【中国ネットビジネス】
管理機構を中国内に置かないビジネスとは、インターネット通販ビジネスです。
まず中国のインターネットビジネスについての参考データを書くと、2010年6月末時点の中国のインターネット人口は4億2千万人(普及率31.8%)で世界トップになっています。
また、98.1%(3億5千万人)のユーザーがブロードバンドを使っています。携帯電話からインターネットに接続するユーザーも28.9%に増えており、オンラインショッピングの取引規模も増加する一方です。
中国の主要都市以外の地域への物流インフラもEMS、DHL、UPS、FEDEXなど整っています。
日系企業でもベルメゾン、DHC、コクヨ、アスクルなどが中国人に向けインターネットビジネスを展開していますし、最近ではユニクロなども進出しました。
さらに特徴としては、以下のデータをご覧頂きたいのですが、
日本 17.8%
米国 25.4%
韓国 29.4%
中国 48.1%
これは日本の経済産業省が「電子商取引に関する市場調査」で発表している数字で、過去1年の越境EC利用率を表したものです。
中国では2009年末の利用者は1億人を突破し、インターネットショッピング取引額は2630億元にもなります。そんな状況の中国で、EC越境利用率が48.1% にもなっています。
わざわざ中国内で法人を作ってビジネスをする必要は無いのではないか?、と思うのもこのデータから読みとれます。
特に中国ではネット販売を展開しようとすると、ICP経営許可証を取得しなければなりません。その取得条件は、法律的には50%未満の外国資本が入った外資であれば取得可能なはずですが、現実にはほとんど取得できないようです。
しかし、中国人自身が越境EC利用をしてくれることを前提に考えればどうでしょうか?
そうすると
・中国で法人を設立し、ICP経営許可証を取得する必要はなくなる。
・サーバー設置場所や運営拠点が中国の必要がなくなる。
ということが起こり、
税率の安い香港やその他の地域でサーバーを設置し、ウェブサイトを構築し中国人利用者に向けてのアプローチを開始できます。
法制度もころころ変わり、場所によって言うこと、要求することが違う中国とは、異なる場所で事業を開始することは、予測どおりに進まなかった場合の撤退も容易で、失う資金も最小限で済むはずです。
あとはどのように自身のウェブサイトに魅力付けをするか、という点につきます。
仮に中国国内に会社を設立するという選択をした場合どうなるでしょうか。
まず中国国内に会社を設立するのにかかる期間は2~3ヶ月、費用は3~6万元程度、もちろん業種によっても違いますが、インターネット通販をする為に「経営性」のICP経営許可証を取得しようとすると、最低100万元の資本金も必要になります。
もちろん設立した法人は、中国法の適用をうけるのですが、事業展開する上で以下の事柄について検討する必要がでてきます。
1.経営許可問題
2.通関問題
3.税金問題
1の経営許可問題だが、中国でインターネット情報サービスを行う場合にはICP経営許可証が必要になります。このICP経営許可証は「経営性」と「非経営性」の2種類に分類され以下のように定義されています。
「経営性インターネット情報サービス」とはインターネットを通じてユーザーに有償で情報またはサービスを提供する活動を指し、「非経営性インターネット情報サービス」とはインターネットを通じてユーザーに無償で公開性、共有制を持った情報を提供するサービス活動の事を指すと定義されています。
「非経営性」の場合は必要資料の届け出だけで済むのですが、「経営性」の場合は審査があり、これが外資企業の場合、「外資の出資比率は50%以下」「最低資本金は、省、自治区および直轄地の範囲内で営業する場合は100万元、全国または省、自治区および直轄地の範囲を跨(また)ぐ場合、1000万元」と定められています。
要件としてはそれほど厳しくないと思えるのですが、外資で「経営性」のICP経営許可証を取得した例はほとんど無いのが実情であるため、自分が行うビジネスが「非経営性」「経営性」のどちらにあてはまるかによって大きく経営戦略が異なってきます。
現在は、店舗販売している商品のネット通販は「非経営性」で行っても良いという解釈になるようです。
2の通関問題は増値税による費用負担が増える問題と、取り扱う商品が中国に持ち込んではいけない商品にあたるかどうかの問題になります。
3の税金問題は2の増値税もあるが、中国法人にかけられる他の税金問題です。これは日本と比べると対して違わないと感じるかもしれませんが、香港などに比べると税率が高く、損金参入できる経費も厳しく制限されているため(損金参入限度額は下記参照)、国際的なビジネスの中では競争力を保てない恐れがあります。
損金参入限度額
1.従業員福利費・・・賃金給与総額の14%
2.労働組合経費・・・賃金給与総額の2%
3.従業員教育費・・・賃金給与総額の2.5%
4.交際接待費・・・・当年度発生額60%と売上(営業収入)の0.5%のいずれか少ない方5.広告宣伝費・・・・売上(営業収入)の15%
6.手数料・コミッション・・・契約収入の5%
このような手間を考えれば、中国国外に管理機構を置き運営するほうが効率的だとわかると思います。
実際にこの方法は、香港人のネットコンサルタントに教えてもらったことです。
彼の方法は韓国から衣料を輸入し、インターネット通販で販売しているが香港にサーバーを置き、販売をしています。またSHOP CUSTOMERというのを開拓します。これは小売業者で彼の仕入れルートやネットの仕組みを使いたい人に丸ごとその仕組みを提供し、売上に対するコミッションをもらうやりかたです。
このコミッションはもちろん香港にある香港法人に振り込んでもらいます。
香港であれば税率も16.5%、基本的に事業利益を生み出すのに要した経費は全額損金参入、キャピタルゲイン課税なし、相続税無しなど税制面で非常に有利です。
中国市場への窓口として、日系企業として直接中国へ入るより、香港を経由することにより諸手続きがスムーズにいくことが多々あります。これは、香港の銀行、会計士等が手続きに慣れているのと、各種書類の日本語⇒中国語訳がもとめられないことが理由です。
また中国の本土外投資の50%以上が香港からの投資であることからも、こういったケースが非常に一般化していることがわかると思います。
世界にはオフショア地域は数多くあり、その中には税率が0~10%の香港よりもずっと低い税率の場所も多くあります。しかし香港はシンガポールと並び、アジアの金融センターでありビジネスの中心であり続けています。
その理由は、ひとつには金融市場の充実がありますが、為替管理規制はほとんど存在しなく、輸出入に関してもごく限らたものに課税されるだけです。また、法制面でも大部分がイギリスの法律が適応されています。
他の中国進出のアドバイスでこういった事を言っているのは少ないかもしれませんが、「中国に出来るだけ、入らずに中国で儲ける。」
このような考え方があって良いかと思い、今回のコラムを書かせて頂きました。
ぜひ、中国マーケットでビジネスを検討される際は、香港を利用する事をお薦めします。