- 目次 -
商品力を高める
飲食ビジネスにおける商品力とは、お客様に満足していただく商品(メニュー)の価値・内容・価格において納得のいくものを提供し、来店および再来 店を促すものでなければならない。そのためには、素材とボリューム、価格のバランス、調理方法の提供レベルなど、商品の製造から提供に至るまでのすべての 過程において、最善の注意を払い安全性や健康基準に至るまで十分配慮すべきであろう。
店舗における商品とは、店舗の空間デザインやマテリアル、居心地感、接客サービスにおける人材の質やレベル、そして料理や飲みのもなどの商品自体 すべてが商品であり、店舗のQSCAすべてを高めていくことがお客様の満足となるために、店舗の評価となる商品力を高める努力をしていくことになる。
商品の付加価値を追求する
飲食ビジネスにおける商品そのものには、直接的な素材や仕入 れ方法、調理技術や盛付けなどの他に、その商品の価値を高める付加価値が求められます。消費者の殆どは、商品の価値や仕入れの価格などを知り、同じものを 手に入れることができるようになっています。
店舗においてお客様が求めるものは、商品として目の前に提供されるまでの過程であり、食材の調理と提供が同時に行われる際の付加価値の提供が商品 の価値を決定します。これらの商品には、希少性や季節性などの「今だからこそ」の商品を提供し、お店として思いをこめて創り上げた商品であると言う「物語 性」を付加し、提供方法(盛付けや器)やネーミングなど、商品の付加価値を高めるための工夫をすること。
メニューブックや店頭表示などにおいて、お客様にいかに商品の価値を伝えることも重要な課題です。折角、店側が商品力を高めるためのプロモーション を行っても、その価値がお客様に伝わなければ何の意味のないものになってしまいます。
ゴミの山が利益に変わる
埼玉県のある町の回転すし屋の店長が、ゴミとして捨てていたロ スを利用することから売り上げを倍増させ、お客様に喜ばれた上に、さらに利益を出したという付加価値商品づくりとしてのいい例があります。
毎日、60リットルのポリバケツに3つのゴミが出ることで、ゴミの処分にお金が掛かり、
ロスをいかに少なくするかを考えていた店長は、大根やニンジンの皮などの野菜クズ、魚の骨やあら等を捨てずにかき揚や骨せんべい、あら煮などの「料 理」に仕上げ、回転台に流しました。それらのお皿には、「0円」という表示をあえて付けたのです。当然お客様は大喜びです。おまけに「無料のおつまみ」と なり、ビールやお酒の追加が出るようになりました。当然客単価は上がり、売り上げもしだいに伸びていったのです。この施策により月間売上は前年度の1.3倍 となり、利益率も上がることになりました。
今まで捨てていたものに、付加価値を付け、それがお客様に喜ばれ売り上げにつながったことは偶然ではありましたが、商品に付加価値を付けること は、安価で大量に仕入れた食材を低価格でお客様に提供する方法と同様に付加価値に原価は比例しないということが理解できました。
物流システムの革新も助けとなる
今や日本全国の各地はおろか、世界各国から毎日新鮮な 食材が入ってくるようになりました。これは物流システムの革新であり、収穫時の瞬間冷却システムやチルド流通などによるイノベーションが「食材の新たな世 界」を変えたのは言うまでもありません。
また、野菜や果物は低温状態では呼吸が抑制されるため、低酸素、高二酸化炭素状態を保つCA包装やMA包装といわれる包装材の革新や物流システム などにより、産地直送の生鮮物が日本各地から直接仕入れることが可能になりました。
このようなことから、個人店では仕入れることのできなかった食材も自由に使えるようになり、独自性や競争力のある商品づくりがされています。今後 は、ますます差別化となりうる商品力を高めることになるでしょう。
安全性および健康基準も売りとなる
わが国でBSE感染牛が発見されて8年が経ち、その後 鶏インフルエンザや農薬汚染など食材に関する問題が後を絶ちません。これらの問題に対処する食品安全基本法が2003年に施行され、食に対する安全が論議 されるようになりました。
食品安全対策の一環として、農畜産物の生産履歴を消費者に情報開示する「トレーサビリティ」のシステムが飲食店舗においても導入されるようにな り、安心して牛肉が食べれるようになりました。その後、米、青果物、食肉、養殖水産物などのシステム導入も検討されるようになりましたので、これらの健康 基準も商品力を高める要因となるでしょう。
最終的には「味」が決めてとなる
自店の商品力を高め、集客力を高めるためには商品の付 加価値を高めることが重要であるとお話しましたが、飲食店舗の商品力は最終的には「味」ではないでしょうか?基本的に料理や飲物は「嗜好品」であり、個人 の「味」の好みにより好き嫌い、おいしい、まずいなどの評価はさまざまです。お客様の指示をいただくためには、自店の「お店の味」を出すことではないで しょうか。地域による味の違いもあるでしょう。各地の味を楽しむのもお客様の楽しみです。最近では、「郷土料理」としての専門店も人気があるようです。や はり、「味」が「商品力」を高めることになるのでしょうか。