資金繰りを明確に
私の経験では、資金繰りに関しては、大体社長さんは頭で認識されているか、メモ書きで対応しているなどのレベルがほとんどであり、実際に資金繰り表を作られているというケースはほとんどありませんでした。しかし、資金繰り表を作成しないと、いくら資金調達するべきなのかすら見えてきませんし、金融機関に対して説明するとしても具体性、迫力がなくなってしまいます。特に創業資金の調達に関しては、金融機関としても海のものとも山のものとも分からないところにお金を貸すわけですから、事業計画ならびに資金計画は必須となります。
資金繰り表は簡単に作れますので、皆様も手を動かしてつくってみたらいかがでしょう。そこで、今回と次回にわたり、私がいつも作成する資金繰り表の考え方を2種類説明いたします。
1つ目は銀行、金融機関向け、もしくは資金のトレンドの確認の為の資金繰り表
2つ目は社内的に使用する月間の資金繰り表です。
今回は金融機関向けの半年程度の資金繰り表の作成の仕方です。私はいつもエクセルで作成しています。作成方法は下記のとおりです。月単位で縦書きに作成します。
【 タケダ商事 資金繰り表】
勘定科目 | 説明 | 6月 | 7月 | 8月 |
---|---|---|---|---|
月初残高 | (前月末残高(A)) | 500 | 380 | -470 |
売掛金回収 | (売上金回収額) | 1000 | 600 | 1500 |
原価支払 | (買掛金支払) | -600 | -900 | -400 |
人件費支払 | (給与など支払) | -300 | -300 | -300 |
経費支払 | (その他経費) | -200 | -200 | -200 |
営業収支 | (以上を差引(B)) | -100 | -800 | 600 |
資金調達 | (借入調達) | 0 | 0 | 0 |
借入返済 | (毎月の返済) | -20 | -50 | -50 |
財務収支 | (以上を差引(C)) | -20 | -50 | -50 |
収支合計 | (D)=(B)+(C) | -120 | -850 | 550 |
月末残高 | (E)=(A)+(D) | 380 | -470 | 80 |
たとえば、上記だと6月初日の現預金残高は500円ですね。そして、6月中に入金になる売り上げ、これは通常顧客との支払条件のとりきめで5月分だったり、4月分だったりするわけです。あくまでも、現金・小切手で入金になるものだけを記入します。
今回は、簡略化のため手形回収は考慮していませんが、手形分も入金からは外します。
そして、原価支払いに関しては、いわゆる変動費(売り上げが増えると増える経費)を考慮します。ここでは、600円を6月中に支払うわけですね。この、原価の支払いのタイミングと売り上げの入金のタイミングが資金繰りを狂わす最大の原因となるのです。
そして、人件費、経費も6月に支払う予定のものを記入します。中小企業の場合は、人件費と経費は、ほとんど毎月一定になりますから合計で考えても結構です。ここでも、7,8月と同じ金額で考えていますね。(賞与の支給等がある場合などは注意)
以上、仕事の本業のお金の動きを営業収支と表現します。
これをいったん集計するわけです。(B)
そして、その下に財務収支というくくりがありますが、これは何かと言うと簡単にいうと借金、およびその返済と考えてください。ここでは6月に借入の返済が-20と入っています。資金調達、返済は本業のお金の動きとは区分してみているわけです。
その結果、このくくりの集計が財務収支となるわけです。(C)
ここで、営業収支と財務収支を足してこの月の収支をだします。ここでは-120となります。(D) また、この数値を月初残高(A)と合計したものが月末残高(E)となるわけです。 この(E)が翌月(7月)の月初残高となって、上記と同じプロセスをたどっていくこととなります。 そこで、右に目をやると 7月の末の残高が-470、8月末の残高が+50となっています。
つまり、7月にのみ資金が470円ショートすると言うことです。したがって7月に資金を少なくとも470円調達する必要があることが分かります。この流れを見ながら、銀行への交渉を開始するか、支払いを遅らせるか、回収を早めるかを検討に入るわけです。
前回お話したとおり、
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資金繰りの極意とは→ 回収を早く、支払いを遅く!
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と言いましたが、安易に資金を借りるのが良いのか、取引先に入金を早める交渉をするのか、支払い先に待ってもらうのかは、その会社が置かれている力関係、取引先との関係によりますので定石はありません。
以上のとおり、
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資金繰り表なくして事業の将来性を検討することは不可能!
と言っても過言ではありません。
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また、この資金繰り表を作成する目的は
・いつ
・どのくらいお金が足りなくなるのか・・・
という点を認識するためとなります。
つまり、細かい数字はあまり気にしなくても結構なのです。資金の流れのトレンドがつかめれば十分ですから。
ほとんどの会社が作成していないと言うから不思議。ぜひ、作ってみてください。そして、財務に関して指導されている方は,作ってあげてみてください。
今回作成したものは、かなり簡易な形式にしてありますが、ベースの考え方はこれがすべてです。後は皆様が会社の資金の流れに合うようにアレンジしていただければ結構です。
さて、タケダ商事の資金繰りにこのような事態が発覚しました。大変です!
では、次回はこの資金繰りが7月の何日にいくら足りなくなるのかを検証したいと思います。