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資本を出し合う「共同経営」
共同経営というと、資金を出し 合って一定の比率で会社を共有する形式が一般的です。このカタチで共同経営を考える際には、つい、提供できる資金の額や、設備などの「モノ」に関心が行き がちです。株式会社であれば、株主として出資した金額に応じて、会社の進路を決める議決権が割り当てられるのですから、当然のことだといえます。
これはこれで1つの経営のあり方なのですが、そこで物事を決定する基準は、最終的には「出資額」です。ですから、極端に言えば、ある意見を主張する人の能 力や専門性は問われません。仮に事業の進め方に関して意見が異なり、深刻な対立になった場合には、意見の内容に関わらず、出資額が1円でも多い人の案が 通ってしまうこともあり得る訳です。
知恵・技術や個性を組み合わせる「協働経 営」
いっぽう、起業を考えている人には、それぞれ、専門の領域や詳しい分野があり、得意な技術や知識を持っているものです。また、人に は性格や価値観といった、その人が生きていく上で大切なものを持っており、これも、人によってみんな違います。
「協働経営」は、起業家そ れぞれが独自に持っている、「専門領域や強みになっている知識・技術」と「価値観や性格」を組み合わせて、大きな経営のエネルギーを生み出すことを目指し ます。そして、この協働経営には4つの組み合わせのパターンがあり、パターンによって異なる特徴があります。
協働経営の組み合わせ パターン
専門領域や強 みになる知識・技術 | |||
重複が多い | 補完関係がある | ||
価値観や性格 | 似た部分が多い | 【A】 立ち上がり早く追い風に強いが 判断に偏りが出る可能性が |
【C】 心地良いパートナーだが、相手の領域を 理解しないと摩擦が発生 |
異なる部分が多い | 【B】 明確な上下関 係になるか、 役割や分野を分けると強い |
【D】 相互理解・受 容ができると 補完しあえる最強コンビ |
A型「専門領域・知識・技術」が重なり、「性格・価値観」も似ている
同じようなことに興味関 心があり、物事を判断する際の判断基準も似ています。共通の話題もたくさんあり、短時間で意気投合する組み合わせです。以心伝心でコミュニケーションがで き、短時間でプロジェクトを動かし始めることができる可能性があります。しかし、2人で同じような種類の情報に関心を持ち、解釈のしかたも似ているので、 「リスクの見落とし」や「偏った発想や判断」といったことに陥りがちになる可能性が考えられます。
B型「専門領域・知識・技術」が重なり、「性格・価値観」は異なっている
同じ領域の専門家どう しで、「性格・価値観」が異なっている組み合わせです。同じ専門領域のことで共通の話題が多くても、解釈のしかたや、判断基準が異なるために、意見が衝突 したり、お互いが相手をライバルであると感じたりして、無用な競争意識や摩擦がはたらいてしまうなどの危険性をはらんでいます。場合によっては、上下関係 や役割をハッキリさせることが有効でしょう。
C型「専門領域・知識・技 術」が異なり、「性格・価値観」が似ている
「性格・価値観」が似ているために、短時間でお互いの距離感を縮めることが可能です。なんと なく気持ちも通じ合っているような、心地よいパートナーの関係になる可能性があります。しかし、お互いの「専門領域・知識・技術」が異なるために、ライバ ル関係にはなりにくい利点がある反面、課題に対する理解や問題意識の持ち方に、専門領域の違いが影響し、誤解や行き違い、無用の摩擦が生ずる可能性もあり ます。
D型「専門領域・知識・技術」と「性格・価値観」が、ともに異なっている
初対面では「水と油」のように感じられる組み合わせかもしれません。共通するところが少ないために、お互いを理解するためには、大きなエネルギーを必要と するでしょう。しかし、お互いが相手を「理解」し「受容」できれば、理想的な補完関係を創り出すことができます。「志」や「理念」など、2人をしっかり繋 ぐものが、特に大切です。「ホンダ(本田技研工業株式会社)」の、創業者の本田宗一郎さんと経営者の藤澤武夫さんは、たぶんこの組み合わせだと思います。
「協働経営」は、「ヒトのチカラ」を最高度に活かすことのできる経営のカタチでしょう。しかし、実際に試してみると、なかなか難しいものです。しかし、 「自分と異なる他者を受け容れる」姿勢を持ち、相手とのコミュニケーションを大切にすれば、大きな「チカラ」を、あなたに与えてくれるはずです。