日本でも「iPad」の販売が開始されましたが、商標戦略はどうなっていたのでしょうか?米国では、アップル社ではなく他社が商標権を持っていたといわれています。もし、「i Pad」の商標を自分が先に持っていたらどうなっただろう? そんなことを考えた方もいるのではないでしょうか。意外と使っていない自社の商標が、埋蔵金的な価値を持っているかもしれません。今回は、自社商標の潜在力を生かす方法を説明していきます。
そもそも商標は売買の対象になるの?
まず商標法では、自らが使用する商標についてのみ、商標登録出願を認めることを原則としています。しかしながら、商売の多様性に鑑み、登録商標の売買は認められています。実際、商標自体をお金で売買することもあれば、一定の条件でライセンス(使用許諾)することも行われています。ライセンスの典型は、フランチャイズビジネスであるといえばわかりやすいかもしれません。また、商標権者がまったく使用していない登録商標を、他人に使わせて収益を挙げるようなケースも多々見受けられます。つまり商標も財産権の一種で、アパートやマンションと同じような商材と考えてもよいでしょう。
有名ではない商標の売買なんて成り立つの?
フランチャイズでの商標や、ほかの売買の対象となり得る商標のイメージとしては、消費者に広く知られたブランド名が、すぐに思い浮かぶと思います。先入観として、「有名な商標でないと売買やライセンスなどできっこない!」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際に取引された登録商標やライセンスでは、必ずしも「有名な商標」ばかりではありません。実は今では、有名な商標になっているものでも、もともとは、知名度が無かったものが多いのです。そのような商標に目をつけた企業と、商標を持つ企業の間では、企画開発の段階で、すでに商標権の譲渡に関わる交渉が始められるようです。
中小企業が持つ無名商標で、すごい価値がでたものがある!
有名どころでは、「タフマン」の事例が挙げられます。ある清涼飲料を製造していた中小企業が自社の商品の商品名として商標登録出願をしたところ、それを大手メーカーであるヤクルト社が見つけて、相応の金額を提示して買い取りを申し出てきたようです。商標登録出願をしていたこの中小企業は、素晴らしい対応をしました。単純に、商標のみを譲渡するのではなく、「タフマン」の製造受託も合わせて願い出て、それも承諾させました。当該中小企業は商標の買い取りだけではなく、新たに継続的な収入を生み出すビジネスを手にしたというわけです。
まさに、商標が大きな商売を生んだ瞬間です。その他、大手企業がCIの一環で社名を変更する際に、中小企業が所有する無名商標を買い取って活用するケースなど、実際には多く商標が取引されるケースがあるのです。
自社の商品名を棚卸してみよう。
リバイバル・ブームなどが背景になり、ある商標を持っている会社にとっては古くさいと感じていた商品名が、他社や他業界にとっては、のどから手が出るほど欲しい商標になっている可能性もあります。過去に使ってその時はうまくいかなかったり、思いついて登録したが実際には使わなかった商品名やサービス名を、棚卸ししてみてはいかがでしょうか? →この一文削除例えば、あるノートを製造していた会社が、「○○」という商品名で、販売店などに卸売りをしていました。なかなか販路が広がらず、どうしたものかと考えていた時に、自社の商品名を棚卸ししてみたのです。すると、「○○」を開発したときに、「△△」という商品名も考案、商標登録をしていたことに気付きました。そこで、まったく同じ商品を、「△△」という商品名とし、購入を渋っていた販売店に売り込んでみたところ、取引の契約に成功した。こんなケースもあり得るのです。
その他にも、活用方法はいろいろあると思います。もちろん、他社に商品名やサービス名を提案する場合、勝手に使われては困りますから、商標登録出願をしておく必要があります。自社で使用する商標を出願登録するのは当然ですが、自社の商品やサービスを活かすための商標登録出願も頭においておく必要があるでしょう。