- 目次 -
新聞やTVの表現が正しいとは限らない
特許の登録を求めるために明細書などの書類を特許庁に提出する行為を『特許出願』と表現します。ところが、多くの報道では、「申請」とか「届出」とかの用語が用いられてしまっています。それぞれの用語に意味合いを意識しないで使ってしまっているのではないかと思います。iPS細胞の特許に関する報道では、『山中教授のiPS細胞作製法、国内特許成立 京大発表』のように表現されていましたが、実はこれも不明確な表現なのです。特許として登録される用件を満たした旨の通知である特許査定がなされたのか、特許査定に基づき設定登録料を納付して現に登録がなされたのか、はっきりしないのです。
真偽を疑われる報道もある
上記の例はまだ問題になりにくいのですが、実際には特許出願しただけなのに、特許出願=特許登録と勘違いして、特許出願しかなされておらず,特許庁の審査すら行われていないのに『特許登録』という虚偽表示になっている報道も少ないようで多いのが現実です。このような報道がなされる原因には、情報を提供する側と報道する側の両者に問題があると考えられます。
出願人側の責任
特に注意が必要なのは、情報提供側(出願人側)の責任です。やはり、『特許出願』なのか『特許査定』なのか『特許登録』なのかを明確に区別して用語を使い、報道する側に伝える必要があります。もし、この事実関係を正確に伝えないと、虚偽の情報をもって宣伝を行っていることになってしまいます。もちろん、虚偽表示には罰則もあります。特許出願しか行っていないのに、あたかも登録されたかのように表現することもやはり虚偽といえるでしょう。
「特許出願済み」「特許出願中」「PAT.P」
これらの表現は、特許出願を行ったまだ審査請求を行っていない場合、審査請求を行っているが審査の結果が確定指定いない場合に使える表現です。特許出願を行ったものの、拒絶査定が確定し、特許として登録がなされないことが確定しているにも関わらず、依然としてこれらの表現を使い続けると虚偽の表示になってしまいます。出願から3年以上経過し、審査請求を行わなかったために出願自体が取り下げられたと見なされているのに、それでもなおこれらの表現を使い続けているケースが、多く見られます。
「制度がよくわからないから」では、済まされない
ここまで、いくつかの用語をあえて説明なしで使わせていただきましたが、その1つ1つの正確な意味を知らないままに(意味内容を正確に意識しないままに)使用することは、会社の社会的責任がより強く求められている時代に、会社の命取りになるケースが出てきてもおかしくありません。また、「制度がよくわからないから」、という言い訳をしても許されるものではありません。いずれにしても、曖昧なままに法律用語を使うことは非常に危険で、迷ったら弁護士や弁理士といった専門家のアドバイスを積極的に受けていただきたいと思います。