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「オレについて来い」はタイプじゃない。「ほっとけない社長」がココロを掴む
「確かに、オフィスでよく独りごといってるよね」。社員に不評だった「大きな声での独りごと」をご指摘すると、照れ笑い。スタッフのひとり、新婚ホヤホヤ の野口さんはアンケートで「大きな声での独りごとはやめて欲しい。話しかけられているのかどうか判別がつかないので」と。もう一人のスタッフ、若手ホープ の森さんは、「独りごとでも、英語で「Oh! No!」とか「Oh! My God!」とか言われると、対応に困ります」と半分真面目に、半分冗談で突っ込みます。
「社長っていうと、かっこよくて、オレについて来 い!っていうタイプが多いと思うんだけど、自分はそんなタイプじゃないんです。そうじゃなくて、『手伝ってあげなきゃ』『ついててあげなきゃ』って思われ るような“ほっとけない社長”を目指してるんです。独りごと言って、生身の自分をさらけ出すことでもあるでしょう?そういうところでさらけだしてはいるけ ど、でも不思議な部分やわからない部分も残しておきたい、みたいなのはありますね」
なるほど。確かに目指す姿には近づいているようです。
リーダーシップというと、ぐんぐん引っ張っていくタイプを想像しますよね。
でも、吉岡さんの場合は少し違っているようです。独りごとをいうことで自分を
オープンにして信頼関係を築き、同じように社員のことも信頼してあるときは頼
りにする、そんなリーダー像が見えてきます。
コーチングで一番大切なベースになるのが信頼関係だと以前に書きましたが、不
自然でない形でこうした関係を築いているといえるでしょう。
雑談の会話じゃなく、面談モードを増やして社員の可能性を引き出す
吉岡さんは、1対1のコ ミュニケーションよりも1対多のコミュニケーションで場を作るのが得意といいます。では、社員とのコミュニケーションではどうしているのでしょうか?
「少人数の会社だから、それなりに雑談はあります。でも、雑談の会話じゃなくて、面談をもっと増やしていって社員のやりたいこと、目指す姿みたいなものを 引き出していきたいと思っていますよ」と一瞬真面目な表情で答えます。
聞くことに徹していた勉強会主催者時代を経てプロのファシリテー ターとして活躍する吉岡さんは、人の特性を見極めるのも得意。社員がどんな風に成長していきたいと思っているのかを理解することに努めているようです。 「会社はあくまでも道具であって、その道具を使って本人がHappyならいいんですよ」。
事業としては、毎年前進しているけれど、個人の 能力をもっと発揮していくような工夫をしていきたいとおっしゃいます。
雑談ではなく面談による社員とのコミュニケーションを増やしていこうという吉岡さんですが、
やはり「質の高い」コミュニケーションを心がけていただきたいなとコーチの立場からは感じま
した。たとえそれが面談の場ではなくても、ちょっとした会話の中で生れる社長からのメッセー
ジが、社員の心を掴む、ということも大いにあり得ると私は思っています。
「社員をヒーローにする!」社外からの評価でモチベーションアップ
「これから挑戦していきた いことは何ですか?」との問いには、「社員をヒーローにしたいんですよ」と、目を細めます。会社を代表しているのは社長だけではなく、社員も同じ。例え ば、プレスリリースを書いたら、そこには必ず書いた本人の名前を入れるとか、ワークショップの運営者も名前をきちんと出すとか、社内で誉めたり評価したり するだけではなくて、社外からも評価されるようにどんどん社員を押し出していきたい、といいます。「お客様の前で誉められたら、達成感みたいなものも大き くなるでしょう?それなんですよね」
「社員をヒーローにする」、とても素敵な響きですね。社長からのアクノレッジだけでなく、
社外からの評価をもっと社員に実感してもらいたい、という気持ちの表れです。社長は社員の
サポーター、まさにコーチである、ということがおわかりいただけるでしょう。
「現役経営者でいる以上、人にアドバイスはできない」
最後に、これから起業する人に一言いただけますか?
「これについては、何もないです。僕が現役経営者でいる以上、人にアドバイスなんてできない。起業については人からとやかく 言われることでもないし、言うものでもないと思う」
あくまでも、ライバル。「自分のことで精一杯で、人にエールを送っている余裕はないです」とおっしゃる吉岡社長の目に、謙虚さだけじゃなく、いたずらっ子のような輝きを感じました。
■ 会社概要
株式会社ナレッジサイン
所在地:東京都中央区
設立年月:2003年4月
資本金:1000万円
事業内容:ITベン ダーへの販促支援サービス、ナレッジ・マネジメント研修、IT人材の教育サービス
URL : http://www.k-signs.co.jp/
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