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与えてもらうことに慣れている私たち
私たちはお膳立てしてもらって、そ れから力を出すのには慣れているし、それが得意です。僕が小学校1年生になった時、小学校はあって、校舎も、教室も、机も、先生も、教科書もありました。 全部揃っていて、「さあ、吉田君、しっかり勉強しなさい」ってことになります。大学を卒業して、就職しました。新入社員研修が終わって配属された先は営業 部です。そこにも机があり、電話があり、事務用品が揃っていました。売るべき商品も、そのマニュアルも揃っています。担当のエリアがあり、そこには得意先 があります。そして、「さあ、吉田君、営業なんだから、しっかり売ってくださいネ」って言われます。環境や条件が整っていることが前提で私たちはがんばりま す。そうでないと私たちは「ろくな商品じゃない」とか「あんな得意先に売れるか」って文句を言うのです。
でも、起業とはゼロからスタート ですから、誰も何も用意はしてくれません。全部、自分で用意します。誰かに文句を言おうにも誰もいないのです。(笑)オフィスがいるなら、オフィスを、机 がいるなら、机を、商品を、仕入先を、得意先、仲間・・・。起業家は鉛筆1本から自分で用意するのです。
あなたの手にある450円という価値
僕がどこかで小さなラーメン屋さんをやろう と思ったとしましょう。まず、近くの不動産屋さんに行って、手ごろな物件を紹介してもらいます。何軒か回って、ちょうどいいお店が見つかり、契約します。 知合いの工務店にお願いして内装設計をしてもらい工事が始まります。早くて2週間、遅くても3週間あれば小さな店なら出来上がります。僕は工事と平行し て、共同の折込チラシで求人募集して、アルバイトとパートを採用し、みんなでレシピを作り、作って、試食して、メニュ構成を考え、値段を決めて、いろんな 準備が整います。オープンの日に最初のお客様が入ってこられて、醤油ラーメンを食べてもらいました。「ごちそうさま」なんてうれしいこと言ってもらってレ ジで450円いただきました。この450円が何もないところから生まれた価値です。たかが450円ですが、僕がここでラーメン屋さんをやろうと思わない限 り、決して生まれなかった450円です。
小石を池に投げたように波紋は広 がる
そして、起業とはこの450円以外に多くの価値を生むのです。皆さん!知っていましたか?それを価値連鎖と言いま す。僕が意識しないでものラーメン屋さんから価値連鎖が派生します。
どういうことか説明しましょう。僕がこの物件を借りてここでラーメン 屋さんをすると決めたから、不動産屋さんには仲介手数料という価値が生まれました。大家さんには家賃という価値が生まれ、内装をお願いした工務店には内装 費が、そして、この内装費の中から、手伝いの男の子に日当が払われ、照明器具、エアコン、いろんなものがメーカーに発注され、いろんなところに仕事とお金 が廻ります。この価値連鎖は止まるところを知りません。僕はアルバイトやパートのみんなにもお給料を払います。アルバイトの学生はそのバイト代でお昼ご飯 を食べて、家賃を払って、本も買います。池に小石を投げたように価値の波紋はどんどん広がっていきます。
オープンの日には開店祝いに花が 最低でも3つは来ます。3つが日本の常識です。(笑)一つは仲介した不動産屋さん、もう一つはビルのオーナー、そして、最後は内装をした工務店です。どれ も僕がお金を払った相手ですが(笑)、しかし、僕がここでラーメン屋をヤルと決めて、実際にやらない限り、その三つのお花の注文はお花屋さんには行ってい ません。起業とは、知らず知らずのうちに世の中のお役に立つ、人さまに喜んでもらえる、とっても楽しい、そして、社会に貢献できる仕事なのです。
次回は「人生思いのまま」です。