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資源1:『土地』
「土地」については、全国に耕作放棄地などがありますが、地権者の資産保有意識は高く、貸借や売買は困難を極めます。まず自治体や地元の農業委員会にかけあうことがベターです。上手く農地を確保する秘訣は、やはり味方についてくれる市町村役場の担当者を持つことです。農業参入した方が抱える悩みのうち、一番多いのは、耕作放棄地のような元々条件の悪い農地を借りたことにより、土づくりや基盤整備など初期投資がかさんだり、恒常的に収量が上がらないなどといったことです。
何度か現地の行政窓口を訪ねる中で、役場担当者と仲良くなり、地元農家や地権者に「熱心に農業をやりたがっている人がいる」との情報を事前に入れ込んでもらえると、条件の良い農地を紹介してもらえることもあります。特に、土壌、傾斜、日当たり、水はけ、道路の隣接具合などは最重要なため、ここは留意すべきポイントです。
資源2:『資金』
「資金」の確保については、民間の金融機関からの融資の壁は高いのが実情です。きちんとした経営計画を県の農業改良普及員と一緒につくり、民間または地元の農協系等の金融機関にかけあうことが必要となってきます。また一方で、アグリ・エコサポート投資事業有限責任組合のように環境面や地域活性化、効率性などの観点で革新的な農業を行う経営者や企業に対して比較的大型の出資を行うファンドも設立されており、まだ少数ですがこうした民間ファンドからの資金調達にチャレンジする方も見られます。
農業を始める際には、農地や機械の賃借料や、設備や資材の初期投資が必要となり、規模や作目によって大きく異なりますが、葉物野菜を数反レベルで始める際、一般的には500万円程度が必要と言われています。しかし一般的は葉物野菜の場合は、春先から営農を開始し、販売代金は秋の収穫時に入金されることが多いので、初年度の運転資金も必要となります。個人で農業を始める方の多くは、貯金などの自己資金を切り崩しながら生活されています。
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資源3:『働き手』
「働き手」は、生産の規模を決定するもっとも大きな制約要件となってきます。当然、作目により異なってきますのでいくつか例を挙げて解説していきます。
稲作の場合
機械化が進んでいるので、インフラ環境さえ整えれば個人レベルで就農することも可能です。
野菜の場合
早朝の収穫から晩までの出荷作業とかなりの労力が必要となります。特にキャベツ、大根といった重量野菜(これに対してレタスやほうれん草などの軽いものを軽量野菜と言います)には、重労働がつきものです。
畜産の場合
家畜の健康面に細心の注意を払わなければならないため、365日、休みのない仕事となります。さらに、畜産の場合は、重労働がつきものなので、これに耐えうる体力と覚悟が不可欠です。
ある農業生産法人は、今でこそ稲作の他、肉牛や野菜、いちごなどを手がける、年間売上数千万円の大型経営体になっていますが、当初は就農した代表者、たった1人から始まりました。まず1,2年目で稲作に取組み、ひとりで食べていける自信が得られてから、就農前の知人づてに農業を始めたい若者を募りました。その一方で、スモールスケールでの畜産や野菜、果樹の生産に挑戦し、徐々に働き手と経営を車の両輪のように拡大していきました。農業では一般的な企業のように大型の就職活動サイトがあるわけでもなく、地域内で即戦力となる働き手が見つかることもあまり期待できません。全国新規就農相談センターに登録し、農業を始めたい都会の方を募ったり、個人ブログなどITを活用した募集情報を発信することが必要なアクションとなります。
資源4:『技術』
「技術」の習得は、農業大学校出身で、生物や肥料、農薬に関する最低限の知識がある場合を除き、OJTで学ぶことが基本となります。スタッフ募集している農業生産法人や牧場で、最低3年以上は働き、基礎的な生産技術を習得しなければ、ひとり立ちはまず難しいでしょう。まずは国や自治体にある就農支援センターに問い合わせることから門戸は開かれます。
しかし、参入1年目で独立、成功するケースも見られます。こうした事例に共通するのは、たゆまぬ研究精神はもちろんのこと、農地を確保する際に懇意となった役場担当者や、県の農業普及員、地元の近隣農家に、その土地柄にあった独自の栽培ノウハウを学ぶことで、ベテラン並みの農業を実現している点です。
まとめ
どんな職業にチャレンジする場合でも同様ですが、特に自然や天候を相手とする農業にチャレンジする際に不可欠なのは、机上のテキストやネット上の報だけではなく、地元の人とネットワークを築ける人懐っこさではないでしょうか。
今まで述べてきた4つの資源のうち、特に「土地」や「技術」を確保するためには、参入前に地元の役場担当者や普及員と懇意になることが必要です。企業が参入する際も、個人で名を上げた参入者も、その成功の裏には必ず地元行政マンや農協関係者、周辺農家の理解とサポートがあります。「働き手」の調達においても、特に50~60歳代の地元女性の手作業は、経営の宝となっています。都会からの就農者だけの閉鎖的な参入者が4 つの資源の確保において壁にぶつかっているのを多く見てきました。4つの資源をうまく手に入れ、農業で成功するために必要なことは、『人懐っこさ』であると言っても過言ではないかもしれません。
バックナンバー
農業ビジネス Vol.01 素人から農業で起業する2つのパターン