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「条件付き」ほど、恐ろしいものはない
「買ってやってもいい けどね」と顧客に言われたら・・・。さあ、それは「何の始まり」だったでしょう? 覚えていますか? 『アイディア開発の価値』で私が書いた文章を。正解 は「ピンチの始まり」です。「チャンスの始まり」とか「儲けの始まり」なんて思った人はいませんか?「でも、買うと言ってるんだから、悪い話じゃないと思 うけどなあ」。そんな声も聞こえてきそうですが、そうではありません。断言します。これは、悪い話です。
国語の講座ではありませんが、も う一度、冒頭のセリフを確かめてください。「けど」という言い回しが含まれていますよね。「けど」は「けれども」の省略。逆説の接続詞です。つまり、「買 う」とは言ったが、ただ単に買うとは言っていないわけです。必ず後に何らかの条件が出てくる、ないしは何らかの条件を出したいと考えている可能性が高いの です。
条件・・・。いろいろと想像できます。B to Bの場合なら、「買ってもいいけど」、その代わり、「こちらの言い値で卸してほしい」「他社には売らないでほしい」「当社の製品やサービスをそちらに導入 してほしい」「何かおまけをつけてほしい」「それなりの接待をしてほしい」「他より短い納期でやってほしい」「当社の協力会の一員になってほしい」「指定 の下請け業者をとおしてほしい」。まだまだあるでしょう。例示したものより、もっとえげつない要求をする人もいるかもしれません。
これら の要求をいちいち飲まされていたら大変なことになります。「ビジネスは厳しいもの。そのくらいの要求は仕方ない」なんて、妙に達観した考えは禁物です。あ なたが大企業の一員であれば、ある程度の要求も吸収できるでしょうが、小さなビジネスにとっては、どれかひとつを受け入れただけでも、利益率や稼働率を激 しく低下させかねません。それは、確実に経営危機をもたらす芽になります。
要求 されそうなことは、予測できるのだから
だから、こう考えればいいのです。相手が口にする、「買ってもいいけど、そのかわり○○してほし い」の、○○の部分に当てはまる付加価値を、初めからビジネスモデルに組み込んでおく。「他社よりもリーズナブルな価格」や「他社にはないサービス」を付 加したうえで採算が取れる仕組みを構築しておけばいいのです。
さあ、アイデア発想の道筋が見えてきたのではありませんか? 無から何かを 生み出す必要はありません。既存のビジネス、先行するビジネスをチェックして、「この点をどうにかしてほしいと顧客は言ってくるだろう」「ここをこうした ら顧客は大喜びするだろう」。そういうふうに改良案を考えていけばいいのです。その改良案を深めたり、いくつかの改良案を複合させたりすることで、結果的 に新たなビジネスの誕生となるのです。
ビジネスアイデアとは、顧客ニーズを先回りして満たしておくことにほかなりません。それができてい れば、競合の攻勢や顧客の厳しい要求に脅えることもないでしょう。