知的財産:Vol.55 もったいない! 権利化できたのに……。

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

 最近、こんな話を聞きました。「自社の商品名は、商標登録なんてできないと思っていたのですが、他の人が登録しちゃったんですよ……」「出願前に商品を販売してしまったので、意匠登録できないと思っていたんですが、登録させる方法ってあったんですか?」。知的財産制度を正確に理解せず、中途半端な知識で、権利化(独占権を得る)できたのに、独占権を取り損ねた話です。以下に説明する具体的な失敗例から、知的財産制度の正確な理解の重要性を認識していただけたらと思います。
 

商標登録できたのに……

 あるお菓子にまつわる商標の話ですが、数年前から商品を出荷し始め、売り上げが伸びるにつれて消費者の間に商品名が浸透してきたお菓子がありました。しだいにその商品名は、その会社の商品であると知れ渡るように。この段階で、商標登録出願をしておけば、商標登録がなされる可能性があったのですが、一気に周知度が増してしまったので、同社の社長は、すでに商品名が、「一般名称」になってしまっているため、もう商標登録できないと勘違いしてしまったのです。
 そして、他社が同じ商品名で同じ商品を販売し始めてから、その社長は侵害排除の必要性を感じ、公的機関に相談にいきました。
 しかし、多くの会社が一気に同じ商品を同じ名前で販売し始めてしまい、どの商品がどの会社で製造されたものが区別ができない状態になってしまっているため商標登録が困難な状況に。きちんとした知識を持っていれば、権利化が十分に可能だったのに……。まさに後悔先に立たずです。
 

商品のデザインを独占したかったのに……

 文房具の製品のデザインにまつわる意匠の話です。ある会社が、意匠制度のことは何もしらず、意匠登録出願をすることなくサンプル品を商社に見せながら営業し、展示会でサンプル展示を始めました。サンプル品は、商社や展示会で非常に評判が良かったため、その会社は早速本生産に踏み切り、商品販売を開始しました。
 この時点で、取引先の商社から意匠登録出願をしているか否かの質問を受け、同社の社長は自力で意匠登録制度の内容を調べたようです。そこで社長が知ったのは「新規性」という要素。すでに世に出てしまった意匠は、後から出願しても登録できないという内容でした。結局、この言葉だけで、社長は意匠登録出願をあきらめてしまい、その後他社による模倣を心配し、びくびくする毎日が続いたということです。
 

これらのケースから学ぶ教訓は?

 いずれのケースもそうですが、勘違いや思い込み、知的財産制度に対する正しい知識の不足が生んだ失敗事例です。ブランド戦略にしろ、専門家の助言を受けつつ、慎重に進めておけば、商品名を独占できたり、侵害の心配に悩まされることもなかったのです。意匠のケースの場合、新規性を喪失してから半年以内の出願なら、救済の余地がありました。ただ、販売から3年以内であれば、不正競争防止法による保護も可能なので、まだあきらめるのは早いかもしれません。

 とかく弁理士や弁護士に相談するのは敷居が高く、躊躇することも多いかと思います。しかし、各地の商工会議所や発明協会では、無料の相談が受けられる制度も存在しますので、早い段階での相談をお勧めします。また、ドリームゲートのアドバイザーによる無料相談も、ぜひご活用ください。きっと、良い方法が見つかるはずです。

 

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