【どっちを選ぶ?】
新規で創業する時は個人事業?それとも法人?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: 加賀谷 豪

 

創業時の重要な選択肢の一つとして、個人事業で開業するか、それとも法人で開業するか、という選択肢があります。どちらがよいかという明確な正解はもちろんありません。ただし、個人事業と法人との違いや特徴を把握しておくことで、自身が創業する際にはどちらがよいか、大きなヒントになると思います。

税金面、融資面、取引面などにおいて、それぞれ特徴がありますので、今回その一部をご紹介します。選択の際の参考にして頂けたらと思います。

現在の法律では、個人事業又は、資本金1000万円未満で開業した法人の場合、最長で2年間、消費税の納税義務がありません。

売上が1000万円を超えないような規模の場合は、継続して消費税の納税義務が免除されるのですが、そうでない場合は、個人事業から始めるか、法人から始めるかで、免税期間が異なる可能性があります。

例えば、個人事業で開業し、初年度で売上が1,000万円を超えた場合、3年目より消費税の納税義務が生じます。

その場合、例えば3年目より資本金1,000万円未満で法人を設立すれば、さらに法人で最大2年間の免税期間が生じる可能性があります。トータルで4年間となります。

個人事業の期間 法人の期間
最大2年 消費税がかからない期間 最大2年 消費税がかからない期間

そのため、個人事業で開業し、途中で法人成りする方が、法人で最初から開業するよりも、消費税の面で有利となる可能性があるのです。

社会保険負担に大きな差がある!

個人事業と法人の大きな違いの1つに、社会保険(健康保険と厚生年金)の加入義務の有無が挙げられます。

個人事業の場合、常時5人以上の従業員が働いていた場合に、初めて社会保険の加入義務が生じます。(ただし5人以上であっても、任意となる業種もあります。)

一方、法人の場合は社会保険の加入は強制となります。社長1名で設立した場合も、社会保険の加入が義務付けられます。

社会保険は、役員又は従業員が保険料の半分を負担し、会社が残り半分の保険料を負担します。例えば

(東京都 平成30年4月分 従業員30歳 月給30万円の場合)
社会保険料納付額 月額

健康保険
総額29,700円・・・・・・・・従業員負担 14,850円
会社負担 14,850円

厚生年金
総額54,900円・・・・・・・・従業員負担 27,450円
会社負担 27,450円

となります。
このように、各従業員、役員の健康保険、年金の半分を会社が負担することになるため、会社が社会保険に加入するということは、人が増えるごとに経費が大きく増えることを意味します。
そのため、社会保険負担のことを考えて、最初は個人事業で様子を見るという選択肢もあります。

一方で、個人事業の場合、社長個人は社会保険に加入できないため、社長自身が国民年金ではなく、厚生年金に加入したい場合は、法人を選択することになるでしょう。

信用に影響がある?

事業者が個人事業か法人かで、対外的信用に差が生じることもあります。

大規模な公共工事などについては、一部個人事業では行えない工事などもあります。

その他仕事を依頼する場合も、個人事業か、法人かで、事業規模や信用度を判断し、法人との取引を優先するというケースもあるでしょう。

しかしながら、美容室や飲食店などは、取引先が一般消費者であり、法人名などではなく、店名・屋号で知られることがほとんどであるため、個人事業か法人かで取引に影響が少ない業種の代表例と言えるでしょう。

例)
・コンサルティングを依頼したい
⇒屋号 ゲートコンサルティング (個人事業主)
⇒株式会社ドリームコンサルティング
・・・・・会社の方がなんか信頼できそう!

・バーでお酒を飲みたい
⇒店名 ゲートバー  (個人事業主)
⇒店名 ドリームバー (会社名 株式会社ドリームカンパニー)
・・・・・通常店名しか見ないので、どちらでもいい!

そのため、例えば法人にする場合も、上記のような店舗業種の場合、株式会社か、合同会社かで、取引における信用度に差異が少ないため、設立費用の少ない合同会社を選択するケースもあります。

株式会社・・・・・設立費用 約25-30万円
合同会社・・・・・設立費用 約10-15万円
※司法書士等に依頼した場合

融資に影響はある?

