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再生医療の知的財産保護はまだ始まったばかり?
従来、日本の特許審査の実務では、『人間を手術し、治療又は診断する方法』といった人間に直接関係するものは『産業上利用することができない発明』として、特許としては登録されないこととなっていました。しかしながら、再生医療等の特定の分野(例えば、遺伝子治療のための細胞の製造方法など)においては、2003年8月の審査基準の改定により、登録が認められることとなりました。つまり、日本における再生医療の分野の特許に対する取り組みは、まだまだ日が浅いと言えます。
日本の先端技術開発に投下される知的財産資源
日本は、従来から特許をはじめとする知的財産関連に投下される経営資源が欧米に比べて少ないと言われています。特に、弁理士をはじめとする人材に関しては、まだまだ少ないというのが実態かと思います。とはいえ、今回のiPS特許活用に向けて、特許活用を目的とした会社が設立され、特許管理・活用を戦略的に取り組むということですので、大いに期待してよいのではないでしょうか。
重要な目利き力
今後の知財産略・特許管理を考える上で重要な点は、その特許に本当に資産価値があり産業発展に寄与するか否かということを判断する目利きなのではないかと、私は考えます。将来、その発明がどのように産業貢献し価値を生むのかを判断することは非常に難しいところではありますが、失敗を恐れず、果敢に目利きを行っていくことが必要かと思います。そして、発明を生み出した方々に積極的にその価値を説明していただき、目利きの精度向上のお手伝いをいただけたらと思います。
技術開発と特許管理との関係
ベンチャー企業などの特許を資本にしている会社にとっては、『技術開発を通して生まれた特許を単に権利維持していく』という、形式的な特許管理をしていくだけでは不十分なのではないでしょうか。その特許の資産的な価値を高めていくための特許管理が必要になっているかと思います。例えば、上述したようにその特許の価値を十分に理解してもらうための説明を市場に対して行ったり、周辺の重要な他社特許を買い取るような攻めの特許管理も考えられます。今まで日本では、中小企業の知的財産に対して十分な戦略が練られてきませんでしたが、今後一段と、特許管理の重要性が増していくものと思われます。