起業したての事業者様の中には、将来的に助成金や補助金を活用して事業展開を行っていきたいとプランニングされている方も多いと存じます。
今回は、起業したての方向けに、
- 助成金と補助金とは何か?
- 助成金と補助金の違いは何か?
- 助成金や補助金はどのようなときに活用すべきか?
などについて、基本的なお勉強をしていきたいと思います。
- 目次 -
助成金とは、人を雇った場合の経費補填のための制度です!
まず助成金について解説していきます。助成金とは、主に人を雇った場合に一定の要件に該当する場合にハローワークより支給される金員です。
当該制度の管轄は厚生労働省であり、雇用の促進を目的とし、円滑な雇用が継続的に行われることを目的として、さまざまな助成金制度が毎年新設、改正されながら、提供されています。
以前より、就職困難者、障害のある就職希望者や高齢者を雇用した場合の助成金はありましたが、特に最近は、契約社員を正社員登用した場合や、社員へ専門的訓練を行った場合、健康診断を行った場合、仕事と介護の両立を行えるような職場整備を行った場合等、働きやすい環境整備を行った事業者に対する助成金が多い傾向があります。
注意して頂きたいのは、助成金はあくまでも従業員の雇用に関する助成制度であるため、事業主一人の会社では、基本的に活用できる制度はありません。また、厚生労働省(ハローワーク)が管轄である制度であるため、従業員が雇用保険に加入していないと適用にならない制度である点も、ご留意ください。
補助金制度は、中小企業を応援するための補助制度?
一方、補助金という制度は、主たる管轄は経済産業省又は、中小企業庁であります。大会社のみならず、中小企業が経済の発展に寄与できるよう、あらゆる事業者の投資を補助金で補てんする制度です。
さらに補助金の特徴は、経済的活性化を目的とした制度であるため、地方自治体や、同業種団体などの民間が補助金制度を行っているケースも多いことです。特に、地方自治体の補助金制度は、活用意義が多いにあると私は考えます。
理由の一つとして、地方自治体が行う補助金制度は、当該地域における経済の活性化を目的とした制度であるため、当該地域の特色を生かした補助金制度の内容になっていることが多く、当該制度を中小企業が積極的に活用することで、地方活性化に直接的に結びつくことになるからです。
例えば、札幌市の場合、漁業や農業などの1次産業を会社間でコラボして6次産業化する事業者を補助する制度や、観光客誘致を応援する事業を補助する制度などがあります。また、札幌から海外へ情報発信したり、北海道を舞台としたドキュメンタリー映像や、映画を作成した場合の補助制度もあります。
じつは、大泉洋さん主演の「探偵はBARにいる3」という映画も、札幌を舞台とした映画であることから、札幌市の補助制度[映画・ドラマ制作助成金]が活用されました!
