「1000円カット」はお店にもメリットが

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
価格の決定は自分 の都合ではなく、狙った相手の都合に合わせる。これが鉄則です。が、最終的には自分の都合も織り込んだ微調整が必要だ。

 

何事も慎重に判断しよう

  こんなクイズを何かの本で見かけました。「Aは1円玉10トン、Bは10円玉1トン。どちらか一方をもらえるとしたら、あなたはA、Bどちらを選びます か?」。実際にセミナーなどでこの質問を受講者にぶつけてみると、ほぼ半分ずつに選択が分かれます。二者択一というのは、だいたいそういう傾向になるよう ですね。

 でも、その場ですぐにどちらかを選ばず、例えば「翌日に返事をする」ということにすれば、選択にかなりの偏りがでるはずです。な ぜなら、Aの1円玉10トンは金額にした場合、ちょうど1000万円ですが、Bの10円玉1トンは、そのほぼ5分の1 、つまり約200万円にしかならないからです。冷静になって「金額の違い」という点に気づけば、まずほとんどの人がAを選ぶでしょう。

 起 業すると、日々これ判断という状態になります。買うか買わないか。やるかやらないか。右の道を進むか、左の道を進むか…。まずいのは、どうすればいいのか と頭を抱えたまま、何もしないことです。経営判断は、選んだ答えの正否もさることながら、それを「いつまでに下すのか」ということが重要になります。回答 期限、申し込み期限、契約期限、支払い期限…。常に時間との戦いなのです。しかし!早くしないといけないと焦って、間違った判断を下してしまうのは最悪で す。

 

複数課題の優先順位付けも大切

  判断を下すべき課題を抱えたら、まずは、その判断がいつまで猶予できるかをよく確かめて、その時間内で熟考して納得のいく答えを出すことが大切です。ちな みに、課題は一つとは限りません。限らないというより、たいてい、経営者は常に複数の課題を抱えているものです。どの課題を優先して考えるか。この選択も 大事です。

 ところが課題自体の重要さに優劣を付けられない人も少なくありません。ビジネス上の課題は、えてして、一見しただけではどちら が得か損か、わかりにくい形で目の前に現れてくるものです。まさに、さきほどの1円玉が10トンか、10円玉が1トンか、のような感じです。そのために、 どっちを選んでも大差のないような案件に時間を費やした揚げ句、重要な選択のほうを適当に処理してしまう、というミスも起こりうるのです。

  物事を慎重に判断する姿勢と、実際に物事を判断するための基準を自分のなかに確立しておくことが大切です。後で泣きたくなければ…。

 

コストやリスクで価値は変わる

 さて、大変長くなりましたが、以 上は前置きで、ここからが本論です。もう一度クイズを出します。1円玉1万枚と1万円札1枚、どちらかをもらえるとしたらどうしますか?アルミと紙の価値 の違いということは抜きにして考えてください。

 私なら1万円札のほうを選びます。言うまでもなく金額は同じですが、札が1枚なら運搬や保 管の手間もないですし、本当に1万円あるのかどうか確認する手間もありませんから。

 では、1円玉1万1000枚と1万円札1枚のどちらか をと言われたらどうします?今度は金額が違います。悩ましいですよね。このへんが経営者の考えどころなのです。

 

『起業・独立の強化書』75円引きのワケ

  ちょっと私自身の話をします。私は全国各地にお邪魔して講演を行っていますが、できる限り講演の後に著書のサイン即売会を開くようにしています。例えば 『起業・独立の強化書』という本があるのですが、これの定価は1575円です。でも、私はそれを1500円ちょうどでお売りします。要するに75円引きで す。言い換えれば75円を投じて何かを買っているわけです。さて、私は何を買っているのでしょう?  実はいろいろなメリットを入手しています。

  まずは、釣り銭の準備や持ち込みの手間を大幅に削減できます。さらには、釣り銭の出し間違えによるロスの低減も追求できます。また、釣り銭のやりとりがな ければ、それだけお客さんの流れがスムーズになるので、「あまり待つのなら帰る」という人が出るのを食い止めることもできます。その上で、「サイン付きな のに、普通に買うより安いんですよ」という販売促進も追求できるのです。もちろん、勘定合わせの作業も簡単に済ませることができます。たった75円を放棄 するだけで、これだけのメリットが手に入るのです。

 このような観点を付加すると、「1円玉1万1000枚と1万円札1枚のどちらを選ぶ か」に答えが出せるのではないでしょうか。

 

前提はあくまでも相手の財布の 事情!

 ここでいったん整理しましょう。価格決定の前提は、狙った相手のお財布事情にあります。何度も書いてきた ことですが、ものの価格は、狙った相手が買える金額、買いたくなる金額に設定することです。仮に『起業・独立の強化書』の定価が、1冊7万9975円もし たら、そこから75円を引いて7万9500円にしたところでダメですよね。「それだけの価値はある」と誰かが言ってくれたとしても(笑)。

  だからまずはストライクゾーンに投げ込むこと。その上で販売方法や販売条件などをかんがみて、最終的な数字を微妙に調整していくべきなのです。

 

「カット料金一律1000円」のメリット

  こんなお店があります。カットだけしかしないヘアサロン。シャンプーもパーマもカラーもしません。本当にカットだけです。だから当然、他店よりは安いわけ です。ではいくらか?答えは一律1000円。一般的に5000円、1万円とかかるのが常識の美容料金のなかでは、画期的な価格です。そういう意味では、消 費税を外税にして1050円にしても、十分に競争力があります。でも、そうしないところがミソ。

 1050円にした場合、コインの持ち合わ せのないお客さんは仕方なく2000円を出して、950円のお釣りを受け取ることになります。ところが財布のなかのコインが増えると、財布の皮を傷めやす くなるので、それを嫌がる人も結構いるのです。そんな心理的阻害要因が原因で、お客さんを逃がすこともあります。この店はそれを阻止しています。

 

最終的には自分の都合も織り込む

 もちろん私の本の例のように、 店側の管理面でもさまざまなメリットがあります。ちなみに、上の例で示したお店にはレジがありません。では一体、どうやって会計するのでしょう?

  自動券売機を使用しているのです。お客さんは入店と同時に1000円をその機械に入れます。そこからカードが出てきます。そのカードを店の人に渡せばカッ トしてもらえる仕組みです。これなら釣り銭の間違いも起きませんし、もっと言えばスタッフの横領なども起きません。

 この一律1000円と いう価格は、ターゲットの心をつかむと同時に、さまざまなコストやリスクをも削減する見事な業務管理戦略になっているのです。

 価格の決定 は自分の都合ではなく、狙った相手の都合に合わせよう。そう訴えてきました。これが鉄則です。が、今回はその上で、最終的には自分の都合も織り込んだ微調 整が必要であることをお伝えしました。

 「値決めって深いなあ」。そう思っていただければ幸いです。

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