- 目次 -
ケータイサイトの制作費はPCサイトの3倍?
昨年の夏のこと。クライアントが「システムパートナー会社から出てきました」と見せてくれた見積書を見てびっくりした。ケータイサイトのユーザーインタ フェイスとデザインのリニューアル案件。コーディング修正額だけで約○千万円。予想の数倍以上の金額だ。
「3キャリア分のページ改修が必 要になるので、コーディング費は3倍になります」
問い合せると、開発会社はそう回答してきた。ケータイサイト制作では時々耳にする話な のだが、実際に体験するとそんなバカなことがあるかな…と、呆れてしまった。
3キャリアの端末に対応するという要件にしたのは発注者側 だ。システム会社はその要望どおり、自社基準に沿って見積もりしただけのこと。ぼったくりやインチキをしているわけではないのは確かだろう。
しかし、
「え? ケータイって、3倍もかかるんですか? こんな、画面小さいのに?」
「インターフェイスとデザインのコーディ ング修正だけで○千万円って、ありえないでしょう?」
と、驚くのが普通ではないだろうか。
(もっとも、クライアントは事情をよく 知っていたので、 特別驚いてはいなかった)
説明を求められたら、きっと開発会社はこんなふうに回答するのだろう。
「みなさん最初は驚かれますが、ここがケータイサイトづくりの難しいところなんです。
しかしキャリアさんが異なる記述言語規格を採用しているせ いであって、弊社が悪いわけじゃありません」
はあ、そうですか。キャリアさんのせいなら仕方ないかもなあ…。
と、呆然としている ところに、運用費見積書がぺらり。
「それに、ケータイ電話は新機種が次々発売されます。
ケータイサイトはですね、サイトが完成 したあとも対応機種追加のメンテナンスが必要なんです」
むふむふと鼻をふくらませて笑う営業さんの顔を見ながら、サイト開発を断念した企業 は少なくないだろう。
ケータイソリューションASP、つぎつぎ登場
も し以前、上で書いたようなことを体験した企業担当者の方は、しかし、安心してほしい。
ケータイを活用しようという起業家の皆さんにも、声を大にし て言いたい。
ケータイサイト構築をめぐる状況は、完全に変わった。
ケータイサイトASP(アプリケーショ ンサービスプロバイダー=必要機能をあらかじめ組み込まれた、WEB経由で利用可能なシステム)サービスの充実ぶりがすばらしいのだ。
「マーケ ティングにケータイを利用しよう」というなら、最初にASP利用を検討する時代が来た。
まずコスト。完全オーダーメイドのシステム構築 と比較すると、桁がひとつふたつ違ってくる。きわめてローコストでケータイサイト活用をスタートできる。
気になるメンテナンス。わたしの知る限り では、ケータイ端末の進化に合わせたアップグレードもあらかじめ料金に含まれている。
次に、使い勝手。自由に機能設計できるわけ ではないから「どうしてもオリジナルの機能が必要」という場合、満たされないかもしれない。
しかし、ASPと自社開発システムをツギハギ に利用したり(ケータイのWEBはURLが画面に表示されないので、サービスをツギハギしても利用者には気づかれにくい)、逆にASPの制限の範囲ででき ることを元にサービスをスタートさせるなどの工夫で事業のコストを大幅に圧縮できる。
そして機能性。とくに昨年末あたりからさまざまな機 能の新サービスリリースが目立つ。ケータイサイト構築はもちろん、メール送信、顧客管理、EC、CGM・SNS、GPS・位置情報、動画配信など、「へ え、こんなのまで?」と思えるほどだ。
[ASP利用のメリット]
●利用料金が(システム開発と比較して)安い
●料金や使い勝手、機能などで比較検討可能
●サイト構築までのリードタイムを短縮できる
●コンテンツ制作や更新がラクにできるような工夫が施されている
●ケータイ端末の進化に合わせて自動的に機能がアップグレードされる
[ASP利用のデメリット]
●自由なサービス設計ができない(利用できる機能や設定に制限がある)
●提供社・他利用者原因のトラブルに影響される可能性(トラフィック急増など)
■ なんと、キャリアまで参入してきた
なんと4月からは携帯キャリアNTTドコモがモバイルマーケティングのトータルASPサービス提供を 開始するという発表があった。
NTTドコモ「モバイルアベニュー」
*********************************************
<「基 本メニュー」の内容>
* 会員の登録、修正、削除、および会員登録情報の検索、確認
* オリジナル携帯サイトの作成、トピックス情報の掲載
* 属性に合わせたメールマガジンなどの会員向けメール配信
* アンケートの実施、集計
* クーポンなどの販促情報の配信
* 懸賞の募集、抽選や当選者へのメール送信
<「オ プションメニュー(順次提供予定)」の内容>
* イベントなどのチケット発行など
* 顧客へのポイント付与、管理
* おサイフケータイやQRコードなどの会員証の発行、受付など
*********************************************
おサイフケータイとの連動など、ドコモならではのソリューションも予定されているようだ。一方で、他キャリアに対応するサイトづくりはどこま で対応するのか? 巨大企業だけに価格はどうなの? など、現時点では疑問も多い(詳細発表が待たれる)。
しかしASPを利用しようと考えている 企業や起業家にとっては新しい選択肢の登場になる。なんといってもドコモがプロデュースする勝手サイトだ。「公式・勝手サイト」という新しい概念が出てく る可能性もあるではないだろうか? とりあえずは心強い。
一方で、ケータイASPサービスを提供する企業やその分野で起業しようという アントレプレナーにとっては大きな衝撃だ。
巨大キャリア企業が自ら周辺サービス事業提供に乗り出すことには批判も出るだろう(表立って批判できな い立場の企業が多いのも事実なのだが)。
ただ、俯瞰して見れば「モバイルマーケティングソリューション」という市場分野の拡大にプラス であることは間違いない。すでに海外の同市場もかなり温まってきており、競争相手は国内ばかりではなくなってきている。むしろ競争の本格化を切磋琢磨の機 会として歓迎するくらいの骨太さが必要ではないかと思う。
サービスを利用する側も、提供する側も「ケータイASP」の展開にしばらく目 が離せそうにない。