Vol.3 【実録】「大阪南船場カレー戦争」 注目の軍配は?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
フランチャイズは確かに強い、でもなんとか勝てる方法はないもんかなあ?大手FCのカレーショップに果敢に挑んだ起業家のお話です。すべてノンフィクションですけど、もう終わったお話ですので、両者に許可はとれませんから、仮名にてお届けします。

大阪は南船場の昼食事情

 大阪は南船場、最近ではカフェ、美容室、ブティック等の小売店も数多く進出し、お洒落な町というイメージも定着したようだが、本来は生粋の船場商人が、文字とおり生き馬の目を抜く戦いを日夜繰り広げている、大阪屈指のオフィス街でもある。

  11時半頃から14時頃のお昼時になると、大勢の人々で町は覆い尽くされ、少しでも安く、早く、あるいはおいしくランチをとるための競争が始まる。当然の ことながら、この街でランチをとる人々も競争だが、提供する側も競争である。統計によると大阪では東京よりも、特に女性の場合、コンビニでランチを購入 し、オフィスで食べるというパターンが圧倒的に多いようだ。

 「ほんまかいな?」僕のオフィスの近くでは、1500円のランチを提供するお 洒落なイタリアンレストランに、数人のOLが連れ立って入っていくのを、うらやましげな目で追うおじさんをよく目撃する。当然、手には道端で売っている 400円の弁当である。ランチの中心価格帯は、お店で食べれば600円~800円、道端で売っているお弁当では最安値で350円、コンビニだとその中間く らいの価格のようだ。この辺りが平均的な大阪市中央区の昼食事情と言えるだろう。
 

出店した両者の武器と戦力を比較する

 とある冬晴れの寒い日に、新しいカレーショップができた。

  驚いたことに大手FCで有名な『KaKa辛れー屋』のわずか2件隣である。よく勝負をかけたものだと思うが、よく見てみると、なるほど大手のチェーン店と は少し違った趣である。『釜炊加哩』という看板が上がっており、何やら美味しそうな香りが鼻腔をくすぐる。まだ開店して間もないのか店頭は行列であふれて いた。

 和風の筆書き看板が人目を引き、カレーの焦げたような香ばしい香りがお客様を誘っているようだ。店内は独特の民芸風の内装で薄暗 く、夜には雰囲気があり簡単な商談やデートにも使えそうである。一方『KaKa辛れー屋』は、ガラス戸で仕切られ明るく清潔な印象で、休日には家族連れも ランチを楽しめるお店になっている。

 メニューは当然大手である『KaKa辛れー屋』のほうがバリエーション豊富である。カレーだけでも 60種類以上、トッピングを考えるとそのバリエーションは無限に広がり、おまけに常に数種類の季節限定メニューを取り揃えている。サイドメニューを加える と圧倒的な戦力である。

 それに対し『釜炊加哩』のほうは、わずかに8種類程のメニュー、文字とおり『釜飯カレー』にもちやチーズのトッピ ングがある程度、このままでは圧倒的に不利かと思われるが、そこは考えたもので大手にはできないサービスを展開している。その一端として、従業員がとても よく教育されている印象で、会話や接客がとても行き届いている。また、オリジナルの器というか小さな鉄鍋にグツグツと沸き立つスタイルのカレーを食べさせ るのである。さらにはテイクアウト用には、木でできた一人用の岡持(おかもち)で持って帰らせる。

 独自の個性を武器に勝負に出たと思われるが、さて、その勝敗はいかに・・・。
 

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まずは店内でカレーを食べてみた

  両方のお店のカレーを店内で試してみた。まず『KaKa辛れー屋』に入ってみる。僕はテイクアウトはよく利用するのだが、店内で食べるのは久しぶりであ る。メニューは豊富で選ぶ楽しみがある。接客に関しては、ほぼマニュアルとおりの感は拭えないがまあ合格だろう。少々店内は混んでいたが約8分程で出来上 がった。お水とサラダのドレッシングや福神漬はフリーで気を使わない。味については大阪ではかなり評判はいいが、僕にとっては普通にうまいというニュアン スである。

 一方の『釜炊加哩』。こちらはとても愛想がいい。とりあえず名物『釜飯カレー』を注文する。そう混んでいる様子もない店内で、 待つこと5分、8分、10分・・・ん?「ほんまにおそいなぁー、まだかなぁー」と待っていると15分、「大変お待たせしましたあ!」という威勢のいい声と ともにカレー登場。おお、グツグツ煮えている。また、お焦げの香り立つ香りがなんとも香ばしい。「アチッ!」と火傷しそうな熱さのカレーを食する。うーん なかなかの醍醐味。

 カレーの価格はほぼ同じ価格帯。ということで両者引き分けか?
 

勝負、僕の判定

  店内で食べただけでは決着がつかないので、次にテイクアウトしてみることにした。いつも持ち帰りをしている『KaKa辛れー屋』では、当然のようにテイク アウト客に対しても店内でお水のサービス。待つこと10分でお持ち帰り。何も問題はなかった。次の日に『釜炊加哩』に行く。どうしても仕事柄厳しい目でお 店を見てしまうのだが、ここではっきりと決着がついた。

  夜風が身にしみる季節だというのに、外で待たされる苦痛を味わうこと約20分、 いくら店内が混んでいるとはいえこれはないだろう。ほとんど怒ったためしのない平和主義者の僕がクレームを言ってしまった。気弱に小さな声で「おっそい なぁ、もう」とたったこれだけで僕の中での決着はついたのである。
 

分析、そして厳しい現実

  いくら美味しくても、外で待たされるのは辛かった。むこうだと暖かいところでお水のサービス。一方こちらは寒空の下、立って待たなくてはいけない。自然に 比較しているお客様の心理である。また、特に大阪人は待たされるのが嫌いということもある。バランス論で考えると『KaKa辛れー屋』に軍配が上がったの である。

 お客様というものは本当に厳しい目で見ているものである。暖かくなってから久しぶりに食べてみようと『釜炊加哩』でテイクアウト してみた。相変わらず待たせるが少しは早くなったようだ。僕は忙しかったので、悪いなと思いながら、3日程してからテイクアウト用の岡持を返しにいった。 すると・・・。

 お店はすでに解体工事に入っていた。今も僕の家にはきれいに洗った岡持が残っている。

 今回はちょっとシリアスでしたが、いかがでしたでしょうか。またご意見をお聞かせください。

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