資金調達の成功事例集 Vol.04 創業5年で約5億円の融資を獲得!

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
こんにちは。資金調達コンサルタントのヒガシカワです。金融機関から資金調達を行うにあたり、一番必要とされるのが、「金融機関との良好な関係の構築」です。今回の事例(Vol.3~Vol.4)では、その関係を構築するための答えがふんだんにちりばめられています。これを読めば、金融機関は皆様の敵ではなく、味方であるということがよくわかっていただけるだろうと思います。

金融機関からの信頼獲得方法

Vol.3からの続きです。

金融機関への融資依頼は時間をかけて取り組む事にしました。「本来の目標は資金が底を付く1年半後ですが、誰も傾いた会社に融資はしてくれないでしょうから、約1年後に定めました。まずは大手行に口座を作りそこへ大企業クライアント様からの入金を集中させます。そして、他の複数金融機関とも取引を開始し、依頼されていないにもかかわらず、試算表は云うに及ばず最初の大手行の銀行通帳のコピーまでをも開示し続けました。そうして大企業との取引を中心に実際のビジネスが成立している企業だとの評価を積み重ねながら、半年後くらいには、一部の銀行から信用保証協会の保障付きの融資の打診を受けました。」と松村さんは言います。

当時、並行して金融機関の信用を獲得するためにはどうすればよいか?を各金融機関の担当者に聞いて回わったそうです。その結果、小額の不利な金利の融資でも受けて完済を繰り返す事が信頼に繋がるとの返答だったので、融資の申し出を受けることにしました。各金融機関の営業上の施策に乗っているだけかもしれないリスクは覚悟の上で、融資を受けたお金には一切手をつけずただ返済だけを続けました。「完済したら、次はもう少し有利な条件で融資してくれる方向性を確約してもらうことや、信用保証協会の保障を小分けにして多くの金融機関から融資を受け、ひとつの金融機関の施策に左右されない環境を作ることは、手間がかかっても忘れてはいけないことです。」と松村さん。

これらの実業が堅調あることの訴求、必要以上の情報開示、不必要な融資を返済し金融機関のルールの中で信用を積み上げること、そして次の融資条件の要求を繰り返すことにより、創業5年後には、8つの金融機関からすべてプロパー/無担保の中長期融資で約5億円の融資を受け、約1億円の当座貸し越し枠の設定を得るまでに至りました。そして、この各金融機関の方々から受けた信頼、すなわち資金的な余裕は、いざと言う時の時間的余裕となり、モジュレのビジネスの自信にもなって業績向上に寄与したのです。「日本の金融機関はリスクをとらないと言われています。しかしベンチャー企業側も、事業内容もよくわからず実績も少ないベンチャー企業にお金を貸す側の気持ちを少しは理解するべきでしょう。それを理解し信頼を積み重ねれば、日本にもリスクテークする真のバンカー達がいることを私は体験してきたのですから。」

反面、ベンチャーキャピタルへの出資依頼は、計画はしたものの結果は芳しくないものでした。創業3年目にある証券会社の協力の下、出資説明会を行い30社程のベンチャーキャピタルの方々にお集まり頂き、その内の4社と具体的な話迄は進んだのですが最終的にお断りをする事になってしまったそうです。理由は、モジュレの業務形態では仕事が増えてくると月々のサービス契約料金をお客様からいただくので資金が回転していること、その立ち上がりが計画より早く資本金もある程度余っていたこと、そして前述のとおり真のバンカー達に出会えた結果、多くの融資を受けられたこと等が主たる要因です。ただし、ベンチャーキャピタルの出資形態が投資契約という出資とは程遠い融資に近い契約形態になっていたことも理由のひとつで、この辺りはベンチャー企業が気をつけなければいけないポイントの一つだと思います。

「このような創業経緯、資金調達を経て上場企業となったモジュレは、今後の中期計画の中で『良い会社』を目指して、管理パソコン数7,000台→30,000 台、経常利益5%→7%以上、日本全国の拠点展開、そして社員一人当たりの経常利益額をIT業界のトップクラスにといった目標に向かい努力を続けるつもりです。」と松村さんは目標を語ってくれました。

 

 

松村さんからのアドバイス

松村さんからこれから起業される後輩の方々へ、いくつかの成功の為のポイントを頂きました。

「まず、日本社会と経済界の暖かさを信じる事が重要でしょう。起業するとその周りに群がる人達や将来を夢見る同じ立場の方々との交流が深まっていくでしょう。しかし、日本は多くの歴史ある中小企業の経営者達や大企業で世界を相手に戦っているビジネスパーソン達の宝庫です。自分達にはない経験と実力を持った立派な方々が多いのは事実です。そんな方々と臆することなくそして奢ることなく交流を深めて、自分達にない堅実かつ強固な企業文化を学ぶ事は必ず役に立つと思います。

