「事業計画書なんて無くても起業はできる」?

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局
事業計画書は何の ためにあるのか?その価値を知っているのと、いないのでは大きく違ってきます。他の人へ自分の事業を伝えるために必要なだけでなく、事業を健全に成長させ るためにはとても大事なのです。

 

本当に計画書なしで大丈夫?

 「計画書なんて作らなくても起業はできる」そう豪語する人物が時々います。本当にそうでしょうか。

 確かに事業計画書を作成しなくても勤務先を辞して独立することはできます。何らかのビジネスを始めることもできるでしょう。しかし、そのビジネス は本当に継続するのでしょうか。言い換えれば、利益を創出し続けることができるのでしょうか? 答えは明白です。できません。もちろん人間には運やツキも ありますし、いわゆる動物的カンで、どうにかこうにか生き延びるビジネスもあります。しかし、こうしたケースはあくまでも例外です。例外を前提にした考え 方はお勧めできません。

 

事業計画書は起業後のチェックリスト

 では、なぜ事業計画書を作成しないとビジネスを継続・発展させることができないのでしょうか?

 もっとも根本的な理由。それは経営者たる自分のやるべきことが何なのか、わからなくなってしまうからです。仮に自分ひとりでの起業だとしても、起業し た以上は経営者です。なおかつ現場の仕事も抱えることになります。山ほどの「やるべきこと」と星の数ほどの「やったほうがいいこと」に囲まれて起業家は日 々を過ごします。ところがチェックリストがないことには、実のところ課題がどれだけあるのかもわからないし、また、解決すべき優先順位を正しく判断するこ とも不可能でしょう。事業計画書とは、まさに経営者のためのチェックリストなのです。

事業計画書は経営のシナリオでもある

 同時に事業計画書は経営のシナリオにもなるのです。過去に経験したことと同じことをするのであれば、計画書はおろか計画自体も不要かもしれませ ん。しかし、これから起業しようとする人にとって、新たに事業を起こす、ましてや他人から雇われずにそれを遂行するなどという経験は普通持っていないはず です。

 未知で未体験の事柄に取り組んでいくのです。だからシナリオが必要です。シナリオなしで舞台に立てるでしょうか。うまく演じることができるでしょ うか。そもそも、シナリオがなければ、うまくいっているのかいっていないのかの判定すらつきません。

 事業計画書作成の意義は、まず何より、自分自身ためにあるのです。それはチェックリストであり、シナリオです。「大体でいい」といった姿勢では、 ビジネス経営の困難さには打ち勝てません。

 そのうえで付け加えますが、事業計画書を作成したからといって事業が順風満帆に進むなどとは思わないでください。やってみないことには、わからな いこともあります。また、計画時と実動時では状況が変わることもあります。だったら事業計画書を作成してもあまり意味がないではないか、と思う人もいるで しょう。でも、そうではありません。計画があるからこそ、計画に狂いが生じてきていることが認識できるのです。何が計画どおりで何が計画とは違っているの か。まさにシナリオをチェックすることで、軌道修正を図れるわけです。

 

起業には理解者・協力者が不可欠

 事業を立ち上げるためには、多くの場面で、多くの人々の協力や支援が必要になることは言うまでもありません。共同経営者、資金提供者、仕入れ先、 支援機関、見込み客などなど。

 これらの人々に、計画しているビジネスの魅力と内容を十二分に理解してもらうためにはどうしても書類が必要です。口頭で伝えるだけで済むようなも のではありません。

 特にそのプランの新規性や市場性、実現性、将来性、競合優位性、安全性、収益性などを示そうと思えば、具体的な記述や分析、資料などがなければ、 まず相手が理解することはできません。

 ビジネスは社会的な財産です。さまざまな人の理解と共感と応援を受けてこそのもの。それらを手に入れるためにも、すぐれた伝達ツールが必要です。 それが事業計画書なのです。

 

読む側の視点と都合に沿った作成を

 ただし、事業計画書は書類にさえすれば何でもいいというものではありません。自分の思い込みだけを延々と文章をつづったもの。極端に概念化・抽象 化しすぎて、見ただけではチンプンカンプンなもの。膨大で手に持つのもつらくなるような量のもの……。こういうことではいけません。

 計画書を見た相手が「わからない」という顔をしたとすれば、それは相手が悪いのではなく、相手にわかるように書かなかった自分が悪いのです。読む 人からの応援が欲しくて作成するのですから、その相手が何を一番知りたいのか、それを斟酌し、そこを起点にして作成するくらいの配慮が必要でしょう。

計画書を書くこと自体に意義がある

 最後にもうひとつ、事業計画書作成の意義を伝えます。それを書くという行為自体に大きな価値があるのです。頭の中にある時は「いい考えだ」と思え ても、実際に文字にし、また、文字にするためにあれこれ調べたり検討してみたりすると、実は「あまりいい考えではなかった」ということに気がつくもので す。

 はなから完璧なプランなど立てられるものではありません。事業計画書を作成し、修正し、という作業を繰り返していくことで、事業プランをより現実 的なもの、より強固なものへとブラッシュアップしていけるのです。

 また、どうにも作成作業が進まない場合も出てきます。プランを書類化するための知識や情報が不足していることも考えられますが、おおもとのアイデ アが事業化に適していないという場合もあります。さらには、本当にそれを自分がやりたいのかどうかという根本的な問題が潜んでいる可能性もあります。事業 計画書作成に向かうことは、実は「起業するのだ」と決めた自分自身を見つめ直す絶好のチャンスにもなるのです。

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