【2020年専門家監修】融資の心得:融資は、法人の方が有利なのか?

この記事は2020/01/23に専門家 太田 眞彦 三浦 高 によって監修されました。

執筆者: ドリームゲート事務局

創業をするに当たり、自己資金だけで事業を立ち上げることができるのならば、それにこしたことはありません。

しかし、例えば店舗や事業場がなければ事業が立ち上げられない場合など、どうしても設備資金がかさむため、自己資金だけでは足りなくなる場合があります。
中小企業庁委託「起業・創業の実態に関する調査」(2016年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング)によると、創業期時の一番の課題は資金調達(60.0%)であるとされ、また、日本政策金融公庫総合研究所「2019年度新規開業実態調査」でも、創業時の必要資金のうち68.4%を金融機関等からの借入れでまかなっていることがうかがえます。

このように創業時の必要資金が自己資金だけで足りない場合は、銀行や信用金庫、日本政策金融公庫など創業者向けの融資をしてくれる金融機関からの資金調達を検討することになります。

今回は、実際に創業融資を受けた方の事例を紹介するとともに、創業融資を受ける際のよくある質問として、「個人事業よりも法人の方が借りやすいのか?」という点や、融資を受けるに当たり、本当に重要なことは何かという点について解説します。

融資

個人事業・法人での融資事例を紹介

個人事業の場合

将来自分の店を持つことを夢に専門学校を出た後、大手のネイルサロンに就職したAさん。アシスタント、マネージャーと順調にキャリアを伸ばし、30歳になったのを機に勤務先を退職し、いよいよ独立することを決意しました。

そこでAさんがまず行ったことは「キャリアの棚卸し」でした。過去に経験したこと、勉強したこと、そして身についたことを時系列で振り返り、「自分に身についたスキル・ノウハウは何か」を分析しました。

次にAさんが行ったのは、A4一枚で自分のビジネスのイメージ図を書くことでした。これは「エグゼクティブ・サマリー」といわれるもので、自身の夢とそれに実現するためのスキル・ノウハウ、事業開始の動機やその背景、そして、「誰に?(ターゲット市場・顧客)」、「何を?(商品・サービスの内容)」、「どのように?(事業の特徴)」売るのかなどを端的にまとめたものです。ビジネスプランは書く量が多ければいいというものではありません。逆にA4一枚にまとめることの方が難しいものです。

見事、自身のビジネスイメージ図を書くことのできたAさんは、それをベースに専門家の指導を仰ぎながら、日本政策金融公庫所定の創業計画書を作成し、融資希望額500万円の資金調達に成功。念願の自分の店を持つことができました。

法人の場合

大手の人材紹介会社に勤務していたBさん。
会社内での部署異動の内示が出たのを機に、自身の将来設計に疑問が生じ同僚のCさんと一緒に会社を出て、今まで培ってきた経験を活かし、企業の人材の活性化を支援する事業で独立することを決意しました。

独立を決意したBさんが、まず会社を辞める前にやったことはセミナーの受講と、異業種交流会への参加でした。事業のノウハウそのものには自信のあったBさんですが、創業に当たっては幅広い経営知識が必要だと感じていたので、とにかく日程さえ合えば、創業者や経営者向けのセミナーをできる限り受講しました。また、会社以外での人脈を構築するため、異業種交流会などに積極的に参加しました。

そして、創業者向けのセミナーで、創業に当たっては創業計画書を書く必要があること、創業者向けの融資制度があることなどを知ったBさんは、早速、同僚のCさんと一緒に、それまであたためていたビジネスアイデアを創業計画書にまとめました。
計画書は、そのセミナー講師に何度も添削をしてもらった上で日本政策金融公庫に融資を申し込み、事務所の設備資金として300万円を調達することに成功しました。

