「拒否意見」で自分を磨く

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

出題・解説: 羽根 拓也(アクティブラーニングスクール代表)

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起 業家志望の人から「人からあれこれ言われるのが嫌だから起業したい」と言う声を良く聞く。確かに自分の意見を否定されるのはだれでも嫌なものだ。しかし、 自分の考えだけで事業を進めていくことには危険と限界があることは事実。今回は、他者の意見を効果的に取り込んでいくための「否定意見」の活用法を紹介し たい。

 

他者の意見を聞かずに事業を拡大していけば、必ず自分の限界に行き詰まることになる。起業家として成功していくためには、他者の協力が欠かせない。もっと他者の意見に耳を傾け、自分の可能性を広げていかなければならない。

と いったお題目を並べただけでは、読者の皆さんが人の意見を聞けるようにはまずならない。なぜか?自分の意見を否定されれば「腹が立つ」からだ。誰もが自分 の意見を否定された時、まるで自分の存在そのものを否定されたような気持ちになる。そして口角泡を飛ばしながら、「いや、違う、君こそ間違ってい る、、、」と議論に油を注いでいく。

残念ながら我々日本人の多くは、自分の意見を述べる、あるいは述べられることに慣れていない。自分の意見をぶつけることが、相手に対して失礼だと考えてしまうのだ。

私 は研修でいろいろな会社を回っているが、ある有名な会社で指導を行った時のことだ。コミュニケーションの方法を指導するクラスで、同じグループのメンバー に対して反論せよという課題を投げかけた。あるグループの中に、上司と部下がいた。部下は否定らしい否定を何一つせず、上司に対して肯定的な意見ばかりを 投げかけていた。「いやー、すごいですね、何も反論するとこなんかないですよ。いや、この辺がとてもいいですね。」結局、課題が終るまで、否定ではなく、 肯定ばかりを繰り返していた。

受け手側の上司の態度も面白かった。さも当然といった感じで部下の肯定意見を嬉しそうに聞いていた。それど ころか、途中から逆に部下に意見を述べ始めていた。後でわかったことだが、この会社では自分の意見を上司にぶつけるということはありえないことなのだそう だ。残念ながら、この会社の社員は、自分を成長させるために「反論」がいかに大きな役割をはたしているのかを理解していない。

私がアメリ カの大学で指導していたとき、ウィーンから来た若いドイツ語の講師と仲良くなった。フロイトやユングといった精神的大家を生み出した都市から来ただけのこ とはあり、科学から哲学、文化論から宗教論までどんな話題でも面白おかしく話すことができる頭の良い人物であった。性格も良く、だれとでもおしゃべりを楽 しむことができた。

彼は議論が面白くなってくると、必ず相手と「反対」の立場にたって話を進めようとする。私が「環境を汚すべきではない」と言えば「わかった、じゃあ話を面白くするために、僕は環境を汚染しても問題はないという立場に回ろう」と言っておしゃべりを進めていくのだ。

い つも反対の立場に回ろうとするので最初はやりにくかった。しかし、反論を繰り返されるうちに、彼が、「相手」を否定しているのではなく、議論を深めるため に「意見」を否定しているのだということがよくわかってきた。実際、肯定と否定の立場をたてて話をすれば、議論が深まりやすかった。彼が反論に回ってくれ た方が、議論が活性化しやすくなるのだ。聞き手が話し手と同じ意見を持っていれば、同意しあって話しは終わりである。しかし反論の立場にたってもらえる と、お互いに正当性をしっかり主張しあう必要が出てくる。このプロセスの中で、問題の本質が見えてきたり、新しい解決法が見つかることがあるのだ。ディ ベートの手法をそのまま自分の会話に応用している彼とのおしゃべりは、いつも面白く、生産的であった。

ここで大切なことは、両者がお互い の否定意見を「議論活性化」のための素材としてとらえているということである。否定意見は、自分や相手を否定するためだけにあるのではないのだ。この意識 が常に持てるようになれば、会話中に自分の意見が否定されても、逆にこれを自己成長の素材として利用できるようになる。ひいては、自分の持つ、あるいは他 者の自分に対する固定観念でさえも打ち壊せる可能性が出てくる。

ここで、今日から早速できる「否定意見・活用法」を紹介したい。

あるアイデアを思いついたとする。そのアイデアをより質の高いレベルへと引き上げたいと考えたとしよう。そこであえて、他者の否定的意見を聞きにいってほしい。

「申 し訳ないんだけど、この意見に対して、あえて『反論』を聞かせてもらえないかな?」相手も最初は戸惑うかもしれない。しかし、こちらから依頼しているの で、スムーズに否定意見を出してくれる場合が多い。加えて、こちらも自分からお願いしているので、反論されても腹が立ちにくい。単純に議論活性化のための 一意見としてとらえやすくなるのだ。

自分の意見を成長させるために、あえて「反対意見」をもらってみてみよう!自分一人では決して得られない「気づき」が得られるはずだ。

 

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 【羽根 拓也 プロフィール】

日 本で塾・予備校の講師を勤めた後、1991年渡米。ペンシルバ大学、ハーバード大学等で語学専任講師として活躍。独自の教授法はアメリカでも高い評価を受 け、94年、ハーバード大学より優秀指導賞(Certificate of Distinction in Teaching)受賞。「知識を与える教育」から、「自己成長力を向上させる教育」こそが、世界に求められていると考え、97年に東京に「アクティブ ラーニングスクール」を開校。これまで日本にはなかった「自己成長力」を育成する教育機関として各界より高い評価を得ている。独自の教育理論えおその指導 方法に、有名企業、政府関係機関、教育機関などより指導依頼が絶えない。

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