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安心・安全な食生活を考えると、生産現場の生産者に行き着いた
日本人の主食である穀物にこだわる田辺さんは、食の欧米化や農薬問題など、食物ビジネスが多様化する現在、主食の満足が育む健康で心豊かな食生活を実現したいと考えるようになったという。その形の一つが「雑穀.net」であるという。この新サービスの特徴は、農家さんの想いを"顔の見える雑穀"というカタチにしたものだ。
「モノ」単体購入から「コト」情報購入を。お客様と生産者の共感が好循環サイクルに
雑穀商品は数多く存在し、消費者の購入ルートもさまざまだ。現在の雑穀商品は、その商品成分の機能性やパッケージで購入されること、つまりは「モノ」を購入することが多かったという。しかし「モノ」という単体の購入でなく、「コト」という情報をも含めた購入がおこる時代を予想している。
この「コト」というのは、どの生産者が、どんな想いで、どんな作り方をしているかという情報であり、「コト」を付加させることで、お客様と生産者の間に共感が生まれ、生産者もお客様のための商品づくりへという好循環サイクルができると考えているという。
生産者との信頼が大前提。いまは数字よりも想いを大切にしたい
「これまでは大した苦労でなかった草とりも、無農薬栽培ではケタ違い。にも関わらず、収穫量は少ない。このプロジェクトを進めていく上で、生産者との信頼関係は大前提。ただ単に、数字を追うだけではなく、少し長い目でプロジェクトを見つめ、生産者との想いの共感を大切に続けていきたい」と田辺さんは話してくれた。主食を改善するという漠然とした目的をなんとかカタチにして、お客様に届ける。強い想いを持ち続けることが何よりの原動力だという。「この点は"苦労"というよりも"やりがい"です」と笑顔で答えてくれた。
農業はこれからがアツい。ポイントは共感で繋がった渦の活動になること。
日本は戦後、工業化が進み農業は衰退の一途をたどってきたが、昨今、食や農の環境は変化し始めている。単に「モノ」の購入ではなく、その「モノ」を形容する健康や安心などのキーワードの登場や、日本古来からの穀物文化の見直しなどが、その大きな要因だという。
ヨーロッパにみる有機農業の普及拡大と、消費者の意識変化を例に挙げれば、民間組織と企業、生産者、そして消費者という4者の想いの共感が、渦となった活動を生んだことが成功の秘訣だといえる。日本での成功事例は、このような取り組みから始まると信じたい。