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より良いアイデアは、徹底した学習から生まれる
解 説
【現状はニーズの存在に気づい た段階】
自らの悩みをモトに、ベンチャー企業社員の心身を癒し、それをもって企業の生産性向上を図るアイデアを思いついた心ジョージさ ん。だが、事業化するためには、一体何から手を着ければいいのかがわからず、準備作業はあっと言う間に行き詰まってしまった。
答えはい たって簡単。心さんがまずやるべきことは勉強だ。事業計画の作成や資金の心配などは、まだまだ先の話。そもそも彼は「事業アイデアを思いついた」と考えて いるようだが、正確には、まだ「事業アイデアのモトになるニーズに気づいた」段階である。だから、そのニーズに関するあらゆる事柄について、もっと研究 し、理解する必要がある。
例えば「ベンチャー企業の社員はなぜ疲れているのか?」「どう疲れているのか?」「ベンチャーの中でも、どの業 種、どの規模、どれくらいの年数の会社に疲れた人が多いのか?」などと人から質問されたら、即座に回答できるくらいにはなっていたい。
【ニーズの把握に加えて競合の把握も重要】
社員の心身のケアという課題は、実際に今、ホットな テーマである。本人の身体上や精神上の健康はもちろん、育児や介護など、社員が抱える悩みは多い。また、それらが未解決であるために、生産性の低下を引き 起こしているという指摘もあり、すでに EAP(従業員支援プログラム)を導入して対処を図る企業も出てきている。
心さんが考える事業 は、このEAPとほぼ同じである。事業への思い入れが強いと、ついついそれを自分のオリジナル・アイデアだと信じ込み、競合状況の調査を怠る人がいるもの だ。
ニーズを確信できる時は、得てして同様の事業がすでに立ち上がっているもの。だからダメだというのではない。先行事例があるということ は、むしろニーズの存在が確認できたということである。その先行事例をベースにして改良ポイントを見つけ出し、自分の事業に競争力を付加するよう、考えを 進めていけばいいのだ。
ニーズの正確・詳細な把握。そしてもうひとつ、競争相手の存在や状況の把握。つまり、市場環境の把握。これが、心さ んが取り組むべき勉強のテーマである。
【知識はアイデアを築き上げるブロックだ】
勉 強とは、知識習得のための作業だと理解してもらっていい。良い事業アイデアを生み出すためには、狙う市場に関連した知識を、より多く持っているほうが有利 だからだ。つまり知識とは、事業アイデアという「構築物」を完成させるための「コンクリート・ブロック」のようなものである。例え話で説明しよう。
ま ず、あのコンクリートの四角い固まりをイメージしてほしい。あれを積んで家を建てるとする。10個や20個では無理。 200個で「小屋」ができる程度だ。つまり、所持しているブロックが一定量に達しなければ、家を建てるという目的を遂げることはできない。
ブ ロックが 500個あれば、小さな家はできる。1000個以上あれば、頑丈な家でも、背の高い家でも、面白い形状の家でも、何でも建てることができる。所持するブ ロックが一定量を突破すれば、作り手の志向まで反映した形で目的を達成することが可能になるのだ。
あらためてブロック=知識である。だか ら、知識がまるでないのは論外として、ある程度の知識を得たところで、アイデアを固めてしまうのもまずい。ブロック 200個程度で建てた家では、容量も安全性も面白みも不十分なため、誰もそれに魅力を感じないからだ。要するにその程度では、顧客の心をつかめないアイデ アで終わってしまうということだ。
【評価すべき心さんの起業家センス】
最後に 少し、心さんの優れた面も紹介しておこう。思いが募るばかりで動きが取れなかった彼だが、自分の悩みからビジネスチャンスを見つけ出すセンスは悪くない。
ちなみに起業家センスのない人が厳しい職場環境に置かれた場合、(1)それでも我慢する (2)辞めて他社へ行く (3)経営陣に改善案 を提案する などの行為のいずれかを選択するだろう。番号が大きくなるほど能動的ではある。が、それは、あくまで雇われて働くことを前提にした考え方だ。 悩ましいことや困ったことが起きたとき、そこにビジネスチャンスを見い出せる人は、起業家センスの高い人だといえる。
今週のキーワード<青写真>
心さんには事業への強い思いがある。これにしっかりした知識が加われ ば、「まだ満たされていないニーズ」や「サービスが及んでいない客層」などがきっと見えてくるだろう。そして「こんな顧客に、こんなサービスを、こんな方 法で提供しよう」という青写真が描けるようになる。ここまできてやっと、「事業アイデアが浮かんだ」といえるのだ。
今週のキーワード<青写真>
心さんには事業への強い思いがある。これにしっかりした知識が加われば、「まだ満たされていないニーズ」や「サービスが及んでいない客
層」などがきっと見えてくるだろう。そして「こんな顧客に、こんなサービスを、こんな方法で提供しよう」という青写真が描けるようになる。
ここまできてやっと、「事業アイデアが浮かんだ」といえるのだ。