ドリームゲートサイトをご覧いただいている方で「助成金」という言葉を耳にしたことがあるという方は多いと思います。本コラムでは、厚生労働省が所管する「雇用・労働分野の助成金」の概要や活用ポイントをお伝えいたします。助成金の趣旨等の理解を深め、魅力ある会社づくりに活用していただければ幸いです。
- 目次 -
助成金ってなに?
助成金とは
一般的に助成金というと、厚生労働省が所管する「雇用・労働分野の助成金」を指すことが多いです。
この 「雇用・労働分野の助成金」 とは、厚生労働省都道府県労働局等が、従業員の雇用・能力開発、職場環境の改善・生産性向上等に関する取り組みを行う事業主に対して、目標達成や取り組み自体に対するインセンティブとして、あるいは経費の一部として助成金を支給する制度です。(支給された助成金は、返済不要。)
平成31年度は、70を超える助成金コースが用意されています。毎年4月に助成金コースは見直されますが、今年度は新設された助成金があるものの、その多くは昨年の内容を引き継いでいるようです。
助成金の種類等
「雇用・労働分野の助成金」は、大きく「雇用関係助成金」と「労働条件等関係助成金」に分けることができます。
「雇用関係助成金」は、助成金の種類によってハローワーク、都道府県労働局の助成金センターまたは雇用環境・均等部(室)等が、申請等の窓口となります。
助成金の種類は、次のとおりです。
- 雇用維持関係
- 再就職支援関係
- 転職・再就職拡大支援関係
- 雇入れ関係
- 雇用環境整備等関係
- 両立支援等関係
- 人材開発関係
詳細は、次の厚生労働省HP「雇用・労働分野助成金のご案内」をご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/koyouantei.html
一方、「労働条件等関係助成金」は、主に都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が、申請等の窓口になります。
助成金の種類は、次のとおりです。
- 生産性向上等を通じた最低賃金の引上げ支援関係
- 労働時間の設定改善の支援関係
- 受動喫煙防止対策の支援関係
- 産業保健活動の支援関係
- 退職金制度の確立等の支援関係
詳細は、次の厚生労働省HP「労働条件等関係助成金のご案内」をご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000208406.html
助成金の要件や注意点等
助成金の財源は、主に労災保険料や雇用保険料です。よって、助成金を利用できる事業主は、大前提として、人を雇っていてかつ労災保険料や雇用保険料を支払っている必要があります。この他にも法令遵守をはじめ助成金コースによってさまざまな要件を満たす必要があります。
なお、受給申請までに従業員を解雇してしまうと、助成金は受給できません。よって、どんなに準備をしても、必ず助成金が受給できると断言はできませんのでご留意ください。また、申請書類の作成等はかなり煩雑であり、テクニックが必要とされることがあるため、専門家の力を借りながら取り組まれることをお勧めします。
後述する「補助金」と比べ、助成金は申請から受給までは長期間となる場合が多く、助成金の種類によっては最終的に受給を終えるまでに3年かかるものもあるため、助成金を資金調達の目的とするには向いていません。助成金を活用するのであれば、助成金本来の趣旨等を理解し、法令遵守をはじめとする会社として必要な取り組みを整備することを目的としてください。その結果、助成金がもらえたらラッキーというスタンスが望ましいです。
補助金との違い
一方で「補助金」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思いますが、こちらは経済産業省や中小企業庁が所管とする制度で、経済活動の活性化等を目的として事業活動に必要な経費の補填をするものです。
申請から受給までは短期間の場合が多く資金調達の一つの方法として活用されることが多いですが、予算に限りがあるため早い者勝ちという側面があります。
「助成金」と「補助金」は、国等から返済不要のお金をいただけるという点は同じですが、その目的、手続き方法や受給できるタイミング等は全く異なります。それぞれの特徴について、しっかりと理解されておくことをお勧めします。
助成金を活用するメリットは3つ
- 就業規則や人事制度を整備することができ、あるいは労働環境や教育制度を充実させることで、助成金がもらえる!
