- 目次 -
原作を基礎にした著作権とは?
今回の事件では、基になる原作が存在し、その原作に依拠(このケースでは原作の基本的な内容はそのままに)して「最終話」を創り、原作者の承諾を得ることなく出版などを行ったことが問題となりました。確かに一つの著作物を「原作」として新たな創作性を加えて創られたものは、原作となった著作物とは別の著作物として保護されます。
このような著作物を「二次的著作物」といいますが、二次的著作物を創る場合には、原作の著作者の許諾が必要になります。少し複雑な話ですが、二次的著作物を利用したい場合は、二次的著作物の著作者の許諾のほかに原作の著作者の許諾も必要になります。
商品化権(マーチャンダイジング・ライト)
今回の事件では原作と同じ形式の媒体(漫画本)でしたが、例えばアニメキャラクターを玩具(ぬいぐるみなど)や文房具として製造・販売されるケースがあります。このように商品にキャラクターを利用する場合の財産的な権利のことを「商品化権(マーチャンダイジング・ライト)」と呼ぶことがあります。キャラクターのような場合には、例えばぬいぐるみにするにあたり、そのキャラクター(例えば漫画の主人公)の表情などの個性まで織り込んで商品化することになります。
著作権法ではそのような抽象的なものまで保護することは困難ですが、漫画や映画などで具体的に表現されたものを利用することについては複製権、変形権などがおよぶと考えられています。このため、一般には、製造業者が原作の漫画家やアニメーションの製作会社と許可を得る契約を結ぶことになります。
すべてがダメ?
では、例えばその漫画のファンが、仲間うちで「最終話」を描いてみることもだめなのでしょうか?法律を文言解釈すればこのような行為であっても慎まなければなりません。しかし一方で、著作権法は「文化の発展に寄与する」ことを目的とするもので、歴史的にみても模倣・模写によって美術や芸術が発展してきたことは明らかです。文化の発展に寄与するものであり、原著作者の権利を著しく侵害しない範囲であれば、許されるケースもあるのではないでしょうか。
今回の事件は、事件を起こした男性自身が一般出版社から単行本を出すなど漫画家として活動した経歴もあり、かなりの冊数が取り引きされて収益を得ている実態に鑑みると、許される範疇ではないでしょう。逆に言いますと、原作者の許諾なく商品販売を目的にビジネスとして二次的著作物を創ることは、「文化の発展に寄与する」という範疇のものではなく原作者の権利を侵すもので、許される行為ではないといえます。