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香港旅行が好きな理由1000!
個 人的な話ですが、私、香港旅行が大好きです。なぜ、好きなのかと問われれば、軽く100以上の理由を挙げることができます。もっとも「200以上理由を 言ってみろ」と言われれば、それはそれで答えることができます。手間さえ惜しまなければ、300でも500でも1000でも理由を並べることができるで しょう。
「料理がおいしいから」なら、理由は一つになりますが、「海鮮料理がおいしいから」「ワンタンメンがおいしいから」「マンゴプリ ンがおいしいから」と答えれば、三つになります。この調子で大きな概念をどんどん細分化していけば、いくらでも列記できるわけです。この「数出し」という 作業は、アイデア発想に取り組む際の基礎的な方法です。
例えば、上記の食べ物を例に商品企画をしてみます。「香港の料理が好きだ」とい う人にはどんな商品やサービスを提供すればいいですか?ちょっと漠然としていますよね。でも細分化してみると、少しイメージがわいてくるはずです。「海鮮 料理が好きだ」という人を狙うなら、「海鮮料理のメッカをめぐる香港4泊5日の旅」のような旅行企画を。「ワンタンメンが好き」という人を狙うなら、「日 本初登場!香港雲呑麺(ワンタンメン)専家」のような香港食材が自慢の飲食店を。「マンゴプリンが好き」という人を狙うなら、「○○ホテル料理長 陳紀彦 手作りプリン6個セット」のような食品小売りを。
いいアイデアを見つけるためのキーワードは細分化です。「香港の料理が好きだ」という人 には、そのなかでも「何が好きか?」「どこで食べるのが好きか?」「いつ食べるのが好きか」「誰と食べるのが好きか?」「どうやって食べるのが好きか?」 「いくらくらいで食べられるのが好きか?」「そもそもなぜ好きか?」などと細かく聞いてみることです。その答えのなかには、まだ、その答えを完璧に満足さ せる商品やサービスが存在していないことが十二分にあり得るのです。
1000ド ルの花瓶を150ドルにまで値引くテク
さて、前振りが長くなりました。そろそろ本題に入りましょう。今回も価格戦略について話します。 山ほどある私の「香港旅行が好きな理由」の一つが買い物です。正確に言うと、「物を入手すること」ではなく、「購入のための値段交渉」が好きなのです。
まあ傑作です。初めは1000香港ドル(以下、単にドルと表記。1香港ドルはおよそ15円)と言っていた陶器製品が150ドルになったり、3000ドル だったはずの皮革製品が500ドルになったりなんてことはザラですから(ちなみに香港といえどもブランド品の場合、そんなディスカウントはありえません。 もし、ガンガン値切れる有名ブランド品があったとしたらちょっと怪しいですね)。
もっとも、1000ドルの花瓶がいきなり150ドルにな るわけではありません。単に「負けてくれ」と言ったところで10~30%オフがせいぜいでしょう。その程度の値引きに応じることを前提とした「正価」です から。そこからさらに下げるには、こちらから「指し値」をする必要があります。「300ドルでどうだ?」「そりゃ無理だ」「無理ってことはないだろ。なら 買わないよ」「待ってくれ。それなら650ドルにする」。という感じです。だいぶ下がってきました。しかし、まだまだです。
「あっちに置 いてある茶器セットと大皿も買おうと思うんだが、もっと下げてくれないか」と。これで話はまた変わります。「それだったら300ドルでいいよ。あなたには 負けたよ」となります。でも、さらに交渉します。「私が300ドルと言ったのは、元々この食器だけを買う場合で、全部買うならもうちょっと安くしてもらわ ないと」と。相手は250ドルくらいまでは譲歩するでしょう。「あ、そうそう。今日は日本人の友人を連れてきているんだ。ほら、あいつとあいつ。彼らにも ここの店で土産を買うように言ってあげようか。どう?」。これで1000ドルの食器が150ドルにまで下がります。楽しいでしょ(笑)。
「値下げしてもたくさん売れれば同じ」という計算
大事なこと。それでも店は決して損をして いないということです。損をしてまで私の要求に応じるはずがありません。反対にいえば、私は店が損をしないようなかたちで交渉をしているのです。だから値 引きに成功するのです。
消費者には、少しでも物を安く買いたいという気持ちがあります。ですよね。では一方の商人には、少しでも物を高く 売りたいという気持ちがあるのでしょうか?
実は、そうとも限らないのです。100ドルで仕入れた食器1個を500ドルで売れば400ドル の粗利益が出ます。ですが、100ドルで仕入れた食器8個をすべて150ドルで売っても同じく400ドルの粗利益になるのです。高く売れれば売れたでいい し、高くなくてもたくさん売れるならそれはそれでいいのです。
ですから、私の相手をつとめた香港の土産物屋さんは、私が「他にも買う。他 の人にも買わせる」と口にするたびに、「この客を通じて得られそうな粗利益」÷販売個数という計算を頭のなかでして、単品当たりの価格をどこまで落とせる か考えていたわけです。さも、「しょうがないなあ。特別だよ。今回だけだよ。やれやれ、日本人にはかなわんな」みたいな顔をして(笑)。
価格弾力性を値引きの判断基準に
「価格弾力性」という言葉があります。価格が1%変化した際 に、需要が何%変化するかを表すものです。弾力性の絶対値が1を超えると弾力的、1を下回ると非弾力的ということになります。価格弾力性が弾力的であれ ば、値上げをすると需要が急に小さくなり、反対に値下げをすると需要が急に大きくなります。反対に価格弾力性が非弾力的であれば、値上げをしても値下げを しても、需要は大きく変化しないことになります。
香港 の商人は、「この男(私)を相手にする場合、この商品(土産用食器)は価格弾力性が極端に高い」と踏んだわけです。値下げすればたくさん売れるし、反対に 値上げしようものならまったく売れないかもしれないと。
あなたが起業して扱う予定の商品やサービスは弾力的ですか?それとも非弾力的ですか?その商品やサービスの人気度、競争相手(同様・類似商品)の多寡、さ らにはその商品やサービスが、プロダクトライフサイクルの成長期にあるのか、衰退期にあるのかなどによって弾力性は大きく変わります。
価格は狙った相手が買える価格で、かつ、買いたくなる価格に。これが 大事な視点であることを重ねて伝えてきました。そのうえで、決めた価格を下げることで販売数が増えるのであれば、特例的、臨時的、あるいは限定的に価格を 下げてもかまわないとおもうのです。そして、どこまで値下げを許容するかも、しっかりと事前に決めておくこと。正価と値引き価格。この「価格の幅」を決め ておくことが柔軟な価格戦略の基礎となります。
「たくさん売れる」が値引きの根拠
ただし、値引きはあくまで販売数が増えるという根拠がある場合だけと考えてください。ちまたには1年365日、いつでも特売 状態の低価格業態がひしめいています。あるいは、値引き+サービスポイント付加など、二重三重の価格サービスを展開している企業も少なくありません。もは や、昔のように、ただ単に値引きをすれば売れる時代ではないのです。
香港の商人は、「値段を下げればたくさん買う」という私の言葉を確認してから、大幅なディスカウントに踏み切りました。その 精神とテクニックを見習ってください。