確定申告の季節がやってきました。
1月半ばから2月の初旬になると、毎年まるで当局からの見せしめのように「脱税で逮捕」「申告漏れ」のニュースが流れます。
「ちゃんと申告しないとダメよ!」との警告なのでしょうか?
私は数年前、税務署の確定申告電話相談室の相談員を経験したことがありますが、「日本人って結構マジメね。」と思うことがしばしばありました。税務当局から見れば全く申告義務のない人でも「私、申告しなくて大丈夫かしら?」と心配して相談電話をかけてくる方が毎日、相当数いるのです。
無駄に心配な感情を煽る報道には感心しません。
それからみなさん、税務署ってそんなに怖いものではありませんからご心配なく。
しかしこの確定申告。税務署が申告書と一緒に郵送してくる「所得税および復興特別所得税の確定申告の手引き」という冊子を見てみると
「確定申告が必要な方」と「確定申告をすれば税金が戻る方」
という見出しが最初の方に出てきます。
日本語って難しいですね。
「確定申告が必要な方」・・・ 確定申告を必ず要する人。
「確定申告をすれば税金が戻る方」・・・ 課税側からしたら、必ず確定申告をしなくてもいいのだけれど、もし確定申告をしたら「還付」といってお金が戻ってくる人。
私の確定申告の新規のお客様のなかにはなぜか毎年、過年度分の「期限後申告」をする方が出てきます。
例えば今年の確定申告期間(平成31年2月18日~平成31年3月15日)は平成30年分の確定申告をこれから行うわけですから、平成30年の資料をお借りして申告計算作業をします。しかし、その資料の中にポツリ、ポツリ違う年の資料が入り混じっていることが多く、それらを見ていると
「あれ?前々年申告義務はないけれど、この方は申告したら還付になるんじゃない?」というそんな嬉しい発見があるからです。
以下にあげる方は、もしかしたら還付される税金があるかもしれません。
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「源泉徴収あり」の特定口座を利用しているため、安心して何も確定申告していない場合
特定口座で源泉徴収ありの口座でも複数の証券会社で特定口座を持っている場合には要注意。一方の証券会社の取引は利益が出ていて、もう一方では損失という場合など。本来通算できる利益をそのまま源泉徴収されていたら、その譲渡所得にかかる源泉税は確定申告をすることにより還付できます。
またその年に損失を通算できなくても、その損失は3年間繰越が出来ます。特定口座でも損失が出ている人は確定申告をしたほうが来年以降、お得になることが多いのです。
またレアケースにはなりますが、他の所得が一切なく配当所得と株式の売買のみで生計をたてている方は特定口座で「源泉徴収あり」を選択していても確定申告をすればその株式の譲渡所得や配当の所得から基礎控除や扶養控除、社会保険料控除などを差引くことになりますから税金は還付されます。
年の途中で退職した場合
年の途中で退職し、同じ年中に再就職していない方は、年末調整が行われていないことになります。生命保険料や社会保険料などの支払いで還付が受けられます。退職した会社からもらった源泉徴収票を確認して、源泉徴収税額があれば確定申告をした方が良いでしょう。
副業で赤字が出た場合
サラリーマンが副業をして、その事業が赤字の場合は確定申告をすれば、会社の給与から引かれている源泉所得税が還付されることがあります。副業の収入が20万円未満であれば申告の必要はないのですが申告をしたほうが得になる場合もあるのです。ただしこれは事業所得として認められる副業です。年に1.2回の取引では雑所得として扱われ、損失の通算はできません。このあたりの判定や申告のテクニックは税理士にぜひご相談ください。
子供の学校や自分の母校に寄付をした場合
私立の学校法人は卒業生や現役学生の親に施設建設資金等の寄付を募ることがあります。このとき「寄付金控除」に該当する寄付をしていればその証明書が交付されるのですが、1万円超の寄付をしていたら還付があるかもしれません。要注意なのは学校法人本体に対する寄付はよいのですが、その学校のクラブ活動「サッカー部」や「野球部OB会」などは寄付金控除には該当しません。
もちろん寄付金控除は学校法人への寄付に限りません。
日本ユニセフ協会や国境なき医師団等、国税庁長官により認定されている団体への寄付は寄付金控除の対象になります。
そもそも他の理由で確定申告義務のある方は良いのですが、会社の年末調整で所得税が確定している方は面倒がって、還付があるのに確定申告をされていない例をよく見かけます。
今は混雑した税務署にわざわざ提出に出向かなくても、e-TAXなら申告書の作成も簡単です。国税庁HPの確定申告書作成コーナーが便利。初心者でも普段PC操作に慣れていれば短時間で申告書の作成ができます。
また確定申告義務のない方の還付申告の場合は、確定申告期間に間に合わなくてもペナルティはありませんから期限後の提出でも問題はありません。
では、いつまで税務署は待ってくれるのでしょう?
