知的財産:Vol.06 商標権だけでは守れない類似商号にご注意を

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
「商号登記しているのだから、当然に社名は保護されていると考えていいのですよね?」そんな質問を受けることが時々あります。確かに「商号(社名)」という限られた領域では、そう説明することはできます。しかし、その「商号(社名)」を会社が提供する商品名やサービス名に使った場合に、必ずしも十分な保護があると考えていいのでしょうか?

法律上の効力

 会社法では、「商号(社名)」の保護について規定しています。

 つまり会社法で保護されるのは原則会社の名前だけです。会社が提供する商品名やサービス名を相対的に保護しているのは、不正競争防止法という別の法律になります。また、商品名やサービス名を絶対的な権利として保護しているのが商標法です。例えば、社名を商品の名前に使った場合、いくつもの法律によって保護されると言うことになります。では、いくつかある法律の保護がバッティングしたら、どうなるのでしょう?

 過去にある大手メーカの店舗名(商号登記なし、商標権なし)と小さな小売店の会社名(商号登記有り、商標権有り)とがバッティングしたケースがありました。大手メーカーの店舗は、中規模店舗で、すでに広範な範囲に出店しており、地域ではかなりの知名度を持って商売をしていました。小売店の方も、徐々に売り上げを伸ばしつつあり、それが大手の目にとまって、小売店を営む会社に対し、大手メーカーから使用中止の警告が送られてきたのです。

 

 

消費者が基準

 小売店側は、会社設立や商標登録出願以前に相手方の存在を承知していましたが、取り扱い商品が異なることから、商売を開始したのです。
 実際には、メーカーの店舗に著名性が生じ、商品の類似の如何にかかわらず、消費者が出所の混同を引き起こす事態になっていたのです。小売店側に対する苦情が、出所を混同した消費者からメーカーの窓口に寄せられるようになってしまっていたのです。小売店の名前も営業努力があって、そこそこ知られるようになっていたので、営業サイドはかなりのけんか腰で商標権を根拠に争おうとしました。
 しかし結局、大手の著名性があまりにも強く、両者の交渉の末、小売店は、社名はそのまま変えずにすみましたが、商標に関しては使用を中止し、メーカの納得する別の商標登録を行いそれを使うことになりました。つまり、法律ではなく、消費者の認知度の優劣で決着が図られる結果となったのでした。

 

主役は誰?

 このような事件においては、とかく双方が感情的になってなりふり構わず争うケースが多いのだと思います。
 しかし、争いのきっかけは、小売店の消費者に対する心遣いのなさであったと私は考えています。例え商品が重なっていなくても、避けるべき名前だったのです。今回の事件の発端は小売店を営む会社が勝手な思惑で、社名を決め商標登録を得た結果です。「使いたいから使う」のではなく、市場の主役を熟知した上で「主役に使っていただける」ものを選択すべきなのではないでしょうか。

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