起業アイデア 第12回 学習テーマ【会社の種類の選び方】

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

事業に必要な資金力を基準に、会社の種類を決める

解 説

【有限会社は出資者が50人までに制限されている】

昆虫が 大好きな鍬形佳祐さんは、最低資本金規制の特例制度を活用して有限会社を設立した。同時に、都心に雑木林を再現し、そこに昆虫を放し飼いにする施設の建 設を目指し、同好の士に会社への出資を呼びかけた。その結果、 200人以上もの希望者が。だが、彼の会社は 200人全員の出資を受け入れることができない。なぜか?

有限会社法の第 8条に「社員の総数は50人を超えることを得ず」とある。ここでいう「社員」とは、従業員のことではなく出資者のこと。だから、鍬形さんの会社は、すで に鍬形さんが出資しているので、あと49人しか出資者を受け入れることができないのだ。

【新 たに株式会社を設立するのが現実的な策】

厳密に言えば、同法 8条の続きで、「特別の事情のある場合において裁判所の認可を得たる時はこの限りにあらず」とある。が、そこまでして社員の枠を広げようとするのは現実的 ではない。こうなってしまった以上、鍬形さんは新たに株式会社を設立して、その会社で出資者(株主)を受け入れるほうがいい。株式会社には出資者数の制 限はない。

ちなみに、すでに有限会社の代表者に就任している鍬形さんは「創業済み」なので、新たに株式会社を設立する際、最低資本金規制 の特例制度を活用することはできない。特例の適用を受けられるのは、「創業者」だけである。「創業者」とは、「現在、事業を営んでいない個人で、 2ヵ月以内に新たに会社を設立して、その会社を通じて事業を開始する具体的な計画を有する者」のことだ。

鍬形さんは出資の募集に際して、 出資一口の単位を 6万4000円とした。 6と 4とで「ムシ」に掛けたわけだが、それなら、仮に全員が一口しか出資しないとしても、 200人× 6万4000円で、合計1280万円を集めることができる。これだけで株式会社の最低資本金である1000万円を突破しているので、実際、特例制度を活用 する必要もないわけだ。

ここで注意をひとつ。会社や組合などの法人を設立せず、任意に起こしたファンドや事業などへの出資を不特定多数に求 めると違法になる恐れが高い。出資法第 1条で「何人も、不特定且つ多数の者に対し、後日出資の払い戻しとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し、又は 暗黙のうちに示して、出資金の受入をしてはならない」と定められているからだ。この点はぜひ気をつけてほしい。

【既存の有限会社はどうするか?】

話を鍬形さんの会社に戻そう。設立済みの有限会社はどうする か。 3とおりの考え方がある。 1番目は解散する。 2番目は新設した株式会社と合併する。 3番目はそのまま残す。

どれでも問題はない が、このケースでは 3番がお勧め。鍬形さんはすでに有限会社で昆虫販売を行っているのだから、その事業はそのまま有限会社で継続し、施設建設事業は新たに設立する株式会社 で行う、というように、事業別に会社を分けてもいいのである。

【会社ごとに異なるルールを事前 に勉強せよ】

さて、根本的な問題だが、鍬形さんは、やはり勉強不足。何も事前に有限会社法や商法を理解せよとは言わない。ただ、会社設 立のための書籍やサイトは山ほどある。それらを読めば、「有限会社の出資者は原則50人まで」という記述は簡単に見つけられたはずだ。

ま た、別の問題もある。「都心に雑木林を再現して、昆虫を放し飼いにする施設」ともなれば、敷地の確保や施設建設だけでも億単位の費用がかかるだろう。それ は将来の夢であったとしても、いつか、それだけの資金が必要になることは推測できる。それなら最初から株式会社を設立すれば良かったのだ。どうせ1000 万円以上の資本を集めることになるのだから。

【資本金は、会社設立のための費用ではない】

時 々、事業を始めるための資金と、会社の資本金とを「別のお金」と誤解する人がいる。資本金を「会社設立に必要なお金」と思い込んでいるのだ。これはとんで もない間違い。資本金とは、会社という器を使って事業を始めるための元手のことである。言わずもがなだが、資本金は事業のために自由に使うことができる。

ま た、1000万円あるから、あるいは 300万円しかないから、という理由で会社の種類を選択するのも間違いだ。1000万円あっても、小さな資金で稼働する事業なら有限会社でいいし、 300万円しかなくても、大きな資金を要する事業なら、株式会社を設立するべきだ。

従来は、「その理屈はわかるが、会社設立時にそれだけの 資金を集めるのは……」という声もあった。だが今は、最低資本金規制の特例制度がある。創業時に用意できる資金の多寡にかかわらず、自分の事業に適した会 社を設立することができるのだ。

 

今週のキーワード<元手>

鍬形さんも、恐らく独立準備の段階では、資本金と事業資金を別物と考えていたのだろう。だから会社の種類を選ぶ時、事業資金を出資で
きる人数の制限に気づかなかったのだ。念を押すが、資本金は会社の設立のために用意するものではない。むしろ、「 300万円以上の元手
がかかる事業を始めるから有限会社をつくる」「1000万円以上の元手がかかる事業を始めるから株式会社をつくる」。そう理解してほしい。

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