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「新しいケータイのパラダイム」って、つまり?
先日、「モバ イルマーケティングカンファレンス2006」というイベントに参加してきました。やってくる「ケータイ環境の変化」を経てケータイはますます利用しやすい ものとなり、ビジネスも大きく伸展してゆくだろうという期待・見通しが声高に語られていました。
「来る、来ると言われ続けましたが、今度こ そ、いよいよモバイルの時代です!」
なんともオプチミスティックなメッセージが心地よく、また、心はやるようなワクワク感を覚えました。こ んな空気を味わえるのは新しく伸びようとしている業界ならではです。PCインターネットがブロードバンド化によってメディアとしての価値を大きく変えたよ うに、来年(2007年)後半あたりのケータイは今年(2006年)前半のケータイにはない全く新しい価値・存在感を備えていることでしょう。
しかし、あえてアマノジャクなことを言っておくならば、現在の段階で、誰も具体的な像を指し示したり描けているわけではない。たとえばgoogleの登場 前後でPCインターネットのあり方や作り方までもが変わってしまったように、あるいはコミュニティサイトがソーシャルネットワーキングサービスの出現前後 でそのあり方や楽しみ方を一変させたように、ケータイにもきっと「これだ!」という新しい何かが登場するに違いないと想像するのですが(そして、ぜひ自分 たち主導でそういうものを作りたいと切望してやみませんが)、
「ようやくPCインターネットと同様のレベルになった」
「端末の進化 によって、ケータイの使い方に新しい選択肢が増えた」
というレベルから抜け出てない、と感じるのです。ケータイのマーケティングには、ケー タイ独特のスイートスポットがあるはず。しかしまだそれが何かが見えない、と。前回「新しいケータイに気をつけろ」えらく大袈裟な書き方をしてましたが、 要は「環境が変わればルールも一新される。既存の成功法則にとらわれずに市場と対峙しないと足元をすくわれるかもしれない!」ということでした。
ケータイはPCインターネットとはまるで異なる特徴を持っています。これまでケータイのビジネスとは縁がなかった方々、そもそもWEBにご縁がなかった方 々のひらめきや創意工夫で、とても大きな事業を生む可能性が大きい。ワクワクの一方でドキドキ・ヒヤヒヤしているというのが本音なのです。逆に、これから ケータイの事業に参入しようという皆さんは、既存の企業をヒヤヒヤさせようという意気込みで独創的な事業展開を目指すべきだと思います。
「も うこの事業分野には、こういう会社が陣取ってるから…」
「もうこういうサービスは誰かがやってるだろうし…」
競争相手のいないブ ルーオーシャンを選ぶのはもちろん大事ですが、なにせ、ようやく市場が温まりはじめたところ。ちょっとした要因で既存のプレイヤーをひっくり返せる可能性 も、まだまだあります。
まったく新しい「ネット利用者」
さて、その「温まりはじめた市場」の中のケータイ利用者像は、注目すべき要素のひとつだと思います。PCインターネットの利用者数を凌駕するほどになった という、彼らケータイ利用者とは一体どんな人たちなのか? 想像したこと、ありますか?私が仕事で実際に利用者インタビューなどでお会いしたり、調査の結 果などから「ケータイってのは、なるほど面白いなー」と思うのは、ケータイの世界にはPCインターネットの世界ではあまりお見かけない人たちがたくさんいると いうことです。
「PCって、立ち上げるのが、めんどうで使わないですね」
「PCって、そもそも、使い方よくわからないんです」
と いう人たちが、ケータイの世界にはたくさんいるんです。キーワード検索したり、情報を収集して比較してアクションするという、PCインターネットでは当たり前 の行動プロセスにこだわりません。そもそもふだんPCを使わないので、WEBを利用するときの「デフォルト」の行動パターンが違うんです。
「ケー タイコマース利用者が増えたと言うが、実は通販雑誌の決済をケータイで実行している人が増えているだけ」
「アクセスのパイは伸びているはずなの に、ケータイの課金型コンテンツのビジネスは頭打ち」
…これら、一見皮肉にも思える現象は、実は彼ら「PCインターネットの世界ではお見か けしない人たち」が原因なのではないかと見ています。こうした人たちに、「ケータイでも検索が便利になったんだよ」「ケータイからもブログにトラックバッ ク飛ばせるようになったんだよ」と言っても響かないでしょう。逆にあなたが手持ちのそのネタが彼らを大いにひきつけるかもしれません!
ケータイの性能がPCに近づくことで新しいビジネスの可能性は広がりますが、そもそもケータイが持っているポテンシャルはPCの持つそれよりもっともっと 大きなものだと思うのです。
まったく新しい「業界参加者」
もうひとつ。最近、「注意すべき新しい人たち」として注目しているのが海外のケータイ業界のみなさんです。ケータイ産業は「世界でもっとも日本が進んでる」と 言われています。実際、たしかにそうなのかもしれません。でも、5年後もその状況は続いているのか? 誰にも分からないはずです。たとえば米国に本部を置 く「mobile marketing association」のWEBサイトを見ると、その情報の集積ぶり(とくにモデル化されたケーススタディの充実ぶり)、オンラインセミナー受講システ ムなどの使い勝手、グローバルなネットワークなど、その「本気度」に驚きを禁じえません。
海外の「モバイル」研究は、わたしたち 日本人ビジネスマンが想像している以上に高まっているように思えるのです。また、日本に発信基地を持つモバイル業界の英語サイトがいくつもあるのをご存じ でしょうか? 中には「東京 モバイル業界見学ツアー」を催行しているサイトもありました! 数年後、日本のケータイ業界に彼ら海外のケータイ業界がどっ~と参入してきても、なんの不思議もありません。
ますます、ワクワク、ドキド キ、ヒヤヒヤです!