第3回 子どもの教育費はどうなる?学習塾の現在とこれからを考える

この記事はに専門家 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

学習塾業界の現状と予測

 教育産業のなかでも学習塾、とりわけもっとも一般的な小中高生を対象にした進学塾についてその動向や将来性についてお伝えします。
 経済産業省の「特定サービス産業動向統計調査」によれば、平成22年の学習塾の売上高は3751億円、事業所数は8200となっています。
 これが学習塾の市場規模ということになりますが、将来の市場を考える上で真っ先に思い浮かぶのはいわゆる少子化の進行です。2010年度の小中高生の数は、1394万人と、ピークの1985年から毎年減少しています。しかし、学習塾の市場規模は、少子化の進行に逆行し拡大してきました。さすがにここ数年は横ばい傾向となっていますが、子どもへの行政の援助や、後述します文部科学省のゆとり教育からの方針転換が追い風となって、再び増勢に向かうことが予想されています。
その要因として次のようなことがあげられます。

~通塾率の上昇~
 中学受験や中高一貫教育校受験のため、小学生から塾に通う子どもが増加するなど、いわゆる通塾率が上昇しています。文部科学省の学習指導調査によれば、例えば中学生の通塾率は約6割という結果が出ています。研究機関の調査によれば、75.8%に達しているという結果も出ており、塾は通っていないほうが珍しいという時代背景になっています。

~塾費用の増加~
 一家庭あたりで考えれば、子どもの数が減ったことによって、子どもひとりにかける教育費は増加傾向にあります。直近の文部科学省の「子供の学習費調査」によれば、公立中学3年生の補助学習費は年間321千円、もっとも高額なのは私立小の6年の493千円となっています。これは次のような原因が後押ししているものです。
 〇子どもに対する親や祖父母などの援助が多くなっている。
 〇学校教育に対する不安が増加し、学力を補助・強化する場としての学習塾への期待がさらに高まっている。

~新学習指導要領の実施~
 平成10年、文部省は学習指導要領を改訂し、いわゆる「ゆとり教育」を推し進めることとしました。しかし、学習内容を約3割削減した結果、深刻な学力の低下を招くこととなり、学力低下防止の期待から学習塾への依存が強まったという経過がありました。
 さすがに国も学力低下の現実を突きつけられて方針を転換、2011~2012年度にかけ小中学校で全教科平均約25%~30%もの学習量を増やすことにした一方で、授業時間の増加はこれに追いつかず、学習の定着を図るため一段と学習塾への依存が高まるものと予想されています。

子どもの夢に携わる仕事

 あなたは子どもの頃、どんな将来の夢を持っていましたか?スポーツ選手、電車の運転手、飲食店の店長、さまざまな夢があったのではないでしょうか。
 では、その夢は実現しましたか?残念ながら、多くの方がそうではないと感じておられるのではないでしょうか。
 学習塾は、今まさに夢を持っている子どもを手助けする場であるといえます。明確な夢を持っていない子どもの才能を見出し、一緒に夢を見つけていく場となります。家庭、学校に次いだ第三のコミュニティの場として子どもの成長に関わっていきます。
 ここで学習し、進路を決めて卒業していった生徒はあなた自身が辿らなかった可能性を実現する分身といえるかもしれません。

 ひとりの生徒をご紹介します。ある難関高校を目指す中学3年生の生徒がいました。彼は高い学力を持ちながら、また難関校を目指しながらもその理由は「親が薦めるので」としか言うことが出来ませんでした。自分の夢や目標を持てずただ漠然と勉強することを求められていたのです。ところが学習塾で担任になった先生と長い時間を共有し、先生の話を聞くうちにある憧れを持ち始めました。先生は大学の農学部卒で、理系が得意な彼に対して自分の経験を話して聞かせていたのです。無事第一志望の高校に進学が決まった彼は自ら「次は農学部を目指して勉強を頑張りたい」と目標を設定し、またその夢の実現のため努力を続けることを決めたのです。

 このように、勉強を教える力があることだけが良い先生の資格ではありません。教員免許のある無しでは無く、真剣に顧客である子どもと接することの出来る人柄が重要でもあるのです。これまでの人生の中で得た経験や体験をすべて生かすことが出来るわけです。

 教育業界はひとりの顧客と非常に長い時間接する業界です。中学1年生で入塾してきた子どもが大学受験を終えるまで在籍したとすると、6年間もの時間を共有するわけです。
 私立の学校に進学するか?公立にするか?偏差値は?学部は?――多くの選択肢を顧客である子どもと共に悩み、決定していきます。人ひとりの人生に大きく関与することになり、それこそがプレッシャーと共に達成する喜び、感謝される喜びを得られるこの仕事の魅力のひとつだと言えます。

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