さて、前回のコラムでは「セルフスカウティング」を通じ、ご自身の「起業戦闘力」を“みえる化”する第一歩についてお話ししました。今回はその「セルフスカウティング」では見えにくく、多くの起業家の皆さんがはまりがちな陥穽(落とし穴)である、「サラリーマン信用力の見落とし」についてフォーカスしていきたいと思います。
このサラリーマン信用力の活用は、いわば起業に際しての助走作業。この助走を上手に取れるかどうかで「銀行活用」の成否が大きく左右され、起業戦闘力を爆発させられるか否かが決まっていきます。
今回はそんな「セルフスカウティングでは見えない強み=サラリーマン信用力」の存在について認識していただくと同時に、それを起業戦闘力として最大限生かすためにはどのような考え方が必要かについて解説します。今回のコラムのポイントは以下の3つです。
1. サラリーマン信用力は起業後には絶対に手にできない不可逆的なパワーである
2. しかしサラリーマン信用力をフルに使いすぎてしまうと、起業戦闘力を下げる結果を招く
3. 起業戦闘力への振替~最大化にはライフイベント表の作成+住宅ローンの触媒活用がキモ
- 目次 -
スカウターから漏れてない?!サラリーマン信用力の強さ
前回のコラムでは「セルフスカウティング」による、みなさんの「起業戦闘力のみえる化」についてお話ししました。賢明な読者の皆さんであれば ①簡単に取り組めて ②その効果も大きい “速射法マインドマップ”の作成に、早速取り組まれた方もいらっしゃるかもしれません。
これは事業計画を練り上げるにあたり、ご自身で練り上げる際にも、コンサルタントや銀行員などの第三者の方と共同して練り上げる際にも、大切な原石になっていくはずです。
ですが、せっかく拾い集めた大切な原石に“モレ”があったらいかがでしょうか?モレの存在は“皆さんがお持ちの資産=強み”を活かしきれない部分を生む原因になってしまいます。そんな、絶対に避けたい“モレ”ですが、セルフスカウティングでも漏れがちで、かつ、大きなパワーをもっている項目があります。
それが、「サラリーマン信用力」の存在です。独立開業後の身分は対外的に、特に銀行から評価される際には“とても不安定な身分”と評価されてしまいます。片や、サラリーマンなどの勤め人である間は“安定的な身分”と評価されます。私は銀行員時代、住宅ローンの書類についても何百と目を通しましたが、サラリーマンの属性を開業後上回るのは、一般的な事業規模では不可能です。
“サラリーマンは安定的な身分”、言われてみれば当たり前のことですが、起業前の状態の皆様には当たり前すぎて気づきづらく、これを資産としてとらえられる方は中々いらっしゃらないのも現実です。
サラリーマン信用力を起業戦闘力に変換するには
そんな大きなパワーをもつはずの「サラリーマン信用力」が「セルフスカウティング」の中で漏れてしまうのはなぜか。それは「サラリーマン信用力を起業戦闘力に変換できることを知らないから」に他なりません。サラリーマン信用力から得られる“具体的果実”がもし見えていれば、おそらくモレが発生することもないはずです。
ではここで、起業直前のあなたについて見つめなおしてみましょう。あなたがいま現在持っているのは“サラリーマンとして安定した身分”、その中身はサラリーマンのキャリアとして“最長の勤務年数”と“最大の年収”なのではないでしょうか。そう、起業直前というのは「サラリーマンとして過ごす中で、銀行から評価される信用力が最大化している瞬間」なのです。
同じサラリーマンでも、新卒3年目の若手と、現在起業を目の前にしている“まだサラリーマン”のあなた、同じ住宅ローンでも大きな金額が借りられそうなのはどちらでしょうか?もちろん後者ですね(実際、後者の方が大きな金額が借りられます)。
その金額こそが、定量化された「サラリーマン信用力」の数値になります。この信用力は不可逆的なもの、一度退職してしまったら二度と取り戻すことはできません。退職前にキッチリ形にし、起業戦闘力を高めておきたいところです。
サラリーマン信用力の大きさ=起業戦闘力の大きさではない
それではサラリーマン信用力を起業戦闘力に変えるためには何が必要か、それは「借入イベントの完遂」です。“借入イベント”とは、人それぞれのライフステージで必要とされる資金を借りる行為そのものを示す造語です。起業に際しては、ライフステージ上、経験しておかなければならない“借入イベント”を、退職前すべて済ませておくことが重要です(借入イベントすべてを起業十数年後に先送りすることも選択肢の一つとして取れますが、それで自己実現をはかれる方は少数派であるとここでは仮定します)。
その上で「最重要の借入イベントは?」と考えてみると、“起業というタイミング”や、その“金額的ボリューム”で考えると「住宅ローンが最重要」という結論に至ります。住宅ローンをまだ借りていない方、もしくは借りて数年経っていらっしゃる方は、サラリーマンの内にこれらへの対応を済ませることをお勧めします。(くわしくは次回に掘り下げます) ここで注意点ですが、極端な例として「サラリーマン信用力のフル活用=最大金額での住宅ローン組成」は、もちろんお勧めしません。サラリーマン信用力のすべてを数値化=借入残高に換えてしまうと、当然その負債額が増えてしまい、それは起業後の自分自身の首を絞めることにつながってしまいます。
サラリーマン信用力を起業戦闘力として最大化させるためには、自身の信用力がどの程度あるかを知ったうえで「必要十分な金額にとどめての数値化(借入)」とすることが必要なわけです。
次回
今回はセルフスカウティングでは漏れがちな「サラリーマン信用力」の存在について、また、その信用力を「起業戦闘力」として最大化させるためにはどのような考え方が必要かについてお話ししました。
サラリーマン信用力を起業戦闘力として落とし込むには、“起業の際のライフステージに同期”しつつ、そのボリュームも“個人が借りられるローンで最大”である「住宅ローン」を触媒とすることが重要であるとお分かり頂けたかと思います。
次回はこの「住宅ローン」を触媒として起業戦闘力を高める、その具体的な方法についてお話しします。キーワードは「期限の利益」。銀行員は誰もが知っている、そんな名前の利益があるということを知るだけで、住宅ローンを起業戦闘力に最大化した状態で組みあげることができます。どうぞお楽しみに!