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特許の審査と、行政上の許認可とはまったくの別物
この社長さんが思い描いていた登録まで2ヶ月というものは、おそらく市町村や県への許認可申請の許可が下りるまでの期間と同程度という認識からのものだと思われます。
一般的な企業の場合、行政を相手にする手続といえば許認可で、短いものは10日間程度、2ヵ月程度で許可が下りるケースが大半だと思います。しかしながら、特許出願については、大きく異なっています。
単純に言葉で説明すると「申請」と「出願」との違いです。「申請」の場合、所定の様式に必要事項を記入し、記入内容(法律や条例が求める要件を具備していること)を証明する書面を添付することになります。そして、申請を受理した役所は、その申請が許可の要件を満たしているか様式上のチェックをし、問題がなければ許可を下ろします。
特許の審査の要件は、無尽蔵?
一方の特許出願においても様式の審査(形式審査)はありますが、主は実態審査と言われる登録性の審査です。登録性とは、大きくは次の3つになります。1つ目は新規性、2つ目は進歩性、3つ目は記載要件です。
公序良俗に反しないなどのほかの要件もありますが、それらについてはここでは説明を省略します。そして、この新規性や進歩性を判断するための基準となる先行技術文献は、世界中の情報がその対象ですから、正直言って無尽蔵です。見方を変えれば、登録を勝ち得るためにクリアしなければならない条件は、無尽蔵にあるとも言えなくもないのです。
審査に時間が掛かって当然!?
審査の対象となる先行技術文献が無尽蔵にある以上、審査に相当な時間が掛かることはご理解いただけるかと思います。とはいえ、実際には特許庁の審査官が限られた情報のなかで審査をするわけで、無尽蔵な情報を手当たりしだいにチェックしているわけではありません。
審査遅延の問題は、審査官の数の問題なのです。特許庁に審査をお願いしてから(出願審査請求を行ってから)実際に審査官が審査を開始するまでに、2年以上の時間が掛かっているようです。つまり、審査官が審査待ちの行列に並んでいる時間が大半だということです。とはいえ、日本の特許庁は審査官の増員を行っており、以前に比べれば審査が早くなる傾向にあるのではないかと思います。
審査には、その特許出願のおかれた状況がポイントとなる
とはいっても、この社長さんのように、何年も審査を待てないというケースは多々あると思います。例えば、特許権を担保に銀行からお金を借りたい場合などもあるかもしれません。このようなケースに対しては、特許庁からも法制度による対応や、中小企業支援の一環としてのインフォーマルな対応をしていただけるようになっています。
早期公開制度、早期審査制度、優先審査制度、中小企業など特許先行技術支援事業等の制度があります。これらの制度は、その特許出願のおかれた状況により活用方法が変わってきますので、制度の理解と出願状況の把握が大変重要になります。
(制度の説明は、次回で)