに尊重し合う姿勢が大切だと思います。