なんと還付申告は申告年の翌年1月1日から5年間申告することができますので、確定申告の期限前でも期限後でも問題なく行うことができるのです。
1年分だとたいした金額にはならない還付金も5年分できるなら、少しまとまった額になりませんか?やってみる価値はありますね。
医療費控除のできる場合
「医療費控除」という名前は知っていても、ウチはそんなに医療費使っていないし関係ないや!と思っている皆さん、意外と知られていないことですが、ご夫婦共に所得がある場合でもご夫婦2人分の医療費をどちらか1人の所得から控除することが出来ます。
「自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合」というのが前提ですから、夫婦2人分の医療費を合算して確認することが大切です。
上記にあげたものの他にも、所得税には「○○控除」と名のつくものが、まだいくつかあります。
列挙してみましょう。
雑損控除
これは災害や盗難、横領など住宅や家財などに損害を受けた方が対象となります。
同じ盗難や火災でも別荘や貴金属、書画骨董など生活に通常必要でない資産の損害は、該当しません。
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
これは住宅を購入したときだけでなく、ローンを使って増改築を行った場合にも適用があります。控除を受けるためには要件がありますから、増改築のご予定がある場合には、事前にシュミレーションされることをお勧めします。
政党等寄付金控除
政治献金のうち政党や政治団体に対するものが対象になります。
住宅耐震改修特別控除
家屋の耐震改修工事をした場合で、一定の要件を満たすものが対象です。
住宅特定改修特別税額控除
家屋のバリアフリー改修工事、省エネ改修工事、多世帯同居改修工事、耐久性向上改修工事等のうち一定要件を満たすものが対象となります。
認定住宅新築等特別税額控除
何が認定住宅なのか、正直、私も調べなければわかりません。一部のハウスメーカーさんの方が詳しいかも知れませんので、気になる方は確認してみてください。
ここまで「確定申告をすれば税金が戻る方」についてのお話をしました。
まとめ
確定申告をするのか、しないのかは所得金額や年末調整等が大きく関わってきます。たとえ確定申告が不要だった場合でも、税金の還付が受けられる場合もありますので、一度確認してみることをおすすめします。もちろん佐々木税理士事務所にご相談くだされば、親身になってご回答します。
執筆者プロフィール:
ドリームゲートアドバイザー 佐々木 美佳氏
(佐々木税理士事務所 所長)
東京商工会議所ビジネスサポートデスク 派遣専門家税理士。
税理士業界に30年以上携わった経験により関わった企業は1,000社以上。
親・子・孫三代に渡る事業承継コンサルも経験し、平成26年に東京・麹町にて税理士事務所を開業。
一般社団法人シェア・ブレイン・ビジネス・スクール認定講師も務め、強みを活かしたビジネスモデル策定に関わった経験が豊富。
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- 2019年4月12日 「確定申告が必要な方」と
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事業承継と税金のはなし