当たり前ですが、会社としてどうせ取り組むのであれば、助成金が受給できたほうがお得ですよね。 - 社会的な評価UPにつながる!
助成金を受給できたということは、法令遵守を初めとする多くの要件をクリアしているということであり、また厚生労働省等の審査を通過したことの証にもなるため、対外的に就業規則や人事制度が整備されていることや労働環境や教育制度が充実していることを、堂々とアピールできます。
また、各助成金の目的は、その時点で国が推し進めようとしている労働政策等に関連していることが多いため、社会的な評価UPにつながるでしょう。 - 人材の確保・獲得に好影響を与えることができる!
助成金を活用して従業員の雇用や能力開発、労働環境等が整備された結果、いまいる従業員の満足度向上につながるはずです。従業員が働き易い環境を整えることで従業員の定着率も上がり、またそのような職場は外部の人材からも魅力的に見えることから、採用力向上も期待できます。
お勧めする助成金
専門家に新規に就業規則の作成を依頼することを検討しており、かつ今後は労働環境の改善を図りながら人員増を目指す会社は、次の2つの助成金をセットで活用することをお勧めします。
① 時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)
概要
従業員の健康確保とワーク・ライフ・バランスの推進のため、勤務間インターバル制度(勤務終了後、次の勤務まで一定時間以上の「休息時間」を設ける制度)を導入することを目的として、外部専門家による研修・コンサルティング・就業規則等の作成、労務管理用機器等の導入等を実施し、改善の成果を上げた中小企業事業主に対して、その経費の一部を助成。
助成内容
(1)助成率:外部専門家による研修・コンサルティング・就業規則等の作成、労務管理用機器等の導入等にかかった費用の3/4(一定の要件を満たした場合には、4/5)
(2)上限額:インターバル時間数等に応じて、
① 9時間以上11時間未満 :80万円
② 11時間以上 :100万円
詳細情報
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000498203.pdf
② 人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)(平成31年度新設)
概要
利用できるのは、勤務間インターバルを初めとする時間外労働等改善助成金を受給した中小企業事業主のみ。新たに従業員を雇用し、一定の雇用管理改善を図る場合に助成。
助成内容
(1)計画達成助成:人員増1人あたり60万円(最大で10名まで)
(2)目標達成助成:生産性要件を満たした場合、1人あたり15万円を追加
詳細情報
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000500404.pdf
おわりに
助成金に対するご理解は深まったでしょうか?
助成金の活用にあたっては、雇用や労働分野の専門家である社会保険労務士に依頼することを強くお勧めします。貴社に最適な助成金の見極め、要件を満たすための助言、煩雑でテクニックのいる申請書類作成等で、しっかりとサポートしてくれるはずです。
なお、助成金の活用を促す経営コンサルタント等に指南されて虚偽の申請をした結果、事業主様が不正受給等の法違反を問われたり、あるいは詐欺被害に遭遇してしまうケースが発生していますので、助成金に関する勧誘にはご注意ください。
厚生労働省作成チラシ「助成金に関する勧誘にご注意ください」(下記URL)をご案内しますので、ご参考としてください。
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000377541.pdf
助成金の活用は簡単ではありませんが、雇用・労働分野のさまざまな取り組みをする事業主に対して、国はしっかりと支援をしてくれます。雇用保険料等を財源とするため、いい加減なことをしている事業主は支給対象にはなりませんが、創意工夫し真摯に取り組む事業主であれば、ぜひ助成金を活用することをご検討ください。
助成金を活用して、魅力ある会社をつくりましょう!
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 西久保 裕二(社会保険労務士)
にしくぼ社会保険労務士事務所 代表
ソフトバンクグループの日本最大級ポータルサイトなど、複数の大手企業にて人事業務に従事し、社会保険労務士資格取得後に独立。企業を発展させるための最大要因である「人」に関わる分野を幅広く経験しており、人事労務管理、採用および教育訓練等の人事業務全般に至るまで幅広い経験を有しています。
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- 2019年4月24日 社労士が教える助成金の基本
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