起業アイデア 第2回 学習テーマ【アイデア抽出法の活用】

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

仲間の脳を借りて、アイデアを引っ張り出す

解説

【色ではなく、太さが違う 3種類】

病床に伏した父親に代わってボールペン工場の経営を継いだ辺 直子さん。いつまでも下請け一辺倒では成長は見込めないと、新機能を持つボールペンを考案する。もともと父親が営んでいた工場は 3色ボールペンの製造が得意。その技術や機械を活かした新機能とはどんなものか? また、彼女はどのようにしてそのアイデアを思いついたのか?

ひとつの軸の中に 3つの芯を入れる点は従来と同じ。ただし辺さんは、 3色の芯を入れる代わりに、ボール径の長さ(書いた時の太さ)が異なる 3つの芯を入れたのだ。

小さな文字を書くのに適した 0.4mmボール、宛て名書きなどに適した 0.7mmボール、そして大きな文字を書くのに適した 1.0mmボール。この 3種類の芯をひとつの軸に収めたのである。つまり、これ 1本でボールペンのおおよその用途がカバーできるわけだ。

【名案のはずが、すでに製品化済み】

当初、辺さんは違うアイデアを持っていた。勤務時代、何かを書き損じては、「しまったー。修正液はどこだー」と騒ぎ立てる同僚がいたことを思い出し、「修正テープ付きボールペン」をつくれないかと考えていたのだ。

だが調べると、「修正テープ付きボールペン」はすでに発売されていたことがわかる。さらに各社のカタログをチェックすると、あるわあるわ、さまざまな機能! 辺さんは打ちのめされた。が、やがて、「こんなにいろいろなボールペンがある ということは、新たなアイデアが受け入れられやすい業界なんだ」と思えるようになってきた。

【徹底したヒアリングを実施するが……】

やる気を取り戻した辺さんは、まず、元の同僚や友人を訪ねて、どんなボールペンを使っているのか、 なぜそれを使っているのか、持っているのに使わないのはどういうペンか、また、筆記具や文具に対して不満を感じることは何かなどを徹底的に聞いて回った。その結果、ボールペンの選択理由は想像以上に多彩であることを知る。

もちろん機能の良さを挙げる人もいたが、使用感の良さやデザインの良さ を挙げる人もいた。さらには、使いにくくても、それがプレゼントされたものであるとか、自分の好きなキャラクターが付いているからなどの理由も少なくなかった。結果として、世の中にさまざまなボールペンが出回る理由がわかったものの、開発ヒントを得るにはいたらなかった。

【仲間を集めてブレーンストーミング実施】

そこで辺さんは、勤務時代によくやったBS(ブレーンストーミング)でヒントを得ようと思いつく。BSとは、複数の人間が集まって、あるテーマに関する回答や意見を自由に述べ合うことでアイデアを抽出する 方法。どんなに荒唐無稽な発言でも、明らかにジョークでもかまわない。反対に、他人の発言への批判は御法度。参加者同士が思考を刺激し合うことで、想像も しなかったアイデアが出てくることを期待する方法だ。

実際、やってみるとわかるが、この方法を用いると驚くほど多彩な回答や意見が飛び出し てくる。ただし、そうなるためには、ある程度テーマを緩くして、誰でも発言できる状態にすることが大事。たとえばテーマをいきなり「ボールペンの新機能」 とするよりは、「ボールペンに付いていたら面白いもの」くらいで始めたほうがいい。

また、進行役がうまく相づちを打つことも肝要。発言内容 に応じて「いいねえ」「なるほど」「面白い」「それなら売れるぞ」などと適切に反応すること。そうすると、どんどん場は熱を帯び、相乗効果もあって、まさ にブレーンストーミング(脳の嵐)が巻き起こっていくのだ。

【回数を重ね、核心的なアイデアに 到達】

辺さんは友人を集め、合計 3回BSを実施した。最初は本当に「ボールペンに付いていたら面白いもの」をテーマにした。かなりいい案も出てきたが、後で実際に製品化することを考えて みると、自社の製造技術や機械では間に合わないものが多かった。そこで彼女は気づく。今ある工場の資源を活かせる案でなければ実現は難しいと。

だ から、 2回目は「ボールペンの軸の中に詰められそうなもの」とテーマを絞り、さらに 3回目は、「 3色の芯の代わりになるもの」と絞って、ついに「筆記幅の違う 3種類の芯」という答えを引き出したのである。要するに新機能のアイデアは、辺さんが考えたというより、BSで活性化された仲間の脳から飛び出してきた ものだったのだ。

 

今週のキーワード<いい仲間>

BSは有効なアイデア抽出法である。ただし、当たり前のことだが、参加者がいなければ実施はできない。BSに限らず、仲間はさまざまな知恵を
提供してくれる貴重な財産だ。起業・独立を成功させるためには、いい仲間を持っていることが不可欠である。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

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