起業アイデア 第5回 学習テーマ【事業領域の策定】

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

自分の強みを発揮しやすい業種・実態を探す

解説

【料理が充実したバーに転換】

板前歴20年を機に料理店の開業を決意した酒本竜馬さんは、先輩 経営者の「ちゃんと事業計画を立てるように」というアドバイスに従い、まずはSWOT分析に取り組んだ。その結果、「手持ち資金が少ない→狭い店しか借り られない→厨房設備が貧弱→料理の品数が不足する→競争力に欠ける」という悩みをクリアする方法が発見できた。

SWOT(スウォット)分 析とは、自分の強み(Strength)と弱み(Weakness)、自分を取り巻く機会(Opportunity)と驚異(Threat)という4項目 を立て、それぞれに該当する事柄を書き出し、それらを評価・比較し、関連付けながら、事業領域を策定する手法だ。

酒本さんはSWOT分析の 「強み」の欄に、「和食の調理技術」や「仕入れ先に顔がきく」などと並んで、「酒に詳しい」という言葉を書き込んだ。それが課題解決の引き金になった。さ て、彼は、どんな方法を見つけたのだろうか?

料理店の開業を中止し、代わりにバーを開業する。これが答えだ。より正確には、「品数の少ない 料理店」ではなく、「料理が充実したバー」を開業することにしたのである。仮に、狭い店の厨房でつくれる料理を15品としよう。和食料理店の看板を掲げた 場合、それでは確かに少ない。だが、バーの看板を掲げて15品の本格的な料理(つまみ)を提供したならどうか。十分お客さんを引きつける要因になるだろ う。

【SWOT分析はシンプルな作業】

実際に開業してみて、酒本さんの狙いが 当たっていたことは証明された。「厳選された酒と、その酒によく合ううまい料理を出すバー」という評判がクチコミで広まり、瞬く間に繁盛店になったのだ。

答 えを明かせば単純な変さらに思えるが、こんな発想の転換は、なかなかできるものではない。普通なら自らが培ってきた技量にこだわって、和食料理店という業態 から頭が離れないものだ。ではなぜ、酒本さんはそれができたのか? その秘密がSWOT分析にある。

すでに説明しているが、SWOT分析は 決して複雑な作業ではない。まず、事業を行う上での内的要因=自分の強みと弱みを抽出し、さらに、外的要因=機会と驚異を抽出する。それらの情報をもと に、最終的には「強み」と「機会」とを結び付けて事業領域を探るもの。留意点は、抽出した情報が正確かどうかだけで、作業そのものは極めてシンプルだ。

【弱みも事業領域を探る貴重な情報】

酒本さんもこの作業に取り組んだ。「強み」の答えはすでに 紹介したとおり。一方、「弱み」には、「資金不足」「人を使うのが苦手」「洋食や中華は不得意」などと書いていった。また「機会」には、「旬を味わいたい 人が増加」「日本酒や焼酎がブーム」「隠れ家的な店が人気」などと書き、「驚異」には、「接待目的での高級和食店利用が減少」「低単価の和食チェーン店が 増加」などと書き込んでいった。

自ら書いたこれらの情報を関連付ける作業を繰り返すうちに、酒本さんは「和食の調理技術」より、「酒に詳し い」という強みのほうが核になるのではないかと思い始めたのだ。

すでに「弱み」からは、「自分ひとりで和食をつくる」という方向が示されて いる。一方、機会や驚異などの外的要因は、和食を肯定しながらも、高級和食料理店といった業態には否定的な要素が並んでいた。SWOT分析の結果を見れ ば、「酒をメインにして和食も出す小さな店」という答えは、半ば自動的に出てくるのだ。

さらに、そこからバーという業態に行き着いたのは、 「資金がなく、厨房スペースも設備も貧弱な物件しか借りられないはずなので、それでもできる業態を考えた結果」である。「弱み」も事業領域を探る貴重な情 報であることがわかるだろう。

【内的要因と外的要因を結び付ける】

自らのキャ リアを生かして独立しようとする人は、えてして内的要因に偏重して事業領域を決定しがちである。一方、有望市場を求めて起業しようとする人は、反対に外的 要因に偏重して事業領域を決定しがちである。

いずれのケースも、そのまま突っ走ってしまうと、後で苦しむことになる。得意でもニーズがない 事業、ニーズがあっても不得意な事業。どちらも行き詰まるのは目に見えているからだ。内的要因と外的要因をしっかり結び付けることが失敗を避ける基本であ る。

 

今週のキーワード<土俵>

事業計画書を作成するためには、事業計画を立てなければならない。そして、事業計画を立てるためには、まず、事業領域を決めなければ
ならない。事業領域とは、「自分の得意技がもっとも発揮しやすい土俵」という意味である。

起業、経営ノウハウが詰まったツールのすべてが、
ここにあります。

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