元銀行員がそっと明かす、
今どきの金融機関の選び方【資金調達編】

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 横田 哲也

「メインバンクの意義って何?(怒)良好な取引実績ってイザというときの為のものじゃなかったの!?(怒)」

近年、起業家、経営者の方はもとより、士業の方からもこんな意見をされる機会が増えてきています。

驚くことに、業績堅調な私の顧問先企業にてメイン銀行の上席者から「自分の口から言うのは立場上できないが、この会社の今後の発展を思うと今のうちに然るべき他行取引を構築しといたほうが良い。その必要性ややり方を代表者に説明し、早めに実行してあげてほしい」というお願いをされたこともありました。

金融機関側の個別の事情

原因は【金融機関側の個別の事情】が実務取引に多大な影響を及ぼし、従来とおりの取引セオリーが崩壊してきたことに尽きると思います。

そもそも銀行は民間企業であっても免許事業であり、公的な要素が濃く、古くは日銀、大蔵省、現在は金融庁に生殺与奪権を握られている非常に特殊な業種です。

そのため、一昔前までは「護送船団」「銀行は潰れない、国が助ける神話」が常識だったのです。しかし、今や金融機関はどこも瀕死の状態です。淘汰を逃れるべく延命・救命措置のための合併を加速し、強みの部分で生き残りをかけている今、調達機関選びは本当に重要なのです。

「銀行は経済の血液であるお金を扱う社会の公器だから、企業を育てる義務がある」
「メインバンクとして良好な取引実績が永年あれば、イザというとき助けてくれる」

などと仰る方もおられますが、歴史を振り返るとバブル崩壊時、リーマンショック時にはじまり、現状の実務実態や事象をみると、もはや空疎な願望論にしか聞こえません。

メガバンクをはじめとし、地方銀行・信用金庫・信用組合の経営陣、支店長とは現職時代の同僚や友人という関係で交流が深く、リアルに日々業務を行っている私だからこそ知っている最新の金融機関の状況をそっとここでお話いたします。

今回はドリームゲートでもっともお問い合わせの多い融資相談のうち、

  • フェーズ1(開業前、開業後2年以内)・・・
    【300~500万円、無担保】創業(運転)資金
  • フェーズ2(開業後3年目以降)・・・
    【500~3000万、無担保】運転・設備資金

のケーススタディに沿って記載しましたので、どうぞ最後までご覧ください。

適性金融機関の選び方

フェーズで選ぶ

借入を検討するときはフェーズで分けて選ぶのが最善の方法です。

フェーズ1【起業前、起業後1,2年以内】

《ダントツおススメno.1》
日本政策金融公庫
・直接申し込みもよし、商工会経由もよし。何はともあれまずはここから。
・商工会経由だと、3年目以降は審査激甘のマル経融資(※)も利用しやすいメリットあり。《その他はほぼ一緒の横並び》
都銀、地銀、信用金庫、信用組合
・都銀、地銀はビジネスローン系で手続きは簡単だが、金利が高め
・第2地銀、信金・信組は保証協会付保系の定型商品があるが、手続きが面倒
・民間金融機関はどこもあまり変わらない

※マル経融資(小規模事業者経営改善資金融資制度)は、商工会議所等で経営指導(原則6ヵ月以上)を受けた方に対し、無担保・無保証人で、日本政策金融公庫が融資を行う国の制度

フェーズ2【起業後3年目以降】

銀行からの借り入れ
・銀行2、3行から借り入れを行い、それぞれ保証協会付融資を選ぶ
・マル経融資(日本政策金融公庫)

基本的に、創業後は上記の流れで金融機関との取引を構築するのが、現在1番有利な取引形態となっています。私も個人的にこの流れを強くおススメいたします。

地域で選ぶ

都心部の方はもとより、郊外や地方で都銀の支店が近隣にないのに都銀取引を強く希望される方がいらっしゃいます。

多くの方は振込先に都銀口座を記入したい理由がほとんどですが、ちょっとお待ちください。余程有利なビジネスローンが利用できる場合を除きスタートアップで都銀をメインバンクにすることはおススメしません。

