「公力効果」で自己管理力を高める

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

出題・解説:羽根 拓也(アクティブラーニングスクール代表)

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起 業すれば、当然、自己を管理する能力が求められることになる。特に事業を立ち上げて間もない頃は、何から何まで自分でこなさなければならず、自己管理能力 の必要性を痛感するに違いない。「自分にはとても無理だ、起業は向いていない」と考えた人、実は正解である。自分ひとりの力で自分自身を管理しようと考え ること自体が、そもそも間違っている。今回は、自己管理能力を高める「公力(こうりょく)効果」についてお話してみたい。

自 己管理能力のなさを嘆く20代の若者から、先日、こんな話を聞いた。将来、起業を目指す彼は、会計知識に強い経営者になりたいと考え、今年の年頭に「年内 に簿記試験に合格する」という目標を立てた。忙しい仕事の合間に勉強し、合格することを目指していた。しかし、秋になり、目標は早くも「来年の目標」に回 ることがほぼ確定的になってしまった。つまり、「毎日勉強」というやるべきことをやれなかったのだ。このままでは簿記はおろか、起業すら難しいのでは?と 自分自身の自己管理能力の無さを嘆き悲しんでいる。

自己管理は、我々が自分で考えているよりもはるかに難しい仕事だ。それどころか、ほと んど不可能だといってもいい。やりたいと思うだけで実現できると考えるのは完全な幻想である。それまで早起きをしていなかった人が、「早起きをしよう!」 と決めるだけで、早起きができると考えることに無理がある。人間は自分で決めた約束事は簡単に破る生き物なのだ。過去 3年間の自分を振り返ってみればそのことがよくわかる。どれだけ多くの「決断」が不履行になっていったことだろうか?

はっきりと言お う。まず必要なことは、自分で自分を管理するという幻想を捨て去ることだ。これまでアクティブラーニングスクールで多くの人の目標達成のプロセスを見てき た。結論から言うと、自分の意志の力だけで目標を達成できる人はほとんどいない。では、我々は自分の意志で何かをやりとげることは全くできないのか?い や、できないことはない。自分ひとりではできないと言っただけだ。人の力を使えばできるのである。

簿記の勉強をするために明日から朝 5時に起きることを決めた Aさんと、明日、社長を空港に連れて行くために朝 5時に起床しなければならない運転手の Bさんがいる。どちらが確実に目を覚ますことができるだろうか? Bさんに決まっている。簡単なことだ。他者がからめば、責任が増す。責任が増せば、実行の可能性が高まる。この簡単な原理を利用するだけで、自己管理能力 を上げることが可能になる。

アクティブラーニングでは、このことを「公力(こうりょく)効果」と呼んでいる。我々は自分一人で立てた約束 は平気で破る。しかし、周りの人に影響を与えてしまう形で立てた約束は忠実に守ろうとする。自己管理能力を上げたければ、自分でやるべきことを、公の影響 力を利用する形で実現してしまえばいいということになる。

「公力効果」を最大限に利用し、自己管理を達成している見事な例を紹介しよう。 アメリカ映画の最高峰、「アカデミー賞」を受賞することを目標にしている私の友人がいる。彼は毎月、自分の知人にメールマガジン形式のメールを送信してい る。メルマガのタイトルはずばり「チーム・オスカー」だ。送信してくれとお願いしているわけでもないのだが、半ば強引にレポートが送られてくる。

メ ルマガの中で、彼は、今、どこまで原稿を書き上げたとか、今、どんな映画を撮り始めたかといったことを報告してくる。流石に調子の良い報告ばかりが続くわ けではなく、書こうと思っても書けない、体調がすぐれないといった泣き言が届くこともある。しかし、落ち込んだ後は必ず、「来月までに必ず書き上げてみせ ます。よろしく!」といった宣言を送ってくる。多くの知人に向かって宣言してしまうことで「公力効果」を働かせようとしているのだ。彼にとってこのメルマ ガは、一人では途中でくじけてしまいそうな高い目標をやりとげるための自己管理ツールといえる。

そんな彼の努力がついに実ることになる。 彼がプロデュースした映画が、なんとカンヌ映画祭の短編部門で見事にパルムドール(グランプリ)に輝いた。「おはぎ (BEAN CAKE)」という映画をご存じだろうか?2001年、松田聖子の長女、SAYAKAが主演したことで日本でもワイドショーなどで大きく取り上げられた。

彼は、そこにたどり着くまでに明らかに試行錯誤していた。しかし、大きな夢をかなえるために、徹底的に「公力効果」を利用し、自己管理をしていた。この賞を受賞することで彼は間違いなく目標であるアカデミー賞に一歩近づいたと言える。

自 己管理能力を高めるために、「公力効果」を利用しよう。自分一人でやりたいと思った目標に対し、周囲の人をからめることを習慣化してほしい。例えば、私の 友人のようにメルマガを作って宣言するのもいい。勉強会に同じ目標を持った友人を巻き込んでしまうという手もある。「公力効果」が必ずあなたを助けてくれ るはずだ。

 

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 【羽根 拓也 プロフィール】

日 本で塾・予備校の講師を勤めた後、1991年渡米。ペンシルバ大学、ハーバード大学等で語学専任講師として活躍。独自の教授法はアメリカでも高い評価を受 け、94年、ハーバード大学より優秀指導賞(Certificate of Distinction in Teaching)受賞。「知識を与える教育」から、「自己成長力を向上させる教育」こそが、世界に求められていると考え、97年に東京に「アクティブ ラーニングスクール」を開校。これまで日本にはなかった「自己成長力」を育成する教育機関として各界より高い評価を得ている。独自の教育理論とその指導 方法に、有名企業、政府関係機関、教育機関などより指導依頼が絶えない。

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