採択率大幅アップ!?
予算を拡大!もうすぐ公募開始「事業承継補助金」

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 水谷 弘隆

この5年間で日本は、新たにおよそ30万人という多くの中小企業経営者が高齢になります。経営者の高齢化が進む中で、後継者確保が困難であることなどから企業の廃業が増え、経済が停滞するリスクが高まっています。「事業承継」は、今日の日本にとって深刻な問題となっているのです。
このような現状から、昨年新たな施策が策定されるなど、今後の数年間を見据えた事業承継に対する取り組みが強化されました。今年度は中小企業支援施策の一環として事業承継に対する予算が大幅に拡充されており、「事業承継補助金」もその一つです。

「事業者承継補助金」とは

「事業承継補助金」とは、事業承継(事業再編、事業統合を含む経営者の交代)をきっかけとして新たな取り組みを行う事業者に対し、その取り組みに必要な経費を一部補助する国の事業です。補助金によって新たな需要や雇用を創出する事業実行を促して、地域、国の経済を活性化させることを目的とします。

対象となる条件

(1) 応募できる事業者

(ア) 日本国内に本社を置き(個人事業主の場合は日本国内に居住し)、日本国内で事業を興す中小企業者(会社・個人事業主)
(イ) 事業承継を行う、もしくは行った者(今回の補助金で対象となる事業承継の時期は公募要項に記載される予定です)
(ウ) 地域経済に貢献していること
(エ) 事業承継後の新代表者が経営経験や業種の経験を有していること

  (ア)、(イ)については応募資格が明確ですが、(ウ)、(エ)は申請書(事業計画書)の中で根拠とともにアピールすべきポイントとなるでしょう。

(2) 補助対象となる事業

「事業承継補助金」を受給するには、事業承継によって新たな取り組みを行わなければなりません。ここでの新たな取り組みとは、経営革新や事業転換など、自社の経営の向上を図る行いであり、「販路拡大」「新市場開拓」「生産性向上」「事業の活性化」などに該当するものになります。
例として、以下のようなものです。

・新商品の開発、生産
・新サービスの開発、提供
・商品の生産、販売にかかるシステム等の導入
・新サービスの提供にかかるシステム等の導入

(3) 補助率・補助金額

今年度の経済産業省予算資料によると、今年の「事業承継補助金」の上限額は、後継者への承継の場合は500万円、既存事業の廃止や集約、事業所の廃止を伴う場合には上限額が1200万円まで増える予定です(上限額、補助率は調整中)

(4) 補助対象となる経費

補助対象となる経費には、以下のようなものが該当します。
それぞれの経費区分について「対象となるもの」「対象にならないもの」が今後発表される公募要領に記載されますので、必ずご確認ください。

重要な点は2つ、「効率性と生産性が考慮されている経費であるか」、「期間中に取り組みから支払いまでが完了しているか」です。

・人件費(新たな取り組みに従事する従業員の給与など)
・事業費(事業再編に伴って発生する申請書類作成費用、店舗借入費など)
・設備費(店舗・事務所の内外装工事、機械装置など)
・原材料費など
・知的財産・特許関連
・旅費、謝金など
・マーケティング費、広報費
・処分・解体費
・その他多数

(5) 申請から交付までの流れ

① 商工会議所、金融機関、士業などの「経営革新等認定支援機関」に相談
② 応募
③ 交付申請(事務局)
④ 承継事業実施
⑤ 事業完了報告(事務局)
⑥ 補助金請求(事務局)
⑦ 事業化報告(事務局)

注意点がいくつかあります。
まず応募をする際には、経営革新等認定支援機関による確認書が必要になります。こちらは申請書類一式を作成後、商工会議所などの認定支援機関に相談して発行を依頼してください。
また補助金額などの決定は、申請書類を精査した上で通知されるため、応募時の希望額より減る可能性があります。
補助金の交付は、補助事業完了後、30日以内に実績報告書を提出し、そこから2〜3ヶ月程度の期間が必要です。
採択から交付までは1年程度かかりますので、その間は自己資金によるつなぎが必要になります。補助金交付までのつなぎ融資については金融機関にご相談ください(中小企業庁は金融庁を通じて補助金つなぎ融資に適切に対応するよう要請しています)

(1)〜(4)について、くわしくはこちらをご確認ください。

http://sogyo-shokei.jp/assets/files/shokei/boshuyoukou_29shokei.pdf

平成30年度は予算が大幅に拡大される!

平成29年度の「創業・事業承継」に対する予算は総額で11億円でした。
しかし、平成30年度の「事業承継・世代交代集中支援事業」に対する予算は“50億円”と昨年度から大幅拡大されており、「事業承継」が今後の大きなテーマとして位置づけられていることが分かります。

採択率も大幅アップ!?

採択件数で見ると、平成29年度の「事業承継補助金」の応募件数は517件、そのうち採択されたのはわずか65社でした。採択率はおよそ13%と、他の補助金と比較しても採択率はかなり低めです。

グラフ

通常、継続して公募を行う補助金は、年々採択率が低下していく傾向にあります。
しかし、昨年新たに「事業承継」を数年間にわたり集中的に支援していく施策が策定されたり、平成30年度の事業承継(補助金)予算が大幅に拡大されたりと、今後において「事業承継」が重要視されているため、今回の「事業承継補助金」の採択件数、採択率に関しては増加が見込めます。
また上記の図から、他の補助金(来年度も継続して公募が見込まれる補助金)と比較して、採択された地域への偏りがあまり見られません。重要なのは地域経済に貢献しているかどうかだということです。

さらに採択率を高める!

採択率を高めるポイントは、事業計画書です。
「事業承継補助金」の提出書類の中には、当補助金の使い道を記す事業計画書が必要です。事業計画書の内容は、承継による新たな取り組みに対して「独創性」「実現性」「収益性」「継続性」などの点から判断します。
また多くの補助金には、申請書類を作成する際に加点ポイントというものが存在します。テーマが設けられており、そのテーマに該当するものであれば審査時の加点になります。「事業承継補助金」にも当然ありますので、応募の際はしっかりと確認しましょう。

 

最後に

平成30年度の「事業承継補助金」の公募はほぼ確実です。公募開始の時期は3月末を見込んでいます。申請期間が1ヶ月程度と余裕がありませんので、今のうちに公募に備えましょう。また、平成30年度の追加公募、もしくは31年度に関しても公募を続くと思いますので、今回間に合わなくてもその次に向けてチェックしておくと良いです。

この記事の監修:ドリームゲートアドバイザー水谷 弘隆氏
(One Step Beyond株式会社 代表取締役)
MBA/中小企業診断士/一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会ジュニアコンサルタント

1990年から2007年まで旭化成住宅部門にて主に購買・調達業務に従事し、翌年からコヴィディエンジャパン(米大手医療機器メーカー)にて日本法人の購買責任者を務める。
その後、ノボノルディスクファーマ(欧大手製薬メーカー)日本法人の購買責任者、クインタイルズ・トランスナショナル・ジャパン(米大手臨床開発会社)日本法人の購買責任者を経て、2016年に経営コンサルタントとして独立開業(One Step Beyond株式会社代表取締役)。中小企業の経営顧問、事業計画策定支援、補助金申請支援、海外進出支援など積極的に活動する。

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