このように、地方の補助金制度を見ると、その地域の経済的特色や、当該地方自治体が現在力を入れたい事業の内容がわかるため、新たな事業展開における大きなヒントとなるケースも多いにあるのです。
加えて、せっかく自治体が中小企業の応援のために制度化している補助金について、活用する事業者が少なくなってしまうと、補助金制度に係る予算が削減されていくことにもつながってしまいます。補助金制度の予算削減は地域経済発展のためには大きな悪影響となってしまうと懸念されます。
ぜひとも、東京向けの新事業はもちろんのこと、その他の地域の特色を生かしたアイデアあふれる各事業を、各地域の中小企業が補助金を活用しながら展開していってほしいものと考えます。
さてここで、わかりやすいように、主な助成金と補助金の違いを順番に挙げてみましょう。
助成金と補助金の大きな違いは何か
助成金は(人)に係る経費を補てんし、補助金は(物)に係る経費を補てんする。
助成金は、前述のとおりハローワークなどが管轄であるため、従業員などを雇用した際に補てんされる制度です。一方、補助金は備品購入やシステム費用、広告宣伝費など、投資に係る経費を補てんするのが主たる制度となっています。
しかしながら、助成金でも人を雇ってさらに設備などの投資も助成したり、補助金でも設備投資に加えて人件費を補てんする補助制度もあります。あくまでも(人)か(物)のいずれの経費補てんが主たる制度かという違いです。
助成金は要件が満たされれば必ず助成されるのに対し、補助金は競争である。
助成金は、制度が適用されている期間に、要件を満たす適正な手続きを踏んで申請すれば、原則必ず助成が受けられます。
一方、補助金は、募集期間、採択件数、予算などが厳格に決まっているため、申請件数が多い場合は、前述のとおりその申請内容や、事業内容を専門家が審査し、より補助制度の趣旨にふさわしいと判断された事業者にのみ補助されます。つまり申請しても、不採択となる可能性があるのです。
例えば、売上アップのための改善、リニューアル費用を補てんする補助金制度があった場合に、募集企業が多かった場合、より売上アップのために工夫されたアイディアで投資予定と判断された企業のみが、採択されることになります。
助成金の申請を代理で依頼する場合は社会保険労務士、補助金の申請は行政書士などに依頼する!
助成金の申請も、補助金の申請も、提出書類はそれなりにボリュームがあります。そのため、手続きを専門家に依頼することもあるでしょう。
助成金は、厚生労働省(ハローワーク)が管轄であることから、手続きについては社会保険労務士のみが代理で行うことができることになっております。
一方、補助金の申請については、原則だれでも申請することができます。自社以外の専門家に代理で作成依頼する場合は、行政書士や社会保険労務士、税理士などに依頼することが多いです。
自治体主催の補助金は採択の可能性が高い
最後に、補助金は競争率が激しい種類のものも多いことから、申請しても採択されにくいイメージをお持ちの事業者も多いと思います。しかし、自治体主催の補助金については、情報発信が乏しい補助金の種類もあることから、定員割れとなってしまう補助金も存在するのが現状です。
可能な限り積極的に情報収集し、自社にメリットのある補助金制度はどんどん活用していきましょう。
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 加賀谷 豪(税理士、ファイナンシャルプランナー)
株式会社ピクシス 代表取締役/税理士法人アクシオン 代表社員
1981年 北海道札幌市生まれ
同志社大学卒業後、税理士事務所業界経験12年の内、起業者の税務顧問をメインとして携わる中で、より起業支援に特化した研修、勉強会などのサービス提供を目的として、平成26年に株式会社ピクシスを設立。マーケティング戦略・ネット集客に係るプランニングにより、売上のビジョンを明確化するという目的と、それによる充実した事業計画を作成活用することで、融資対策につながるご提案を目的とした起業者向け勉強会を継続的に行っている。平成28年に税理士登録とともに、税理士法人アクシオンを設立
この著者の記事を見る
- 2024年11月2日 年末調整の令和6年改正事項と、近年の間違えやすい主な留意点
- 2024年8月29日 インボイス制度の「8割控除」「2割特例」って?特例期間はいつまで?税理士が解説
- 2024年7月19日 ~定額減税の落とし穴~経営者は気を付けないと年末調整が大変に!?
- 2023年12月31日 インボイス登録した年の確定申告を税理士が解説
- 2023年11月9日 【インボイス対応】領収書の内訳記載方法を分かりやすく税理士が解説~税込価額からの税抜価額の内訳計算など~
- 2023年9月12日 インボイス登録が必要な業種、不要な業種
- 2023年2月7日 【税理士が解説】個人事業主が気を付けるべき、2023年確定申告の変更点
- 2022年11月21日 インボイス制度で利用できる補助金や導入スケジュールを紹介
- 2022年7月12日 税理士が解説・インボイス制度で個人事業主が特に注意すべき3つのこと
- 2022年3月7日 コロナ禍での確定申告、延長できる制度と注意点を税理士が解説