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「ツケ」はいつ清算されることになっていたのか?
この飲み屋さんでは、「ツケ」を認める店のルールとして伝票にお客様に直接サインをしてもらっていました。これをもってお客様が店で飲食したことを確認は できます。では、月々どれくらいのみ回収が溜まっていって、いったいいつになったら支払ってくれるのかという約束をどこでしていたのかということが気にな ります。
通常の会社であれば、月々送付する請求書などに売掛金残高が明示されていたり、明示されていなくても経理担当者が把握しており、それが一定以上の 額になれば督促するなどという措置を取るようになっています。また、請求書には、当然に支払期日が明記されていなければなりません。
特に支払期日を決めているにもかかわらず、これを守れないような会社であれば取り引きそのものを考えなくてはなりません。資金繰りが悪化している 可能性もあります。また、先方もこちらのことを大事に思っていない可能性もあります。あなたはそのような会社とお付き合いしたいですか?
お互いに約束が明確になっていない取り引きはあまり好ましいものではありません。今回のような事態に発展する可能性が高くなります。この場合も支 払期日を決めていませんでしたから、当然に支払ってください、という督促も、なかったのです。
「時効」の問題
この言葉、よく耳にされると思います。「時効」です。時効にも種類があるのですが、今回のように権利があるのにこれを行使せず、一定の期限に達すると権利 を失ってしまうようなものを「消滅時効」といいます。飲み屋のツケなどは、1年でこの期限を迎えてしまいます。
売掛金の内容を調査したところ、ほとんどの日付がこの時効を迎えており、容易に回収できるような状況ではありませんでした。
しかし、時効にかかっているからといってあきらめてはいけません。
時効とは債務者のほうから「あのツケは時効にかかり消滅していますよ」という主張をしなければ時効は成立しません。これを「時効の 援用」といいます。そうです、自動的に成立するものではないのです。
何らかの方法で、実際に飲食サービスが提供され、現在も支払い義務があることを認めてもらえばよいのです。もちろん簡単ではありませんが、債務者 が支払い義務のあることを認めれば、正々堂々と時効の期限に達しているツケを請求することができるのです。
債務者は存在するのか
今回はお客様の残した伝票をもとに、どこにいくらの債権がある のかということをある程度特定することができ、時効に関しても債務があることを認めてもらおうという方向性で取りかかることとしました。
次の不安は、やはり債務者の存在です。
店側は名刺一枚でお客様を信じこんでサービスを提供していたに過ぎません。もしもサインしている名前が偽名であったり、名刺に記載されている法人 が現存しないものであったら困るな、という不安がどうしてもありました。さあ、どうだったのでしょうか。続きは次回です。