授受の法則

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

出題・解説:羽根 拓也(アクティブラーニングスクール代表)

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起 業すれば、さまざまな形で他者の助けが必要になる。そんな時、うまく他者の助けを導ける人と、導けない人がいる。違いは何か?実は、人に助けてもらうために は、先に人を助けておく必要があるのだ。今回は、コミュニケーションの原理原則、「授受の法則」についてお話してみたい。

同僚が引越しをする。借家の契約が切れるので、なんとしても週末中に引越しを終らせなければならないのだと言う。週末、特に用事も無かったので手伝ってあげることにした。人手が足りなかったので、同僚は大喜びしてくれた。

そ れから一ヵ月後、緊急の仕事が入ってきた。週明けまでにレポートをまとめなければならない。膨大な資料に目を通さなければならず、とても一人で終わりそう にない。そこへたまたま件の同僚がやってきた。事情を説明すると、引越しのお礼に手伝いたいと言ってくれた。渡りに船であった。いっしょに休日出勤をし て、なんとか月曜までに資料をまとめることができた。

だれしもこんな体験を一度はしたことがあるだろう。他人を助けることで、相手から別の助けを得ることができた。アクティブラーニングでは、これを「授受の法則」と呼んでいる。

「授 受の法則」は、人間のコミュニケーションにおいて頻繁に目にすることができる普遍的な法則である。我々は、望むと望まざるに関わらず、他者との関係におい て、この「授受の法則」に従って生きている。興味深いことに、これは単なる道徳の話ではなく、生物学的な一機能であるということが、最近わかってきた。

「ミ ラー細胞」という細胞の存在が今、大脳生理学者の間で注目を集めている。人間の脳内に、相手の反応をそのまま鏡のように返す細胞組織があるというのだ。例 えば、母親が赤ちゃんに対し、ニコっと微笑むと、ある時期を過ぎた頃から赤ん坊は母親に微笑み返すようになる。母親は子供が喜んでくれたと思うわけだが、 実際には、喜んでいるわけではないということが最近わかってきた。

赤ん坊の脳内にあるミラー細胞が反応し、母親が見せた表情をそのままコピーし、鏡のように返しているのだという。赤ん坊は、このミラー細胞を使って人間活動において欠かせない、高度なコミュニケーションの技法を学んでいるのだ。

ミラー現象は、赤ん坊だけではなく、大人にも見られる現象である。簡単な実験をしてみよう。

会社で、あるいは家庭で、近くにいる人にむかって、本当に嬉しそうな顔をしながら相手の顔を覗き込んでほしい。中途半端にではなく、本気で、まるで宝くじにでも当たったかのような顔をしながら、相手の顔を見つめてみる。

するとどうだろう。相手の顔がすぐに、こちらと同じように、ニコニコ顔に変わっていくのがわかる。何も言葉を発していないにも関わらず、相手は、こちらから与えられた「笑顔」を正確にコピーし、返してくれる。

次 は、別の実験だ。別の人に向かって、これ以上ないというぐらいに思いつめた顔をして、相手を見つめてほしい。本当に、今、交通事故を起こしてきたかのよう な悲しそうな顔をしながら、相手の顔を見つめてみるのだ。すると驚くことに、相手の顔もみるみる同じように思いつめた顔になってくる。そしてたまらず「ど うしたの?」と声をかけてくれる。言葉を発していなくても、相手はこちらが与えたものを正確に返してくれるのだ。

こちらが笑えば相手も笑う。こちらが怒れば向こうも怒る。人間は基本的に相手にもらったものをそのまま返すように、プログラミングされているということができる。

さ て、起業家を目指す皆さんにとって、この授受の法則をいかに利用していくことができるのか?独立するということで、何でも一人でやるのだと誤解してしまう 人が多いが、実際には、起業すれば、多くの人の助けが必要であるということがわかる。そんな時、授受の法則を使えば、思いとおりに人の助けを借りることがで きるのだ。

例えば、ある人の助けを借りたいと思ったとしよう。その時、「助けてもらえないでしょうか?」と持ちかける前にすることがあ る。それは先に相手を助けておくということだ。相手が困っていること、相手が求めているものを見つけ出し、こちらから先に相手の手助けをするのだ。そうす ると相手は授受の法則に基づき、自然にこちらを手伝おうとしてくれる。順番を間違えてはいけない。こちらから先に助けることが授受の法則を利用する鍵だ。

そ の時、大切なことは、本気で相手を助けたいと思うことだ。後で自分が得するために助けようという意図が前に出すぎると、相手にもそれが伝わる。すると相手 もまた、自分から何かをもらうことを前提に助けようとしかしなくなる。しかし、本気で相手のためになりたい、相手を満足させてあげたいと思って手伝えば、 相手もまた授受の法則に従って、本気で行動に出てくれる。

人を動かす魔法、それは、先に与えることである。

今日から早速、授受貯金をすることをお勧めする。常日頃から、周囲の人をどんどん助けておこう。貯金はすぐに引き下ろせない場合もあるが、回り回って必ず、自分に返って来る。「与えよ、さらば与えられん」である。

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 【羽根 拓也 プロフィール】

日 本で塾・予備校の講師を勤めた後、1991年渡米。ペンシルバ大学、ハーバード大学等で語学専任講師として活躍。独自の教授法はアメリカでも高い評価を受 け、94年、ハーバード大学より優秀指導賞(Certificate of Distinction in Teaching)受賞。「知識を与える教育」から、「自己成長力を向上させる教育」こそが、世界に求められていると考え、97年に東京に「アクティブ ラーニングスクール」を開校。これまで日本にはなかった「自己成長力」を育成する教育機関として各界より高い評価を得ている。独自の教育理論えおその指導 方法に、有名企業、政府関係機関、教育機関などより指導依頼が絶えない。

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