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商標と商品(サービス:役務)との関係の原則
商標制度は、商標自体を直接的に保護する制度ではなく、商売上の競業秩序を維持しつつ商標権者や需要者の利益の保護を図る制度です。ですから、少なくとも競業秩序を乱さない限り、例え同じ商標であっても、複数の者が使うことは認められます。
つまり、例えば消費者層が大きく異なる別々の商品にそれぞれの会社が同じ名前の商品を売ることは可能なのです。ただし、商標登録出願における審査のためにも、競業秩序を乱すおそれのある範囲を明確に定める必要があり、「商品または役務の同一または類似」という概念が導入されているのです(別の趣旨も有りますが今回は説明を省略します)。
どのような商品の範囲ならOKなの?
では、どのような関係の商品同士なら、互いに使えるのでしょうか?上記で説明したとおり、その商品を欲する消費者が出所の混同を起こさない商品間であればOKということになります。
例えば、お菓子と農薬であれば、消費者は、さすがにお菓子メーカが農薬を作っているとは考えませんので、基本的にはOKです。それに、これらが同じお店で近接して販売されているケースもかなり少ないので、店頭での混同もほとんど生じないと思われます。また、畑の真ん中でお菓子を売りながら農薬を散布するといったケースもありえないと思います。
このように、需要者層が異なったり、販売場所が異なったり、使用場所が異なったりといった場合には、同一または類似の商品または役務(サービス)とはならないというのが原則です。
商品とサービス(役務)との関係は?
例えば、テレビという商品と、テレビの修理というサービス(役務)とはどうでしょうか?これは、商品の製造者と修理者が同じ可能性があるのを強く感じるかと思います。
修理店にテレビの修理を依頼したお客さんからすれば、テレビと同じ名称の修理屋さんにテレビを修理を依頼したら、全然別のメーカの修理しか取り扱わない店で、結局しっかり修理をしてもらえなかったらどうでしょう?これは、商売上のモラルから言えば、おかしな話ですよね。このような場合には、商品とサービス(役務)とが違うとはいえ、類似関係にあるとして、いずれかを排除する必要があります。
商品が違ってもダメな場合もあるので注意
一方で、例え商標やサービス(役務)がかけ離れていても、登録や使用が認められないケースがあります。例えば、大手家電メーカの名前を使ったチョコレートや、海外の有名ブランド名を使った風俗店などです。他人の著名な名称にただ乗りして商売をしたり、他人のブランドイメージを損ねるような使用は、これもまま競業秩序を乱すことになりますので、排除されます。
商標の使用の原則
このように、商標を使用する場合は、商売上の競業秩序の維持を前提に検討をするようにしてください。インターネット時代で、販売店舗が仮想的にお隣にある時代ですから、特に留意が必要です。