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そっくり商品は意外に多い
製品外観が酷似しており大手メーカ同士が争うケースは、実は非常に多いというのが実態です。皆さんの記憶にあるところでは、iMac事件、たまごっち事件などがあるかと思いますが、それ以外にも、カップラーメンの外観や缶ビールの外観など、本当に多くのケースが争われています。
製品外観の争いの根拠
製品の外観に関する争いは、当然、その製品を製造販売するメーカに何らかの権利が無ければ、争いになることはありません。まず1つは、意匠権です。意匠権は特許庁に対して意匠登録出願をして、出願した物品の外観デザインが審査され、登録されて権利が発生します。
もう1つは、登録という手続を経ることなく生じるものがあります。それは、他人の不正競争行為から守られるべき権利です。他人が自分の商品とそっくりな商品を販売し、そのそっくりな商品が売れたせいで、自分の商品が売れなくなり利益が上がらず損害を生じてしまったら、これほど腹立たしいことはないと思います。それも、他人が故意にデッドコピー品を販売するとしたら、とんでもないことだと皆さんも思うと思います。
登録の手続が無くとも生じる権利
デッドコピー品を抑える手段として、意匠権はあらかじめ出願という手続きを必要としますが、不正競争防止法による守りは、特段の手続きを事前には必要とはしません。日常の商売上の競業秩序を守る手段で、他人の名声にただ乗りしたり、他人の名声を傷つけたり、他人の名声を希釈化したりする行為を不正競争行為として排除し、結果として真正品を保護しようとするものです。とはいえ、手続きが不要であるが故に、事件になりやすいというのも確かで、特に注意していただきたいところです。意匠権の場合は、その登録の内容が特許庁により公報という形で示されますので、誰がどんな権利を持っているのかある程度は調べることができますが、不正競争行為に関しては、なかなか扱いが難しい点があります。
不正競争行為の態様
コピー商品に係る不正競争行為には、3つの態様があります。まず1つは、混同惹起行為(不競法2条1項1号)で、他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものを販売等し、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為です。2つめは、著名表示冒用行為(不競法2条1項2号)で、自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示使用等する行為です。3つめは、商品形態模倣行為(不競法2条1項3号)です。これは読んで字のごとしで、デッドコピーに関するものです。
対策は?
少なくとも他人の意匠権の存在をチェックするのは最低限必要なことですが、それ以外の情報をあらかじめ入手することは、非常に難しいことです。ましてや他社の開発状況を探ることは、これはこれで企業秘密に触れることで、別の意味で不正競争行為になりかねません。正直言って、不正競争行為に絶対にならないようにすることは、非常に困難で、これぞと言った対策はありません。対策が無いからこそ、大手メーカ同士での争いも絶えないということにもなります。
故意にデッドコピー品を作らないことは商売上の常識とはいえ、知らず知らずに結果として他人の権利を侵してしまった場合でも、市場調査が不十分であったりと、どこかこちらに非があるはずで、誠心誠意対応する気概をしっかり持っていて欲しいと思います。