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「とりあえず、こんな人が居てくれたら」
「とりあえず、雑用を手伝ってくれる人が欲しい」。事業の立ち上げを目前に控えた起業家の方に、「人材」について質問すると、こんな答えが多く返ってきま す。忙しくて「人の採用に手間を掛けられない」「事業そのものは自分がやるから、あまり重要でないことを引き受けてもらえれば」などの本音が、「とりあえ ず」という言葉の裏側に隠れています。
創業時や創業間もない時期には、目前の課題を解決することに追われ、「人材を育てる」余裕が無いと いう話を、しばしば耳にします。確かに、事業立ち上げの急場をしのぐために、余計なことを言わずに「雑用」を手際よくこなしてくれる人を求める気持ちにな るのは理解できます。
できたて会社に「雑用」は無い
でも、従 業員にしてもらう仕事は単なる「雑用」なのでしょうか。起業家1人と「雑用係」1人、計2名の会社があったとしましょう。起業家が手を離せない他の仕事を している時には「雑用係」がお客様との応対を担当するでしょう。小売業や飲食業などのサービス業であれば、お客様に直接関わる仕事を、お願いすることにも なるでしょう。この時には、お客様から見れば「雑用係」の立場は「起業家の代理人」です。そして、さらに従業員を増やすことになれば、「雑用係」が新人の 育成をするようになるでしょう。
できたて会社では「雑用係」のつもりで採用した従業員に、事業の成長に関わる大事な事柄を、数多く担当し てもらうことになります。できたて会社には「雑用」と呼べる仕事は、ほとんど無いのです。規模の小さな会社だからこそ、発生する仕事のほとんどすべてが、事 業の将来に直結する、重要な仕事ばかりです。
事業の夢を語り、「共感代理人」を 育てる
そうはいっても、起業家と同レベルの専門知識や技術を持った人材に、創業時や創業直後に事業に参加してもらうことは、とても難し いでしょう。しかし、少なくとも、事業についての起業家の考え方をしっかりと理解してもらうことは、できる可能性があります。従業員にすぐやって欲しい仕 事は、山のようにあるでしょう。だからといって、充分に話をせずに、とにかく実務をこなしてもらえばいい、という姿勢は避けたいものです。
ブックオフコーポレーション創業者の坂本孝さんは、「創業時には、毎晩のように従業員と酒を飲みながら、自分の事業の夢を語り続けた」と、話していまし た。小さい会社で人を育てるには、あなた自身の事業への「夢」や「考え方」を、しっかりと、くり返し話すことがとても大切です。少ない従業員を、あなたの 夢の「共感代理人」にすることが、人を育てる第一歩なのです。