もちろん、振込先口座として活用するのは全然OKですが、決済口座(メイン通帳として使用する、預金残が1番多く、支払い等決済をしている口座)にはstep2段階で保証協会を利用できる地銀、信金信組を利用するのがベストと思われます。

あと、最近の傾向として地方ではマル経はたいがい緩くなっているため、業歴2年超の方は今特におススメいたします。

業種、規模で選ぶ

ここでは業種、規模が非常に多岐に渡るため、金融機関別に特に相性の悪い業種、規模を理由とともにお教えいたしますね。

<業種> <金融機関> <理由>
IT 地銀、信金信組 与信判断力がなく消極方針
金融・風営法許可関連 全部 新規取引開始はまず難しい
<借入規模> <金融機関> <理由>
借入残高10百万 地銀、信金信組 自己査定対象となる為面倒
借入残高30百万 地銀、信金信組 上記のさらに面倒な作業がある為
支社が他県にある場合 地銀、信金信組 管理面、許可の関係上消極方針

他にも色々あるのですがケースバイケースもあるのでお気軽にお問合せください。

関連取引で選ぶ

「関連取引」とは聞きなれない言葉ですが、主に下記の2点を指します。

①借入主の家族取引
②借入主の取引先企業

借入主の関係者における、当該金融機関における取引状況のことを指します。地銀、信金信組においては家族に大口預金者がいる、年金の受取口座がいる、住宅ローン利用者がいる、というのは大きなアドバンテージとなりますので、金融機関を選ぶ際にはご家族にもぜひ聞いてみましょう。

銀行取引の仕方

総論

結論から申し上げると、借入主の業種、フェーズ、規模、展開により適切な金融機関は違います。取引の仕方によって調達可能額も大幅に変わってしまいます。しかもこれは取引開始時の交渉メソッドにより、判別はかなりの確率で可能です。

せっかく事業が軌道に乗って、拡大路線を計画する際、資金調達で後悔しないよう、金融機関は適宜適切なところを選択することが重要です。

メガバンク

正直なところ、所謂中小零細企業は余程のコネがない限り、ビジネスローン等の定型取引以外は望めません。まだまだ保守的な与信判断を行っており、また、人手の省力化を進めていることから個別対応はますますしなくなっていく見込みです。

地方銀行

金融機関によって1番取引姿勢が違うのがこのカテゴリーです。基本的にほぼ8割超の銀行が本来の業務純益が赤字であり、プロパー融資はかなり消極方針です。しかし、生き残りをかけて特定の業種、特定の期間のみ、異常なほど積極対応をしている銀行があり、そこをうまく利用できれば想定外の対応が受けられることもあります。

ただし、カウントダウンにはいっている銀行も複数実在することから、そこだけは選ばないように注意しましょう。(選択した時点でアウト確定です)

信用金庫・信用組合

このカテゴリーも地方銀行同様、金融機関によって取引姿勢が全然違います。地方においては金融機関の財務内容に関係せず、積極的な貸出対応をしているところもあれば、比較的健全な財務内容にかかわらず消極姿勢なところもあります。

ワンマン経営な組織が多いのがその1番の理由です。選び方が非常に見極めにくいのですが、ぜひ有利な条件の先を選びたいものです。

さいごに

今回筆をとらせていただいたのは、各金融機関の状況が猛烈に変化しているのに、情報があまり露出されないことから、多くの方々が銀行取引においてソンをしている現状を憂慮して寄稿させていただきました。特殊な業界だからこそ、ご自分にあった金融機関を選択していただき、事業の発展にお役立てくださいませ。

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 横田 哲也(宅地建物取引主任者、ファイナンシャルプランナー)
株式会社 もみまる 代表取締役

元銀行員で経営総合コンサルタント。銀行員時代の15年間で60業種、約1,500社の企業を担当。融資実行件数は3,000件超に上る。
「地方の経営」に精通しており、士業の先生とは一味違う現役経営者による実践型コンサルタントです。
資金調達からビジネスプランまで幅広く相談に乗ることができます。

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アドバイザー:横田 哲也

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