次に、事業構造や自分の身の回りを単純な構造にしておく事をお奨めします。複数の関連会社や義理に縛られた役員構成、資本構成では本当に必要な事業スピードが得られません。新しい企業でなくては出来ない何かを見つけて実践していきましょう。その為にはシンプルな事業構造が強く賢い先輩企業達との競争に勝ち抜く大きな武器に絶対になります。

また、あまり偉そうな事や夢ばかりを語らない事も大切だと考えます。
起業家と云うのは起業家になった瞬間に同時に経営者にもなるのです。夢は夢で大切ですが、堅実な範囲でできることを話すことがビジネス界では信頼に繋がる唯一の道だと私は固く信じています。大きな事を言いたければ言うのではなく、その話をする時間を大きな事を成し得る為の実力向上に当てるべきです。そしてその大きな目標が堅い目標に感じられるようになったら、好きな時に好きな場所で話をすれば良いのではないかと思います。

最後に、納税の大切さです。場合によっては人の気持ちよりも経済的利益を優先せざるを得ないことがある企業経営ですが、利益を上げその一部を社会還元する事により唯一その社会的な価値が担保されていると言っても言い過ぎではないでしょう。よく『税金の使われ方が気に入らない』という理由で節税のグレーゾーンに踏み込む方々がいますが、それはただの言い訳に過ぎません。納税者としての適切な行政への監視は必要な事という前提で敢えて乱暴な言い方をすると、税金の使われ方が気になるのであれば商売人をやめて役人になるか、立候補して議員になれば良いのです。私達が目指しているのはあくまでも経済人・ビジネスパーソンであるはずです。節税にかける時間をビジネスに振り向け、より多くの利益を稼げるようにお互いに実力を磨こうではありませんか。

偉そうな事を述べましたが、私とモジュレもまだまだベンチャー企業です。これを読んで頂いている起業家とその仲間の方々と一緒に、健全且つ新しいビジネを広げて行ける事を祈っています。」

 

 

今回のポイントをチェックしましょう

今回の事例におけるポイントは3つあります。この3つを行うことで、銀行は松村さんを信頼し、その結果、「金融機関との良好な関係の構築」ができました。

それでは、ひとつひとつの答えについて説明させていただきます。

1.依頼されていないにも拘わらず試算表は言うに及ばず最初の大手行の銀行通帳のコピー迄も開示し続けたこと

自分の事業の内容をすべて開示することで、「私はあなたの銀行に対して、都合の良いことも悪いことも一切隠し事をしませんよ。全面的にあなたの銀行を信頼してますよ。」というメッセージの発信になります。金融機関の取引先の中には、金融機関を敵として考え、できるだけ情報を開示しようとしないお客様が少なからず存在します。しかし、金融機関の担当者はお客様のことを敵だとは思っていません。お客様が困ったときにも、何とか手を貸してあげることが出来れば、と考えています。嘘隠しなくすべてを開示してくれるお客様については、金融機関側も好意的に考えるのです。

2.金融機関の信用を獲得するためにはどうすればよいか?を各金融機関に聞いて回ったこと

実は、金融機関との良い関係を構築する上において、このテクニックはかなり有効なのです。教える立場から言うと、「教えを請うてきた人」にいろいろなことを教えた場合、そこには何らかの人間関係が構築されます。たとえば、「教えた人間に対する責任」であります。担当者が借入希望者に対して、助言・指導をした場合、それを忠実に守って借入希望者が行動して、それが仮に失敗したとなれば、その責任は助言・指導した担当者にかかってきかねません。ですから、ものを教える人間は、教わった人間に対して成功するように、応援していくようになります。そして、大事なのは「教わったことを実際に実行すること」であるのは、言うまでもありません。

3.完済を繰り返すこと

金融機関の大きな特徴のひとつに、「実績主義」というのがあります。人様の大事なお金を預かって、他の方に貸しているため、あまり危ない橋を渡って、そのお金をなくしてしまうわけにはいきません。ですから、危ない橋を渡らないために担保をいただいたり、実績を重視するのです。実績は何といっても、一番説得力がありますから。融資を受けて、きちんと返済する(完済する)という行為は、実績としては文句のつけようもないことなのです。これを繰り返すことにより、金融機関の信頼度は強固なものとなってくるのです。

金融機関によっては最近は、担保を重視せず事業計画書の良し悪しで融資の判断するというところも増えてきました。そういう金融機関と早めに取引しておけば、資金調達の近道となるかもしれません。

何度も申しますが、大事なのは「金融機関との良好な関係の構築」なのです。今回の事例においては、その方法がいくつかありましたが、良好な関係を構築するのには、それだけではありません。みなさんもぜひ、それ以外の方法についても考えていただき、ご自分の資金調達に役立てていただきたいと思います。

 

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