起業アイデア 第8回 学習テーマ【スタッフの採用】

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

いかにして人を雇わずに事業を進めるかを考える

解説

【固定費の抑制は小さな事業の必須課題】

有効成分に富む中東産の塩にほれ込んだ仲買達矢さん は、勤務先を辞してその塩の輸入販売会社を設立した。彼はサウナやエステなどにそれを卸すことを計画。だが、自らは人事部出身で営業に自信がないため、営 業スタッフを採用することに。ところが予想以上に応募者が集まり、採用予定枠 1人に対して 4人の有能な候補者が残ってしまった。資金的には4人採用も可能だが……。悩みに悩む仲買さん。彼はどういう判断をくだすべきか?

今は誰 も採用すべきではない。これが答えだ。そもそも仲買さんは、「人を雇う資金はある」と言うが、業績が不発でも、延々と給料を払い続けるつもりなのだろう か。また、人を雇うということは、給料以外にも交通費や通信費、備品費、福利厚生費などがかかるし、その人たちが働くスペースも確保しなくてはならなくな る。そうしたコストがズッシリとのしかかってくることを彼は理解しているのだろうか。

起業直後は、人が何人必要かなどと考えるより、いかに 人を雇わずに、つまり、いかにコスト(特に固定費)を上昇させることなく事業を運営するかに心血を注ぐべきタイミングである。なぜなら、小さな事業が着実 に生き残るためには、最小のコストで最大のパフォーマンスを目指すことがもっとも堅実な方法だからだ。

【営業が苦手なら、営業力に頼らない仕組みを】

仲買さんは自分に営業経験がないため、営業が得意 な人を採用しようとしたわけだが、そういう考え方は短絡的であり、いたずらにコストの上昇を招くだけの結果にもなりかねない。営業が不得意なら、営業をし なくて済むように事業の仕組みを考えればいいのだ。

この塩を「あまり欲しいと思わない」人をターゲットにしてしまえば、どうしても強い営業 力が必要になる。だが、「ぜひとも欲しい」と言ってくれる人を見つけ出せれば、営業力はさほど必要にならない。つまり、これまで何度も学んできた、「商品 やサービスを誰に売るのか」の答えを正しく設定できれば、営業スタッフは採用しなくて済むのだ。

【営 業力が必要な時は、社外戦力を活用する方法も】

では、仲買さんの事業は生涯、営業スタッフと縁がないのか? 決してそういうわけではな い。商品力が取引実績で証明され、その上でまだまだ顧客を増やせると判断するなら、その時は営業スタッフを確保して拡大攻勢に出てもいい。

た だしその際も、社員の雇用という方法に固執せず、営業代理店を確保する、あるいは、個人と完全出来高払いの業務委託契約を結ぶなど、営業スタッフにかかる コストを人件費(固定費)ではなく、外注費(変動費)にしておくという考え方が大切だ。

【社員 を採用するなら、価値観の共有が大事】

しかし、何が何でも社員を採用するな、というわけではない。事業の成長を共に追求していく仲間が必 要だと思うのなら、正社員を獲得すべきである。そういう人物の採用に当たっては、能力や条件以上に大事な要素がある。価値観を共有できる人物かどうかだ。

産 声を上げたばかりの会社が、新市場を生み出そうとしているのである。適切な販路を確保し、業績が伸びたとしても、まだまだ苦労は尽きないはず。事業に対す る価値観がバラバラの集団では、そうした創業期の困難を乗り切っていくことはできない。

仲買さんは「人々の健康に貢献したい」という熱意 で、勤務先を辞してまで塩の輸入販売を志したわけだ。社員として迎えようとする人物には、その思いを堂々と伝え、それへの理解の度合いや共感の度合いを重 要な選考基準にすべきである。

【人材採用の前に、綿密な事業計画を】

こ こで話は根本に戻る。仲買さんは主要販路を「サウナやエステ」とひとくくりにしている。どちらも、浴槽に入れて「発汗を促す」という塩の利用法と関連があ るサービスのようにも思える。だが、卸先として考えた場合、両者はまったく異質の相手である。

この塩の小売価格は不明だが、効果に優れた輸 入モノであるなら、そう安くはないだろう。つまり「高いけど健康にいいもの」である。だとすれば、「先生」自身が強くオススメできるエステでは販売の見込 みが立つが、フロントなどにサンプルを置くのがせいぜいのサウナではさほどの販売見込みは立たない、ということになる。

また、ドラッグスト アへの卸売りを考慮していない点にも疑問が残る。ドラッグストアは言うまでもなく健康製品の強力販売チャネルである。それだけに難関だが、優秀なバイヤー が揃っているので、いい商品なら仕入れてもらえる可能性もあるはずだが……。

結局仲買さんは、販路に関して綿密な検討をしていないのだ。と いうことは業績予測もきわめて曖昧だと推測される。そんな状態で社員を採用するなど論外だ。不確かな事業に投入される人材のほうこそいい迷惑である。

 

今週のキーワード<人の力>

人の力を事業に活用したいのなら、人が力を発揮したくなるような事業計画を立てることが先決だ。社員を採用するということは、自分の事業
にとっても、相手の人生にとっても重大な事柄である。軽率な判断は慎みたい。

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