いままでいろいろ な助成金を紹介してきましたが、助成金を受給した事業主さんは具体的にどのような感じでその助成金を利用しているのでしょうか?今回は、訪問介護事業を立 ち上げて、「介護雇用管理助成金」を上手に活用した事例をご紹介します。
通常、助成金の使途は自由です。何に利用してもかまいません。しかし、この介護雇用管理助成金の場合は、その助成対象が 限定されています。この会社さんが利用するにあたり、助成対象として選択したのは、次の3点でした。
それは、「求人広告」、「就業規 則」、「腰痛ベルト」です。上限はありますが、これらに支出した費用の半額が助成金として支給されますので「大いに助かりました」と感謝されました。
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助成対象選択の理由とは
それでは、事業主さんがなぜ上記の3点を選択したのかをご説明しま す。
まずは、事業の立ち上げにあたって「人」の募集を行うためです。そのためには「求人広告」を利用しますが、1回の掲載に対しては5 万~10万円位の掲載費用がかかります。仮に1回5万円の広告を10回行えば、それだけで50万円の費用が消えていきますが、助成金を利用すれば後で25 万円の費用が戻ってきますので、非常に助かります。
ただ、「求人広告」は、あくまでも自社の常勤の従業員を募集することが対象となり、残 念ながら登録ヘルパーや派遣労働者の募集に関する求人広告は対象外になります。
求人広告は何度か行わないと人の確保ができないため結構費 用がかかってしまうのですが、今回、こちらの事業所さんでは助成金の対象費用が約60万円と認定されましたので、その経費の半額、約30万円を受給するこ とができました。
そして、「就業規則」を選択した理由は、人を採用して組織として活動するには、きちんとしたルールを策定 しておかないと、後々、トラブルの種になりうることがあるからです。「就業規則」は、いわば会社の憲法です。会社のルールを作ることにより、きちんとした 「労務管理」を行うことができるようになります。「会社の休日はいつ?」、「遅刻した場合は?」、「会社の車で事故を起こしたら?」、「無断欠勤をする従 業員への対応は?」など、さまざまなことが起きます。
会社の中できちんとしたルールが作成できずあいまいなままでいますと、だんだんメチャクチャな運営になり組 織としての規律が保てなくなりますし、従業員からの質問に的確に答えることもできません。しかし、きちんとした「就業規則」を作れば会社には一定のルール ができ、規律が生まれます。実際に、懲戒規定に該当する事例があった際に、就業規則を作成していたために円満に解決することができたということがありまし た。こちらも対象経費の半額を助成金として受給することができ、事業主さんいわく「就業規則を作成していて本当に良かった」とのことでしたが、今回の場合 も、この助成金を利用することで会社の実情にあわせたオリジナルの「就業規則」を、実質半額の値段で作成できました。
最後に「腰痛ベル ト」について。訪問介護の仕事は、実は力仕事です。サービス利用者の方の身体の位置を変更したり、移動のために車椅子へ乗せたりする作業などがあるので す。そのため、腰にどうしても負担がかかり、腰を痛めてしまうことがあります。
しかし、あらかじめ腰痛ベルトを巻いておくことにより、腰 への負担が軽減されます。こちらも助成金の対象となることを案内したところ、「ぜひ利用したい」ということで助成対象として選択をしました。これは従業員 の福利厚生にもつながりますし、働く人にとっても職場環境の改善につながります。おかげで従業員の定着率が向上した、と事業主さんも喜んでいました。
介護雇用管理助成金の利用について
この「介護雇用管理助成金」は、「介護基盤人材確保助成 金」の計画を申請するときに同時に利用できるものです。介護事業は人のパワーが必要な事業なので、人に関する雇用管理をきちんと行う事業主さんに対して助 成金が支給されるのです。今回の事例では、創業時にスタッフを募集する「求人広告」や、会社の規定である「就業規則」の作成、そして従業員の腰を保護する 「腰痛ベルト」を整備することにより、事業主さんにも従業員さんにも喜んでいただきました。
申請のポイントとは?
申請のポイントとしては、とにかく申請期限を守ることが第一です。期限 を過ぎれば1円ももらえません。そして掲載した求人広告の原本は保存しておくこと。もちろん、就業規則を作成したら、労働基準監督署へ届け出ることも忘れ ないでください。また、申請時には、見積書、領収書、現物のコピーなどが必ず添付書類で必要になります。捨てないでくださいね。
事業主さんいわく、「やはりプロに頼んでよかった。創業時のバタバタしているときに、事前に計画を出さなけ ればならないし、忙しい中でいろいろな書類をそろえないといけないので、かなり大変なのがよくわかりました」とのことでした。
なお、この「介護雇用管理助成金」は、新たな介護事業への参入、現在の介護事業と異なるサービスの提供、介護事業を行っている事業所が新たに支店を設ける などの場合に利用できます。ぜひ、上手にこの助成金を活用されることをおすすめします。