なぜ「100 円ショップ」は人気があるのか?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
価格は、原価や利 益目標だけで決定するものではない。ターゲットが「買える価格であるか」「買いたくなる価格であるか」、これがすべてに優先すべきこと。

魅力的な価格に決める

 むろん、ビジネスである以上、利益を出 せないわけにはいきません。とはいえ、売れなければ元も子もないのです。仮にあなたが提供する商品の価格を200円とします。コストは120円。というこ とで利益は80円です。一方、競合の同様商品は価格が150円、コストは70円。ということで利益は80円になります。計算上の儲けはどちらも同額です。 しかし、実際の売れ行きを想像してみてください。同じ(ような)ものなら、やはりリーズナブルな価格の商品が売れるでしょう。あなたの利益計画は、結果的 に絵に描いた餅でしかないのです。

 価格を決めようとすると、どうしても自らの財布の都合を織り込んでしまいがちです。が、そこが我慢のし どころ。お金を払う側の事情や気持ちをよく考えて、魅力的な価格に決めなければ、あなたのビジネス展開は苦しいものになります。

  ここまでの話は、実は『価格決定の絶対的順序』と概ね同じことを書いています。大事なことだからです。そして、ここまでを了解してもらわないと、この後の 話が活きてこないからです。

 

すっかり定着した「 100円ショップ」

  「100 円ショップ」についても書いておましょう。先に利益ありきやコストありきで販売価格を決めるものと考えてしまうと、100円ショップのように、すべての商 品を均一価格で提供するというビジネスが理解できなくなってしまいます。言うまでもなく、100円ショップは、先に100円という売り値ありきで、その前 提に立って仕入れ値や利益を設定しているのです。

 さて、この100円ショップ。90年代後半には、まだ珍しさも漂っていましたが、今や あって当たり前の業態になっています。つい最近、私は長野県のある山間の町を訪れたのですが、コンビニはないのに「100均」がドーンと構えているのを見 てビックリしました。まさに全国津々浦々へと広がっているんですね。ダイソーやキャンドゥなどの老舗も業績を伸ばしていますし、SHOP99も大きく成長 しています。さらにコンビニ各社もこの業態へ参入を果たしました。つけ加えると、アメリカでも「ダラーストア」が同様の成長を遂げています。まさに人気の 業態です。

 

なぜ「100 円ショップ」は人気があるのか?

   では、あらためて、その人気の理由を考えてみましょう。実は私も、それなりの「100 均ユーザー」です。と言っても購入するものはだいたい決まっています。主にクリアファイルを買います。無色透明のタイプだと10枚で100円。安いです。 ファイルは書類と一緒に人に渡したり、保存資料が増えるごとに使ったりするので、常に補充することになります。なので、私はほぼ定期的に100円ショップ に出かけています。

 しかし、いまだかつて、クリアファイルだけを買って店を出たことはありません。必ずほかにも何かを買っているんです。 正直に言えば、ファイル以外に欲しいものは特にないのですが、意地になって必要なものを探し出しては購入しています。「せっかくものを安く買えるチャンス なんだから、できるだけ……」という心理です。まんまと「100均」のワナにはまっています。(笑)

 やはり「低価格」は魅力です。でも、 100円ショップの魅力は商品価格の安さにだけあるのではありません。何を買っても100円である。この事実です。つまり「低価格+均一価格」であること が、100円ショップの強みにほかなりません。

 

「均一」は「安さ」に負けない魅 力

  この文章の最初のほうで、同じ(ような)な商品が一方は200円、もう一方は150円という話を書きましたよね。実際にそういうも のは山ほどあります。これが本当にどう見ても同じなら、買い手は無条件に150円のほうを選ぶのですが、微妙に条件が違ったりすると一気に悩ましくなるの です。

 豆腐を買うとしましょう。ひとつは120グラム入って200円。もうひとつは80グラム入って150円。これ、どっちが得かパッと わかりますか?

 単に豆腐の重さの違いだけならまだしも、有機大豆を使っているか使っていないかとか、薄いか厚いとか、古いか新しいかと か、苦汁(にがり)はどこのものだとか、水はどこのものだとか……。まあ、真剣に比較検討して、200円の豆腐と150円の豆腐ではどっちが得なのかを判 断しようと思うと、大層面倒になります。少し固い言葉で言うと、買い手は商品の価格要因を分析し、比較して、意思決定をしなければならないわけです。その 点、100円ショップは、価格の妥当性や優劣の判断という買い手にとっての悩ましい作業を消し去ることで、購買意思決定をスムーズにさせているのです。

  私が一度100円ショップに足を踏み入れると、結局、いくつものアイテムを買ってしまうのは、安いという理由に加えて、アレコレ悩まないで済むので、たく さんのものを買おうとしても短時間で完了できる、という理由があるのです。まさに「低価格+均一価格」戦略のすごさです。

 

買い手が価格に求めるものは安い高いだけではない

  そろそろ結論にいきましょう。言うまでも ないことですが、私は皆さんに、「何でもかんでも均一価格で提供しよう」などと訴えているのではありません。商品やサービスの価格というものが、いかに買 い手の意思や行動を左右するかを認識してほしいのです。

 「誰に、何を、どう売るか」その「どう売るか」の中の重要要素が、「どのような価 格で売るか」です。ここで間違ってほしくないのですが、「いくらで売るか」と「どのような価格で売るか」は微妙に概念が異なります。「いくらで売るか」と 課題を立てた場合、「低価格で売る」という答えを出すことはできても、「すべての商品を同じ価格で売る」という答えまでは導き出せません。

  買い手が価格に求めるさまざまなファクターを考慮し、買い手にとってその価格が無理だったり、不信だったり、不快だったり、面倒だったり、イヤだったりし ないことが、「売れる価格」を実現します。だから、単に安いか高いかだけになりがちな「いくら」ではなく、「どのような」と課題を設定して、広い視野で価 格を考えてほしいのです。

 ちなみに個人的な話ですが、もしも世の中に「40円均一ショップ」があっても、私は絶対に出かけていきません。 「超低価格+均一価格」でより魅力的では?と思う人もいるでしょうが、私はイヤです。商品本体価格40円に消費税が2円足されて……。ああ、恐ろしい。答 えを書くのもイヤです。数字に縁起の良し悪しを感じる人って私だけじゃないと思います。同様に、ひとつ58円の品物もイヤですね。100円出した時のお釣 りが……ね。

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