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人間が犬を「食べる」から「食べさせる」へ
40年前の高度経済成長期、マイホームもマイカーも手に入れた日本人は、次に何にカネを使ったか、という観点から考えていくと、前回お話しした子 供の教育関係のビジネスの他にも、中国でブレイクしそうなビジネスはたくさんあります。
例えば、ペット関連ビジネス。私が北京に来た10年前、中国では犬は食べるものでした。駐在当初、北京の街には野良犬がほとんどいないこ とを不思議に思った私は、丸紅北京支店の中国人スタッフにその訳を訊いてみたのですが、「柳田さん、ごちそうが目の前を走ってたら、誰だって捕まえるで しょ」という答えが返ってきて、戦慄を覚えたことがあります。
しかし、この10年間で中国の人々は豊かになり、人間が犬を「食べる」のではなく、人間が犬を「食べさせる」時代になりました。血統書 付きの犬は、サラリーマンの給料1年分以上の値段で売られ、公園で飛び跳ねている犬は、その横をうなだれて歩く民工(みんごん、出稼ぎ労働者)がさっき食 べたお昼ご飯の、数倍もの値段のドッグフードを食べているのです。
血統書付きの犬は金持ちのステータスシンボル
もちろん生活に余裕のない人には血統書付きの犬を買うことはできませんし、自分が食べているご飯より高いドッグフードを毎食食べさせるわけにもい きません。昔の日本のように、今の中国の人たちにとって、血統書付きの犬を飼うことは、金持ちのステータスシンボルの一つなのです。
こんな状態ですので、現代の中国の金持ちはペットのためなら、カネに糸目をつけません。最近では、ペットフード、ペット用品の販売から、ペットの 美容院、ペット病院まで、ペットに関することなら何でも解決できる「ペットのデパート」のような総合店舗も現れ始めました。今後、ペット関連ビジネスの マーケットは、さらに大きくなっていくことが予想されます。
娯楽に飢えている中国の人々
他にブレイクしそうなビジネスとしては、文化・芸術関連ビジネス、レジャー関連ビジネスが挙げられます。生活に余裕のない人は生活のために働い て、家に帰って寝るだけが日常ですが、人は豊かになって余裕が出てくると、人生を楽しみたくなってきます。
会社が終わった後でコンサートに行ったり、展覧会に行ったり、週末にはマイカーに乗って郊外の遊園地に遊びに行ったり、湖畔でキャンプをしたり。
最近はずいぶん増えてきたとはいえ、日本に比べれば、中国にはまだまだ文化・芸術やレジャーの施設、情報が圧倒的に少ないのが現状です。中国では 交通事故が起こると、野次馬の人だかりができます。不謹慎な話ではありますが、これも人々が娯楽に飢えている証拠なのではないでしょうか。
今年8月、ぴあが北京で中国語エンターテイメント情報誌「琵雅北京(びーやーべいじん、ぴあ北京)」を発刊、2007年にはインターネットを使っ たチケット販売を始めるそうです。エンターテイメント先進国から来た私たち日本人が、豊かになり始めたばかりで、人々が娯楽を渇望している中国で活躍でき るチャンスは、まだまだありそうです。
写真:延辺狗肉
近所にある犬肉料理の店です。無邪気な表情でこちらを見つめる犬の写真が哀しいです。10年前、犬をペットとして飼う人がほとんどいなかった時代 は、犬は「食べるもの」でしたが、人々が豊かになるにしたがって、犬をペットとして飼う人が増え、今では犬は「飼うもの」ということが常識になっていま す。