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「こんな零細企業に優秀な人材なんてこない」って、ホントですか?
印刷工場を経営するAさんと、コーチングの効果について話していたときのことです。「社員にはしっかり効率的に仕事をしてもらって、なんとか業績回 復につなげたいんですよね」と社長。A社長は昭和の時代に工場を継ぎ、ここまで頑張ってきた方です。時代の流れもあって、低迷している業績 を回復するためにできることは何か、というテーマでお話をしていました。
ところが、A社長は、「お話を聞いていると、社員がもと もと持っている能力を引き出すためのコーチングだとおっしゃるけれど、能力がない人はどうしようもないっていうことになるんじゃないですか?こんな 零細企業に優秀な人材なんて元々来ないんですよ。うちなんかの場合は、コーチングは機能しないんじゃないですか?」とおっしゃるのです。
私は正直、がっかりしました。会社のために長年頑張って働いている社員さん達のことを、「できない」「能力が低い」と思っているということですものね。 「社長、御社に優秀な人材がいないって、本当ですか?ここまで会社が存続しているのは優秀な社員が支えてくれているとしたら、どうですか?」と私は思わず そんな言葉を発していました。
「可能性を信じて、とことん付き合う」
一方で、製造業の会社を経営するCさんは、社員についてこう言います。「うちの社員は、古くからいる人も新しく入ってくる若い人も、そろっていい人たちば かりなんですよ」「いい人って、どういう風に?」と私が突っ込むと、「それは無限の可能性を持っているっていうことですよ。おかしいですよ ね、自分のところの社員をそんな風にいうなんて」と、照れ笑い。
Cさん曰く、「一時期、業績が伸び悩んだことがあったんですが、そのとき の工場や店舗のなかには、『どうせ僕らなんか…』っていう雰囲気が蔓延していたように思います。私は、(社員数も少ないですから)一人ひとりと会話 する時間を増やして、いつもありがとう、という気持ちを伝えるようにしたんです。私の会社にいる人間が優秀じゃないはずがないじゃないか!ってね(笑)う ぬぼれといわれるかもしれませんけれど、社員の可能性を信じて、とことん付き合っていくしかないですからね。心底そう思っていますよ」。
モテ社長は社員を信じて業績回復
前出の印刷工場のA社長と製造業のC社長。み なさんは、どちらがモテる社長だと思いますか?
社員のことを一緒に仕事をする仲間、会社のために英知を結集して働いてくれている同志と思 えば、おのずと彼らの可能性を信じざるを得ませんね。業績が振るわないのは、社員のせいじゃないですよ。社長が社員を信じないでどうする のでしょうか。
当然の流れですが、C社長の会社では前期決算で前年比120%の売上げという成果を出しました。残念な がら、A社長の工場は社員の能力を信じていないことだけではないかもしれませんが、相変わらず赤字経営を続けていらっしゃいます。まずは 社長の意識改革が必要だなと感じた事例でした。