専門家からのヒトコト

銀行や信用金庫の場合、個人事業主は代表者本人の連帯保証は不要ですが、法人は代表者本人の連帯保証が必要な場合が多いです。

ドリームゲートアドバイザー 三浦 高

「個人か法人か」は重要ではない

融資は法人が有利なのか

創業相談にのっていると、創業時の融資に際しては「個人事業よりも法人の方が借りやすいのでは?」という質問をよく受けますが、この質問の答えとしては、結論的に「どちらでも一緒」ということになります。

金融機関が融資の審査をするに当たっては、個人事業か法人かという外観上の器そのものは特に重要視されず、それよりも中身を重要視します。従って、審査基準はどちらも一緒ということになります。

恐らく、個人事業よりも株式会社など法人組織の方が、一般的に社会的信用が高いので、そのように思われるケースが多いのでしょう。
営業政策として、また、人材募集などの面では確かに個人事業よりも株式会社などの法人の方が有利に働くケースもありますが、融資に限ると特に有利に働くということはありません。

専門家からのヒトコト
かなり昔になりますが、私は銀行で融資担当者をやっていました。
そのころは会社を設立するハードルが高く、株式会社なら1,000万円以上の資本金を準備する必要がありました。また取締役として3名以上、監査役として1名以上が必要でした。
ですので会社を設立して起業する人は、個人事業主として起業する人より、資金的にも人的にも充実している傾向がありました。
そのため結果的に法人の方が融資審査に合格する割合は高かったように思いますが、決して個人事業主だからダメだという色眼鏡で見ることはありませんでした。ましてや現在は、資本金1円、取締役1人で会社を設立するできる時代です。なおさら会社が有利ということはないでしょう。
資本金が1円の会社と、元入金が100万円の個人事業主。あなたならどちらに貸しますか?
ドリームゲートアドバイザー 太田 眞彦

融資を受ける際、本当に重要なこととは

このように、創業融資を受ける際に重要なのは「個人か法人か」などの外観ではなく、あくまでも事業の中身ということになります。

業歴の長い会社は、過去の実績や蓄積された資産などをもとに融資を受けることができますが、創業の場合、実績は当然ゼロとなりますので、過去の実績などをもとに融資を受けることができません。

そこで、重要とされるのが「創業計画書」、すなわち「ビジネスプラン(事業計画書)」です。ある意味、創業者はこの「創業計画書」を担保に融資を受けるといっても過言ではないでしょう。

事業計画書の書き方についてはこちらの記事をご覧ください>>

やろうとする事業が、「なぜ私にできるのか」という根拠と、事業を継続し、きちんと利益を上げて将来キャッシュフローで借入金を返済できる将来図を、客観的、合理的に計画書として取りまとめ、説明することができるかどうかがポイントとなります。
そして、この創業計画書で重要なのは、「商品・サービスの素晴らしさ」ではなく、「商品・サービスが売れる理由」に重点をおくことです。
お客様は、なぜこの店を選んでくれるのか、なぜこの商品を買ってくれるのか、なぜこのサービスを受けてくれるのかというセールスポイントを徹底的に考え抜き、そこをアピールしなくてはなりません。

「創業計画書」は一人で作ると、どうしても視野が狭くなり、計画のヌケやモレが発生してしまいます。そうした時は、ぜひ周りの人や専門家などに見てもらいましょう。そうすることによって、計画の穴を一つでもふさぐことができ、より客観的な「創業計画書」となるのです。

この記事の監修者
太田 眞彦(おおた まさひこ)
株式会社さあ頑張ろうぜ
中小企業診断士
株式会社さあ頑張ろうぜ 代表取締役 1960年生まれ。東京都出身。経営コンサルタント歴20年のベテランが、アイデア出しから起業までを支援します。
著書『芸能人に学ぶマーケティング戦略』ほか
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三浦 高(みうら たかし)
V-Spirits経営戦略研究所株式会社
1級販売士/宅地建物取引士/中小企業診断士
総合起業コンサルティンググループV-Spiritsに在籍する。特に補助金・助成金については元補助金事務局員だった経験、実績をフル活用し、95%以上という非常に高い採択実績を記録するなど、実績を豊富にお持ちです。
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