個人事業か、法人かで銀行から借入を受ける際に、影響があるか否かですが、まず開業当初は個人事業か法人かで大きな差異はありません。

事業を継続していった場合に、個人事業であっても、法人であっても、継続して業績がよい場合は、融資を受けられる可能性は高いのですが、長期的にみると、借入が可能な金額に差異が生じてくると考えられます。

継続して法人として取引を続けると、保証協会の保証枠に加えて、銀行独自で保証する、いわゆるプロパー融資という枠が増えていき、個人事業より融資可能額が増えていく可能性が高いです。

また、日本政策金融公庫においても、法人として一定の規模になると、中小企業事業という部門より借入ができるようになり、通常の国民生活事業の融資より、融資枠が一気に大きくなります。

住宅ローンにも影響が?

さらに加えると、実は事業者個人が住宅ローンを組む場合も、個人事業か法人かで、影響があると言われます。

個人事業主は住宅ローンの審査が比較的厳しいと言われています。理由は、サラリーマンなどと比較して、長期的安定収入が確保されるか不透明である。と銀行は判断しているためです。

この点については、法人を設立した社長が個人の住宅ローンを組む場合も、個人事業主の場合と同様に、住宅ローンの審査は容易ではないです。
しかし、事業規模が一定の大きさであったり、事業年数が長かったりする場合は、法人から役員報酬として安定的に給与をもらっていて、且つ事業規模が個人事業より大きく、リスクが少ないと銀行側が判断し、個人事業主よりローンを組みやすくなるケースがあると言われております。

いずれにしても、個人事業の場合と、小規模である法人の場合は、事業本体の業績も加味して判断される点は同様です。

所得に係る税金が異なる!

個人事業で所得が発生した場合、法人で所得が発生した場合、いずれも所得に対して税金がかかります。
この所得に係る税金ですが、個人事業と法人に若干の特徴、違いがあります。

まず、個人事業の場合、所得税という税金がかかるのですが、この税金は、所得が増えれば増えるほど、累進的に税率が上がっていきます。

一方、法人の場合、法人税などの税金がかかるのですが(その他、社長には役員報酬について所得税がかかります)、この税金は、所得800万円など、一定のラインを超えると税率が上がりますが、それまでは税率は一定となります。

そのため、所得控除の金額によって一概には言えないのですが、所得が500万円前後までは、個人事業の方が所得に係る税金が少なく、それ以上になると法人の方が所得に係る税金が少なくなる可能性があります。

このように、所得の見込みによって、個人事業で開業するか、法人で開業するか選択することも考えられるのです。

最後に、簡単な表にまとめましたので、選択の際に参考にしてみてください。

個人事業で開業 法人で開業
消費税 途中で法人成りすることで、最大4年間消費税の免税期間となる可能性がある。 設立時の資本金が1000万円未満の場合、無条件で、2年間免税期間となる可能性がある。
社会保険 ・社長個人は社会保険に加入できない。
・常時5人以上の従業員がいる場合、原則社会保険に加入
社長1名の会社であっても、原則社会保険に加入
信用度 飲食店などの一部の店舗業種の場合、屋号が取引時の名前のため、個人事業であっても信用度に影響が少ない 一般的に、会社名義の方が、信用度が高い業種が多い。
融資、住宅ローン 住宅ローンの審査が厳しい傾向がある ・個人事業よりは住宅ローンを受けやすいケースがある。
・一定の事業規模で継続すると、融資枠が個人事業より大きくなる
所得に係る税金 一定の所得までは、法人より税負担が少ない 一定の所得を超えると、個人事業より税負担が少なくなる可能性がある

執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 加賀谷豪(税理士、ファイナンシャルプランナー)
株式会社ピクシス 代表取締役/税理士法人アクシオン 代表社員

1981年 北海道札幌市生まれ
同志社大学卒業後、税理士事務所業界経験12年の内、起業者の税務顧問をメインとして携わる中で、より起業支援に特化した研修、勉強会などのサービス提供を目的として、平成26年に株式会社ピクシスを設立。マーケティング戦略・ネット集客に係るプランニングにより、売上のビジョンを明確化するという目的と、それによる充実した事業計画を作成活用することで、融資対策につながるご提案を目的とした起業者向け勉強会を継続的に行っている。平成28年に税理士登録とともに、税理士法人アクシオンを設立

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