出題・解説: 羽根 拓也(アクティブラーニングスクール代表)
最 近、コンテンツビジネスの世界では日本人の発想力に注目が集まっている。企業ではソニー、ニンテンドー、個人ではアニメの宮崎監督、映画の北野監督等、世 界に通用する発想力をもった企業や個人は少なくない。どうすれば自分もそんな発想力を持てるようになるのか?今日は発想力をあげるための具体的な方法を紹 介しよう。
毎日、通勤途中でもできるアイデア発想力を鍛えるトレーニング法がある。「マッチ&ビルド」と言う。 一見、何の関係もなさそうなものを二つ並べて、両者の共通項を探し、そこから新しいビジネスアイデアを探すというものだ。例えば、「お茶」と「コンピュー タ」。これら二つのものは一見、何の関係もなさそうだ。しかし頭の中でさまざまな属性を抽出していくと、必ず何がしかの共通項を見つけることができる。それを さらに展開させて、新しいビジネス(=商品)を発想するというものだ。
①:A(=お茶)の属性を片っ端から出す
②:B(=コンピュータ)の属性にマッチするものが出るまで①を繰り返す
③:②で共通項が出たら、そこから新しいビジネス(=商品)を構築する
① の「お茶」の属性から挙げてみよう。属性を出すとは、簡単に言うと、「お茶と言えば?」と言われて思いつく言葉をあげるということだ。例えば「緑色」「飲 み物」「体に良い」など。お茶に関係があるものなら何でも良い。すると途中で「健康飲料」という属性が出てきたとしよう。仮にあなたがコンピュータの長時 間使用で目の疲労や肩こりで悩んでいたとする。ここでピンとひらめく。コンピュータの「不『健康』」という属性が「健康飲料」と結びつかないかと考えてみ る。
「そうだ!コンピュータを使っている人に特化したお茶を売り出してみるのはどうだろう?」例えば、「目に良い」成分を配合したお茶 「PCリフレッシュティー」というのはどうだろう?パソコンワークが多いビジネスパーソンがちょっとコンビニに行った時に、そんな言葉を目にすれば「お? これは、、、」と惹きつけられる要素になるかもしれない。
二つの全く関係のないものから一つのアイデアが生まれた瞬間だ。アイデアのネタはそこら中に転がっているといっていい。何でもかまわない。目の前にある関係なさそうなものを二つ並べて、上記のように「マッチ&ビルド」を繰り返してみよう。
し かし、このトレーニングを研修等で紹介すると、必ず次のような人が出てくる。「そんなにうまい具合にアイデアがでてきません。やっぱり自分には才能がない のでしょうか?」上記の方法は、マッチングの前提として、属性を出し続けることがもっとも重要だ。その属性が見つからなければ、確かに新商品には繋げられ ない。どれだけ属性を出し続けられるかが最初の関門になる。
実験してみよう。一度、ここで読むのを止めて、頭の中で「お茶」の属性を次々にあげてみてほしい(ノートがあれば実際に書き出してみよう)。これ以上出せないというところまで出し続けるとして、何個ぐらいあげられるだろうか?
10 個ぐらいまでは簡単にあげられるはずだ。しかしその辺りから苦しくなってくる。「うーん、もう思いつかないな、そろそろ限界かな、、、。」そんなに早く諦 めてはいけない。起業家として成功したければ、 100ぐらいまではノンストップで出せるようにならなければならない。これであげた属性ともうひとつの対象物を掛け合わせれば、アイデアほぼ無限に出し続 けることができるといってもいい。鍵は「視点移動」にある。
物事の属性というのは、そのものをどこから見たかということで作られる。例え ば、「お茶」を「緑色」であるといったのは、「形状」という視点から見た結果だ。その視点から見ると「緑色」以外に「葉っぱ」「くき」「粉末」といったも のが出てくる。しかし、ある程度出るとネタが切れてくる。そこで諦めてはいけない。「視点」を変えればいいのだ。
お茶を別の視点から見てみよう。例えば「用途」。お茶を何のために使うかという視点だ。すると途端に、「食後の口直し」「ダイエット」「薬」と次々に属性が思いつくようになる。視点が変われば、視野が広がるということだ。
「用途」という視点で、出尽くしたとしてももう心配はいらない。即座に視点を変えればいい。「味覚」という視点でもいい。「歴史」という視点でもいい。つまり、アイデアに詰まるたびに別の視点に移動していけば、いくらでも属性を出し続けることができるということだ。
ア イデアが出ないという人は、基本的にこの「視点移動」をやっていない。ある素材を一つの視点だけで何かにつなげていこうとするのがそもそも間違っていたの だ。新規事業のアイデア、社員をやる気にさせるアイデア、売上げを伸ばすためのアイデア等、起業家として事業を進めていくためには、アイデア発想力は不可 欠だ。鍵は「視点移動」だ。アイデアに詰まった時、「視点移動」を心がけることを忘れないでほしい。そうすれば、いつかそこから課題を解決してくれるアイ デアが出てくるに違いない。
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【羽根 拓也 プロフィール】 日 本で塾・予備校の講師を勤めた後、1991年渡米。ペンシルバ大学、ハーバード大学等で語学専任講師として活躍。独自の教授法はアメリカでも高い評価を受 け、94年、ハーバード大学より優秀指導賞(Certificate of Distinction in Teaching)受賞。「知識を与える教育」から、「自己成長力を向上させる教育」こそが、世界に求められていると考え、97年に東京に「アクティブ ラーニングスクール」を開校。これまで日本にはなかった「自己成長力」を育成する教育機関として各界より高い評価を得ている。独自の教育理論えおその指導 方法に、有名企業、政府関係機関、教育機関などより指導依頼が絶えない。 |